宴は始まる

高岩 沙由

☆日本酒&こしあん饅頭

「お疲れ様!よい週末を!」

 

 都内の企業でヘルプデスク要員として働いている菜摘は同僚の社員たちに終業の挨拶を終えると急いで自宅に向かう。


(今日は金曜日!何を飲もうかな?)

 菜摘は自宅に転がしている日本酒を頭に思い浮かべながら駅に向かう。

 途中の駅ビルで、海外の有名なチョコレート店でチョコを、和菓子の有名店で羊羹とこしあんの饅頭を購入して自宅に帰る。


 菜摘は自覚しているが、お酒もかなり飲むが、それに合わせて甘い物をおつまみにするのが好きだが、同僚に話すとドン引かれ、二刀流なんだね、と遠い目で呟かれる。


 購入してきたものは居間のテーブルの上に置き、すぐにシャワーを浴び、化粧を落とすと、いよいよ晩酌タイムに突入だ。


「今日は、こしあん饅頭を購入しているから、吟醸酒がいいかな?」

 菜摘はこの部屋の収納スペースとして唯一のクローゼットに小型のワインセラーを置いてある。

 その中から選んだ吟醸酒は[朝日酒蔵 久保田 千寿]

「あっ、器を忘れていた」

 慌ててキッチンに戻ると、菜摘が前に旅行した先で作った真っ白なぐい呑みとおつまみを広げる皿をもって居間に戻る。

「よし」

 皿の上に小ぶりなこしあん饅頭を2個乗せるとクローゼットに行き、[久保田 千寿]の一升瓶を取り出すとテーブルに置き、栓を開けぐい呑みに注ぎ入れたあと、

「いただきます!」

 最初は日本酒をゆっくりと味わう。

「すっきりと辛口だけど、後味がさっぱりなのよね」

 最初に注ぎ入れた日本酒を飲み干し、おかわりを注ぎいれる。

 次は、日本酒と饅頭の組み合わせを愉しむ。

「うーん、おいしい!ぽんしゅが進む~」

 菜摘は饅頭と日本酒を交互に味わいながら、

「この時間があるから、仕事頑張ろう、って思えるよね」

 たとえ、カップラーメンを食べようとした時に急にユーザに呼び出され、ややこしい対応になって、カップラーメンが伸びた時があったとしても。


 日本酒と饅頭の組み合わせを堪能していると、一升瓶を飲み干したことに気付く。

 菜摘はぐい呑みをキッチンの流しに置くと、新しいぐい呑みを持って居間に戻る。

「じゃあ、次はどれにしようかな?」

 菜摘の目はテーブルの上にあるおつまみを追いながら、日本酒の銘柄を考え始める。


今宵の宴は始まったばかりだ。

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宴は始まる 高岩 沙由 @umitonya

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