おまえモンハン双剣なん?

草森ゆき

1

 久々に遊びに来た西浦は流暢に携帯ゲーム機を操作しながら「おまえモンハン双剣なん?」と聞いて来た。ライトボウガンだった。そのように伝えるとちょっと面白そうにおれを見た。

「なんでボウガン?」

「モンスターに近寄んの嫌やねん」

「ほななんでモンハンなんかやってんねん、牧場物語でもやってろや」

「牧場物語やと斧やわ」

「俺は鎌や」

 わっはっは、と一段落の笑いを挟む。西浦はどんと肩にぶつかってきて、画面を自慢するようにおれの目の前に差し出した。

「双剣ええぞ、見てくれこれ。まず見た目がめちゃくちゃカッコええやろ? 二刀流やぞ」

「いやまあ見た目はええけど操作難しいやん。ていうか結構進んでへん?」

「ああ、元カノがかなりやり込んでて途中までおんぶに抱っこしてもろた」

「元なんかい」

「自分よりハンターランク低いなんて有りえへんって言われたわ」

「えげつな」

「しかもそのあとすぐ別の相手作ってた」

「えげつなさ二乗やんけ」

「相手女の子やった」

「それは別にええやん」

 西浦はちっちっと舌を二回打ち鳴らす。なんやねん。怪訝に思って横目で睨むと肩をがっしり掴まれた。

「おまえやったらそう言うと思てた」

「あ?」

「いやー、久々に来て良かったわあ」

「離せや、どれかクエスト行かへんのか?」

「行く行く、行くけどちょっと頼みがあんねん」

「え、嫌や」

「早ない?」

「ろくな頼みちゃうやろ、しょうもないこと言うたら貫通弾撃つからな」

「ちゃうちゃう、言うた通りに俺フられてもうてめっちゃ傷心やねんて」

「ほんで?」

「ハンターランク解放まで毎日手伝うから突き合ってくれ!」

「おい今絶対漢字えげつない方やったよな?」

「モンハン婚しようや」

「そういうシステムあらへんねんモンハンにはよ!」

 食い下がりそうだったのでとりあえず引き剥がす。それから少し考える。不満そうな西浦に本当に本気でハンターランク解放まで世話をしてくれるのか、付き合うのか突き合うのか知らんけどマジで言っているのか確認する。頷かれたので頷き返す。

「契約成立や、クエスト全部手伝ってくれ」

「任せろや! 登り詰めるまで紳士にエスコートしたるって、天井のシミでも数えてる間に終わるわ」

「既に違う意味に聞こえるねんか」

「両方の意味や、ほなイくで」

「それも違う……まあええわ、よろしく」

「こちらこそ末永くよろしくな、これで現実もモンハンも堂々たる二刀流や」

「別れたなってきたわ」

「ほんまごめん」

「早よ行くぞ二刀野郎」

「はい」

「よし」

 このあとめちゃくちゃクエストを行い、おれと西浦はギルドカードを交換して一緒の布団に入り朝方まで励んだ。ハンターランクと貞操は解放されて、寝坊して遅刻した。

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おまえモンハン双剣なん? 草森ゆき @kusakuitai

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