『また来世で!』声劇台本(2人用)
花晨深槻
また来世で!
~登場人物~
鍵谷 海鈴-カギタニ ミスズ₋
18歳の女子高生。異常なまでの楽天家。
不知火 -シラヌイ₋
海鈴が近所?の鳥居で出会った男。自称「
~本編~
海鈴「あんまり来ない方に来ちゃったな…… んん? なんだあれ。教材で見たのに似てるな。トリイ、だっけ?」
不知火「やあ、お嬢ちゃん」
海鈴「 ( 驚いて叫ぶ ) 」
( 間 )
不知火「おーい、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんってば」
海鈴「う~ん…… はっ!」
不知火「あ、ようやく気付いた」
海鈴「何っ!? ここどこ!?」
不知火「えっとここは……」
海鈴「近づかないで! これでもVRでカンフー勉強してアクション映画も見まくってるんだから! アナログな方法だけど効果はあるのよ! 多分!」
不知火「ぶいあーる? あく……? よく分かんないけど、君半刻ものびてたんだよ?介抱した俺の身にもなってよ」
海鈴「そういえば、あの時突然あんたが現れたからびっくりしてこけて……」
不知火「そうそう。頭から階段下りた子なんて初めて見たから焦ったよ」
海鈴「て、つまりあたしがのびたのはあんたのせいじゃない!」
不知火「うう。まあ、かなり言いがかりに近いとは思うけど、驚かせたのは申し訳なかったよ」
海鈴「素直に謝られるとなんか調子狂うな。そういえば、ここは?」
不知火「ここは僕の家だよ。家って言っても、ほとんどほっつき歩いてて帰ってきてなかったんだけどさ。そうそう! 自己紹介がまだだったね。俺は不知火。多分君と同い年くらいかな」
海鈴「なるほどね。助けてくれてありがと不知火。あたしは…… あたしは…… あれ? ははっ」
不知火「思い出せない? えっ、いや、そんな、まさか……」
海鈴「えっ、えっ。何よ。怖いんだけど!」
不知火「君、もしかして…… ヒトかい?」
海鈴「あたりまえじゃない。天然さんなの?」
不知火「失敬な! これでも君より何倍も生きてる先輩だぞ!」
海鈴「その見た目で何倍もってのは無理あるわよ。しかも自分でさっきあたしと同い年くらいって言ったんじゃない」
不知火「はぁ…… 俺がヒトならそうだね」
海鈴「え、不知火ってもしかしてキカイ? いや、それだとかなりの旧型にってことになるからこんなに自由にしゃべれるのは変か」
不知火「からくりなんかより珍しいよ! 俺はですね~! 何を隠そう、妖です!」
海鈴「は?」
不知火「え?」
海鈴「アヤ、何?」
不知火「あ・や・か・し」
海鈴「アヤカシ…… って、いやだからそれ何よ」
不知火「今のヒトの子は妖も知らないのか!? 最近はやれカガクだ発展だとかで、自然や俺達への関心がまるでないもんなあ。昔は上っ面だけでも環境保護だなんだ頑張ってたのに、今じゃなんでも作れるからって破壊し放題だし。あー、昔はよかった!」
海鈴「急な早口! いや、環境保護なんて人類が未熟だった頃の黒歴史よ。今はどんな生物だって植物だって自由自在なんだし、いちいち騒ぐ必要なくない?」
不知火「嗚呼、‟神の領域”とやらは何処へ…… 嘆かわしい。まあ、君のせいじゃないしね。そういう時代のせいだよ。うん。妖ってのはあれ。西洋で言うどらきゅら的なやつって言えばわかる?」
海鈴「ドラキュラ? つまり架空生物とあたし話しちゃってるの!? やばいやばい! 変なの見えるし名前も忘れちゃってるし、未確認の幻惑系の特殊ガスで汚染された地域とか……?」
不知火「まて、変なのというのに反論したいところだが。それよりもここが立ち入り禁止区域?」
