写実

結騎 了

#365日ショートショート 061

「私、SNSで初めてあなたの投稿を見た時に、いつかこんな日が来るって信じていたんです」

 まだ知り合って一週間なのに、随分と感動的な言い回しだ。でも、悪くない。アマチュア写真家として活動を始めて半年、何気なくSNSにアップした写真をきっかけに、この編集者からメールが届いた。あなたの活動を社としてバックアップしたい。それは、出版社との専属契約だった。これからインターネットを中心とした広報戦略を経て、本の出版まで確約してくれた。とんとん拍子とはこのことである。

「あの画像、今も目に焼き付いています。色合いが鮮やかで、繊細で……」

 私より一回りも下のこの編集者は、私を出版社の忘年会に呼んだ。まずはここで、社内の人間に華々しく紹介したいそうだ。ステージの袖、そろそろ司会からお呼びがかかる。いけない、緊張してきた。でも大丈夫。写真家として、最大のチャンスだと思っています。よろしくお願いします。そう元気に言って、頭を下げるだけだ。

 ステージから艶やかな声が聞こえてくる。「それではお呼びしましょう……」

「ほら、もう呼ばれますよ。ファイトです!」

 とん、と背中を押される。ようし、いくぞ。覚悟を決めて。

「さあ皆さん、本日のサプライズゲスト。我が社の新人編集者が連れてきた、未来の売れっ子。まるで写真に撮ったかのように風景を描き切る、超天才のイラストレーターさんです。どうぞっ!」

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写実 結騎 了 @slinky_dog_s11

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