第2話

 5月某日。春の柔らかな日差しが少しずつ夏へと移ろうとしている。今日、この日。とある一人の外科医の男と看護師の女が逮捕された。


罪状は殺人、人身売買、恐喝、住居不法侵入等。


挙げればきりがないほどの罪が世間に公表された。



✡✡✡



半年後。

「被告人は前へ」

厳格な声で裁判官は口を開いた。ここは裁判所。聴衆が驚愕の表情を浮かべる中、一人の男が進み出た。

カツン、カツン、と厳かに響く靴音とジャラリ、と重々しくなる手錠。

「被告人、今の罪状について何か物申すことはありますか?」

張り詰めた雰囲気の中。男はただ優しく笑っていた。


「――判決を下します。被告人、貴方を死刑とします」


逮捕から半年後。異例とも言われる早さで判決は下され、男の死刑が確定した。



✡✡✡



『俺は殺人鬼として443人殺しました』


死刑後。牢屋から医者の男の手記が発見された。丁寧で美麗な文字でそれは綴られていた。


『僕は医者として5475人救いました』


不思議なことにその手記は『僕』と『俺』が登場した。

男の手記から始まる、これは医者としての彼と殺人鬼としての彼の話。


『彼』は何故人を殺し続けたのか、『彼』は何故人を救い続けたのか。


「あるいは、理由なんてなかったのかもね~」

とある街角のおしゃれなカフェで、女が一人ページを繰った。











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白衣の死神 夕幻吹雪 @10kukuruka31

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