海鈴「そうそう。ばあちゃんが言ってたんだけど、100年くらい前から立ち入り禁止区域になってるらしいよ。テロリストが変なガスまき散らしながら町を破壊して汚染した?とかなんとか」
不知火「ええ、ヒトの子こわ…… 破壊的すぎでしょ。じゃあ最近全然ヒトの子を見ないなぁと思ってたのも?」
海鈴「立ち入り禁止区域だからだね」
不知火「ならばなんで貴様はいるんだ」
海鈴「あたしはそういうの気にしないから!」
不知火「気にしないとかの問題じゃないだろ絶対……」
海鈴「一応あたしだってここまで奥に来たのは初めてだし、入る前に何日かかけてここら一体の土壌や空気の汚染状況を確認したよ」
不知火「俺の存在でそのよく分からん‟がす”とやらのことを言ってるなら確実に違うが、仮にそうだったとしてよく呑気にしてられるな」
海鈴「あたしより何倍も長く生きてんのに知らないの? イマドキは、リベルタスっていうクラウドに自分のバックアップがあるから何回死んでも大丈夫なんだよ?」
不知火「りべ? くらうど? ばっく?」
海鈴「リベルタスっていうのは、全人類約20億人の趣味嗜好・性格・身体的特徴が保存してあるところのことだよ。目に見えない機械でさ、そこに自分の情報をずっと入れてあるから何回死んでもやり直しできるってわけ! ってなんであたし幻覚にこんなこと言ってんだろ」
不知火「やっぱヒトの子こわ…… 死生観ゆるゆるじゃん! 俺が見かけない間にそんなことに。あと幻覚じゃないぞ。幻覚だったらこんなに俺が好き勝手喋らない」
海鈴「言われてみれば。あたしが名前忘れちゃったのはこけた衝撃かな?」
不知火「恐らくそうだ、と言いたいところだが。それは単純にここがヒトの世ではないからだな」
海鈴「ヒトの世じゃないとこ?」
不知火「ここはヒトの世のように自然を好き勝手に変えたり、死んでもやり直したりなんてできない妖の世界。循環する世界。故にこの世界の所謂ヨソモノを、世界自体が排除しようとしてるんだろう」
海鈴「排除とかなんか怖いな。てか、不便だねえ」
不知火「でも不便だからこそいいんだよ。それが本来の生命の在り方だ」
海鈴「マゾじゃん」
不知火「それは俺でもなんか良くない言葉だって分かるぞ!」
海鈴「やだな、褒め言葉だよ褒め言葉!」
不知火「ヒトの子は今何のために生きているのだ? 元からヒトの子は自らの発展を第一にしてはいたが、今のその状態よりはましだ。まだ循環の中の生命であろうとしていた」
海鈴「循環の中の生命? なにそれ。ああ! 工場でウシとかブタとか作って食べるアレ?」
不知火「こ、こうじょう…… 気が遠くなりそうだ。ま、まあそれもまたヒトの子達の選んだ道ならとやかく言わないよ。本来接触することはあってもヒトの世と妖の世は交わらないしな。過干渉になってしまう」
海鈴「ふーん? なんか小難しいなぁ」
不知火「そこが問題なんだ。お嬢ちゃんを同族だと思ってたから連れてきてしまったが……ヒトの世への道はしばらく閉じていて帰れんぞ。本当にすまない。何か方法を……」
海鈴「それなら平気! 死んだらやり直しできるって言ったでしょ? その時のやり直し地点を人間用の工場に設定すれば帰れるから。名前忘れないように対策しとくからさ、見かけたらまた一緒にお話でもしよ!」
不知火「だから、いや、え、ちょっと!?」
海鈴「じゃあまたね、おやすみ〜! ざしゅっとな」
不知火「うわああああ! まじで、まじでやりおった!やっぱ倫理観ゆるゆるだし、ヒトの子って、こっわぁ! 」
『また来世で!』声劇台本(2人用) 花晨深槻 @seloli
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます