赤い服 -リン①-
「ピピピピ、ピピピ」
「んあ。もう朝かぁ」カチャ
布団から起き上がると、窓から朝日が照らしていた。雲ひとつなく、鳥達がチュンチュンと鳴きながら元気よく動いている。
「あっ、そういえば、Chat。。。」
『リン!今日はこれから買い物だろ?もう起きてるか?」
「あっ、時間は。。。って結構やばいじゃん」
リンと呼ばれる青年は、Chatと呼ばれるメッセージアプリで友人との約束事を思い出した。白い色の服、緑のズボンを履いて急いで自室から飛び出し、リビングへ向かった。
「リン!ユウスケくんからさっき電話があったわよ。」
「お母さん、ごめん。牛乳だけ飲んだら行ってくる!」
「気をつけるのよ。」
リンはテーブルに置かれているコップに牛乳を注いで、ゴクゴクと喉を鳴らしながら自転車の鍵、ヘルメットを装着して、玄関へ向かった。
「行ってきまーす!」
リンはそう言って、車の横に置かれている自転車に鍵を差し込んで、ユウスケの元へ向かった。
「ユウスケ!マジでごめん!」
「おせぇよ。って言っても俺もさっきついたばかりだから大丈夫だ。」
リンは友人のユウスケと少し談笑しながら、駐輪場で自転車を置いて、路面電車の駅へと向かった。
「そういえば、今度路面電車が新しくなるって。」
「まじ?乗り心地いいのかな?」
新しい路面電車が出てくると聞き、リンとユウスケは盛り上がった。
駅に到着すると、休日というのもあってか家族連れがたくさんいて行列を作っていた。
『この電車は
目の前に電車が到着するとアナウンスがなると同時に、そちら方面へ行く人たちが続々と乗っていき、待つ人たちが減り始めた。そして、その路面電車が出発すると、後ろに待機している路面電車がやってきた。
『この電車はJR松山駅前、古町行きです。お乗り間違いのないようお気をつけてください。』
目的に行く駅なのか、リンとユウスケは電車に乗る列に入って、その電車に乗った。
電車の中は夏というのもあってか冷房がつけられて快適な空間となっていた。
「今日は暑いからなぁ。電車降りたら自販機で飲み物買おうぜ!」
「俺はバタスの新作飲もうかなぁ。」
車内で飲み物の話をしていた。新作のことを話すとユウスケも「俺もそれにしよ」と言い、笑いながら新作の画像を見ていた。
「そういえb「お父さん!!!」」
話の続きをしようとした瞬間、目の前の男が倒れた。
「や、やべぇな。」
「だ、大丈夫ですか?」
ユウスケがつぶやいた瞬間、リンは急いで男に駆けつけた。
「た、たすけて。」
男がリンにしがみつき、苦しそうにしながら呟く。目や鼻から血が出ているのをリンは確認すると、呼吸の確認をして仰向けに横にさせた。
「おい、動画撮らずに救急車を呼べよ!」
「マジヤベェって」
動画を撮っている人たちに救急車の通報をお願いしたが、聞く耳を持たなかった。
「リン、その男の人の容体は?」
「危険。」
ユウスケは持っているスマホから急いで119番通報をしていたようだった。危険というと、リンは電話に向かって、男が危険であることを報告しているようだった。
「あと8分で着くって。」
「おじさん、あと8分頑張って耐えて!」
「あ、あう」
リンは男にそう言い聞かせ、ユウスケは撮っている人たちをなるべく隅の方に移動させていた。
「リン。救急車のサイレンが聞こえたぞ。」
「よかったね、おじさん。もう少しの辛抱だよ。」
「う、うう」
リンはできる限り男を励ました。すると、
「ゴハッ」
と吐血をしてしまった。リンは吐血にびっくりしたが、男がぐったりとした感触を感じ取り、赤く染まった服の不愉快感をもろともせず、男にずっと励ましをしていた。
数分後、電車が迷惑にならないところで停車させると、電車のドアが開いた。
「救急隊です。この方ですか?」
「はい。吐血していて危険ですので急いでお願いします。」
リンはそう言って、赤く染まった服を脱いだ。
「下着も赤くなってんなぁ。」
「本当にすみませんでした。」
娘さんと思われる人がこちらに駆け寄って謝罪した。
「服は弁償しますから。どうか。。。」
「大丈夫ですよ。それより、お父さんに付き添ってあげてください。」
娘さんは急いで救急車に乗って病院へ向かって行った。
車内には血だまりができており、車内に残っていた人たちは全員近くの駅で下された。
「リン、大丈夫か。」
「うん。でも服が濡れてきれない。」
「今日はもう中止だ。あのことがあった後に買い物はしにくいしな。」
「そうだね。」
ユウスケとリンは駅から降りて、少ししたところにある電車の駅に入った。真っ赤な下着姿で駅に入るのは少し抵抗があったが、涼しい風が吹くたびに涼しく感じているリンであったが、少し興味本位で下着の中を見てみた。
「下着の中も赤くなってんなぁ。」
「傷とか大丈夫か?先週やらかしたんだろ?」
「まぁな。」
2人で会話をしていると、近くの踏切の遮断機が降り始め、電車が近づいてきた。
