お願い
私を産んだ人の家は、倉庫みたいな、ハリボテの様な、重くのしかかる現実の厚みに耐えられなくなった、薄弱な理想の具現化したものとして有る。これがジッカとなるのは少し耐えられないと思う。それでも私もこの家に同化するほどにはしょうもない存在だから、受け入れなくてはいけないのだと思う。
飽和したまま、薄っぺらい模型の連続をなしている。
家の前には、道路、申し訳程度の芝生、フェンスで囲われた用水路がこの順で陳列されている。家の敷地と道路とを区切っている、その側溝を掻き回せば、誰かの夢とか愛とかが天動的なままにごちゃ混ぜになっている、ヘドロの底にきっと錆びたフォークが見つかるだろうから、必ずそれで、死体を刺して欲しい。絶望が足りないと思われるからだ。
奇抜な色をわざわざ選んで、ひがんだ性をぶちまけて、平板で軽薄な生を送っている。折り目の正しさを失ったのではない。生活は点線を失ったのだ。
独り相撲になることは覚悟しなければいけない。私は現実を知らないから、現実を知る人とは会ったことがないということになる。この現実という言葉の意味がよく理解出来ないでいる。
一度しか死なないのが悔やまれる。きっと何度でも死ねるので有れば、誰だって死ぬことを肯定せずにはいられないだろう。この手に握り締められるように、細かくぶった切ったのかもしれないが、その不器用な断面から神秘が悉く溢れ出してしまったのではないか。最後に残ったものは、この命だけになってしまった。殆ど看板のようなもので、銃弾はその表面を押しのけ、押しのけして、虚しく風穴を作るだけなのではないか。
この命が終わってくれるときに初めて現実に出会えるのではないか。終わりを知らずに全体を掴めるものか。死なずにいて、何をしているのだろうか。都合の良い世界を小さな窓から覗いて、可愛らしいが、せめて死ぬときには絶望することになって欲しい。思い込みを全て否定されることになって欲しい。
これは叶わないから、泣きながらでも構わないので、出来るだけ使い物にならないフォークを死体にめり込ませて欲しい。そうして器官の摩擦がどんな音を引きずるのかを聞いて欲しい。これをフォークが折れるまで、杜撰に繰り返して欲しい。君のためだ。
幸せに死ねばいいんだ @terinakashi
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