オンセの眠り

Eternal-Heart

ONCE

鍵を開けるのに手間取った___


思いの外、酔ってるのかも知れない。

鍵をテーブルに放り投げる。

狭いバルコニーの柵にもたれて煙草に火を付ける。

見慣れた夜景と静かな土曜の夜。



サンディエゴの支社に配属されて、もう11年になる。

メキシコなどラテンアメリカ系の多い地域なので

簡単なスペイン語も覚えた。



同じアパートのメキシコ人家族のホームパーティーに誘われた。

一人暮らしの俺に気を使ってくれてありがたい。

メキシコ人らしからぬシャイなダリオと

初めて会ったのは

彼らがこのアパートに引越してきて間もない頃。


おしゃべりで料理上手なダリオの妻

ディアナの手料理を食べながらビールを飲み

近況や取り留めのない話をしたりサッカー中継を見たり。


小学生の子供たちも俺に懐いてくれている。

新しいボードゲームにつき合わされると

自分が子供の頃、正月に帰省し久し振りに会う

親戚との思い出が蘇る。


人付き合いが嫌いな俺にとっては

月に1、2度 彼らと過ごす週末が楽しみでもある。




やや不眠症ぎみで睡眠薬は欠かせない。

普段は気にしないパッケージの文字が目に入った。

「Once a day」

11錠放り込んでコップの水を飲み干す。

ベッドに潜り込む。



思いの外、酔ってるのかも知れないな

何をやってるんだ 俺は


スペイン語でonce(オンセ)は11の事だ

英語でOnce a day(1日一錠)


いつもより早く微睡んできた

これで明日、日曜は台無しだ



窓の外の見慣れた夜景が白い闇に消えていった____

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