電車に乗ると、リンの下着姿を見た人たちの視線がリンを直撃した。
「やっぱり、下着で乗るってやばいね。」
「こればっかりは仕方ねぇな。駅に着いたらチャリ乗って帰ろうぜ。」
2人でそんな話をしていると、電車はあっという間に目的の駅に到着し、一緒に駐輪場へ向かった。
「気をつけて帰れよ。洗濯できなかったらうちのとこのクリーニングに出してこい。多分いけるから。」
「うん!その時は世話になるね。」
2人で自転車を押しながら、集合していたところで解散した。時刻はまだお昼にも達していない。
『あのおじさん大丈夫かなぁ』
そう思いながら、自転車に乗って自宅に帰った。
家に入ると、母親が驚いた顔でリンを見ていた。
「どしたの、それ。真っ赤じゃない!」
「ちょっと、おじさん助けてた。血吐いちゃってそれを被っただけだよ。救急車で運んでもらってるから大丈夫だと思う。」
リンは驚いている母親を一蹴して袋に入れている赤い服と下着を洗濯機の中に入れ、スイッチを入れた。
洗濯機が動くと同時にリンは自室へ戻って行った。
「明日、何しようかなぁ。宿題もまだ残ってたっけ?」
自室に戻ると、リンは学校カバンからファイルを取り出し、宿題の範囲らしきプリントを探す。
「痛って。。。ってあれ?」
『今のなんだったんだ?』
突然、胸に痛みが走った。しかし、その痛みはすぐに止み、リンは不思議に感じた。
プリントは探しているとすぐに範囲のプリントが出てきた。
「げっ、多いなぁ。」
宿題の範囲を見てみると、ほとんどの教科のページ数が記されている。背もたれにもたれながら、ページ数の欄を再度見てみる。見ても何も変わらない。リンは学校の教科書を置いている棚から教科書を取り出すと、「はぁ。」っとため息をつきながら宿題を始めた。
数時間後、
外は暗くなり始めていた。リンはただ持っているボールペンでノートに方程式や式を事細かく書いていた。
「やっぱり難しい。。。」
「同じ式を書いてるのに全く割り切れないし、余りが出るのだが?」
リンは頭をかきながら教科書を見て文句を言う。
「ってもう夜かぁ。」
「リン、ご飯できたよ!」
「はーい。」
母親から夕食の支度ができたことを言われると、リビングへと足を進める。
リビングへ行くと、母親がすでに自分の椅子に座っていた。
「今日のご飯はあんたが好きな、オムライスとコーンポタージュよ。」
「やった!ありがとう!」
母親から言われた献立を聞いて、リンは嬉しがった。
「ただいま。」
「お父さん、おかえり。」
席に着いた瞬間、父親が帰ってきた。父親は部屋に入って行った。服を脱いでいる音が聞こえ、2人は父親が来るのを待った。しばらくすると、
「いやぁ。今日は大変だったよ。職場に来た取引先の人が吐血しちゃってさぁ。」
「こら、お父さん、そんなこと今言わないで。」
父親は今日の出来事を言いながら席に着く。母親はそんな父に怒り、父は「ごめんよ。」と言った。そして、みんなで手を合わせると、
「「「いただきます!」」」
と言って、3人で夕食を食べ始めた。
「そういえば、お父さんの近くにも血を吐いちゃった人いたの?」
「ああ。」
リンは父親に聞くと、リンも今日の出来事を話した。
「何かの流行り病かな?」
「さぁ?でも流行ってるっていうニュースは聞かないよ。」
2人でそんな会話をしていると、「そんな話は後でしなさい」と母親から注意を受けてしまった。
ご飯を食べ終えると、母親はキッチンに立って、リンと父親の食器を回収し、食器を洗い始めた。リンは自室に戻り、開いていた教科書やノートを棚に入れてパソコンを取り出した。
「最近、何かと使うことが増えたよなぁ。」
1人呟きながらパソコンを操作する。
「学校もまだ始まらないからいいよね。」
リンはパソコンでネットサーフィングをしながら自由気ままに過ごしていた。
パソコンを操作しながら時間を見てみると、気づけば深夜2時となっていた。
「やば、もう2時じゃん。そろそろ寝ないとな。ってあれ?」
『なんか、胸がかゆいな。。。』
胸に違和感を抱きながらリンはベットで横になった。
『めっちゃかゆいけど、毛ってこんなにあったっけ?』
リンは体を起こして服を脱ぐ。
「はっ?」
リンは服を脱いで携帯のライトで胸を見た。胸には茶色い羽毛のようなものが傷口を中心に生えていた。
「抜けるのか、、、ってめっちゃ痛い。。。」
固い毛を抜こうとしたがその前に激痛が走り、抜くのをやめた。
『明日、病院に行ったほうがいいよな?それとも、ユウスケに相談してから病院を決めたほうがいいのかな?』
『ひとまず、誰も起きてない時間帯だ。ユウスケに相談してから病院を決めようか。』
リンは服を着てベットに横になり、頭を悩ませながら眠りについた。
SAZA-人体変異感染症- 熊猫いつき @panda_jp
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