地の文無しの「仇討ち」
でんでろ3
第1話
「とうとう追い詰めたぞ! 我が父のカタキ、覚悟!」
『慌て者め! 真の黒幕は別にいる』
「ふっ、命ごいなら、まだしも、そんな見えすいた嘘に私がごまかされるものか! 私は確かにカタキが刀を持つ方の手に傷を!」
『それだ。私を見ろ。私は刀を片手で持っているか? 私だけではない。普通、武士は片手で刀を持たない。持つとすれば……』
「……二刀流……」
『さよう』
「はっ! 馬鹿を言うな! あ、あの方がカタキのはずが……」
『おや? 世に二刀流はあの方だけではないはずなのに、どうしましたかな?』
「う、うるさい! うるさいうるさいうるさい!」
『心が乱れている。今戦えば、どちらが勝つか? お分かりでしょう?』
「くっ!」
『今日のところは退きなさい』
「くっそぉぉぉ〜」
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「お願いがあります。手を……手を見せては頂けませんか? なぜと言われましても……。では、なぜ見せては頂けないのですか? あっ! どうして、そんな乱暴を?」
『都合が悪いからに決まってるだろ』
「あ、あんた……」
『戸締りが悪いから入って来ちまった。あぁ、番犬なら躾がなってねぇから躾といたよ』
「あれだけの数をひとりで?」
『番犬の美学なら、かつて番犬だった俺が一番良く知っているからな』
「かつて番犬だった?」
『悪りぃ。たしかに俺は、ある意味カタキの一味だ。罪滅ぼしには全然足りゃあしねぇが、コイツを切る!』
「……やってくれ」
『はぁっ! やっぱりなぁ。あんときは、従う以外にどうしようもねぇと思ったアンタの剣が』
『これっぽっちも怖くねーわっ!』
『くたばりやがれ! くそったれがぁ!』
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「ありがとうございました」
『どうってこたぁねーよ』
「あなたはこれからどうなさるんですか?」
『番屋に行くよ』
「えっ?」
『アイツは俺のカタキじゃねぇ』
「そ、そんな……」
『どうってこたぁねーよ』
地の文無しの「仇討ち」 でんでろ3 @dendero3
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