第13話 開幕?体育祭?
GWも終わると直ぐに体育祭の練習が始まった。体育の授業は、普段の球技に代わってのクラスリレーの練習、大繩などのクラス単位でできるものになり体育祭が近いということを実感させられる。
「しっかし、うちのクラスはリレーは強いけど大繩はさっぱりだな・・・」
「ねぇー、涼ちゃん含めてうちのクラス足が速いやつ多いけどあまり団結力がないみたいだわ」
拓馬が渋々いうのもわかる。リレーに関しては陸上部のやつが主体となって、バトンパスの練習やコツをみんなに教えてくれているおかげか、結果が良かった。しかし、クラス対抗の大繩に関しては、全く息がそろわない。飛ぼうにも引っかかる人が多く8回が最高回数。飛ぶ方も回す方も、終盤にはクタクタになっているし何よりもけんか腰になって互いにいがみ合っている。
「いつもは仲がいいのにどうして喧嘩に発展してしまうんだろうか」
「みんな若いんだよ、それだけやる気勢が多いっていいことじゃんか。涼ちゃんはあんまりやる気ない感じ?」
「お前も同年代だろ・・・単純にここまで熱く何かをやれる人が素直に羨ましかったりするからさ。なんだろうな、気恥ずかしいだと思う」
「中二病じゃんソレ(笑)まぁ、、、成功させましょ」
俺たち二人は影響力なんて特段ないし、クラスのリーダーでもない。けれど体育祭自体をいい思い出にしたいのは同じだ。日陰から立ち上がり、みんなが集まっているところに集合する。今日の日差しは普段と比べてだいぶ暑かった。
・・・・・・・・・・
「それじゃあ俺は部活行ってくるからまた明日ね。涼ちゃん」
「おーう、がんばれ~」
体育祭の練習が終わると、体感で午後の授業はとても早く感じて気付いたら放課後になっていた。拓馬はこれからテニス部の部活があるらしい。大樹も今日はバスケ部の練習がある。
(バイトもないしどうするかなぁ・・・あ、駅前の本屋にでもよるか)
直接帰るには、少しもったいない。本屋にでも寄って時間をつぶそうと思っていた矢先に一通の通知が届いた。宛名は椎名沙苗と書いてある。由衣さんの姉の一人だ
『お疲れー、今日はバイトとかない?もし時間があったら保健室によってほしい。由衣ちゃんが練習中に足をくじいちゃって。軽傷って言ってたんだけど心配でさ。』
そのメールをもらって直ぐに彼女のもとに駆け足で向かった。彼女自身、運動が苦手であることは分かっている。だからこそ、軽傷とわかってても心配になった。もしかしたら捻挫になっているかもしれない。互いに頑張ろうといった矢先で彼女に怪我なんてしてほしくなかった。
保健室に着きノックをした後、部屋に入る。薬品のにおいがする部屋でソファに腰を掛けている彼女の姿を発見した。すぐに足元に目を移す。包帯はまかれておらず、湿布とアイシングの氷を足に乗せている状態だった。
「直江くん・・・また、ドジしちゃった。ハハハ・・・」
「ドジって・・・怪我したんでしょ、痛くないの?」
「うん、少し捻っただけ。そこまで大きな怪我じゃないって先生が言ってた」
彼女のその一言で、とりあえず一安心。しかし、未だに冷やしているその足は未だに熱を持っているようだった。
「…やっぱり苦手なことはやらない方がいいのかな?身の程知るってほどじゃないと思うけどさ。背伸びしすぎって感じで」
「ごめんね」なんて言いながら今にも泣きそうな表情でそう呟く。無理もない、せっかく挑戦したのに始まって早々に怪我をしてしまうのだから。
(辛いんだろうな、きっと…無理してる。けれど俺はそうやって本心を隠すのは嫌いだ…)
「由衣さん、、、そうやって隠そうとしないでほしい。確かに苦手なことに挑戦して直ぐに失敗しちゃうのは心にくる。」
「けれど、やってみないと分からないじゃん。無我夢中にやってそれでダメでしたなら諦めがつくけど、中途半端に止めるのは一番悔しさが残ると思う」
「だからこそ諦めないでほしい、、、勝手な願望だけどさ」
勢いで言ってしまった。今思うと恥ずかしさがこみ上げてくる。彼女の方に顔を向けて様子を確認すると彼女は両手で顔を隠し下を向いていた。
「え、もしかして泣いている、、、?」
「い、いや!うん、大丈夫!ふふ、結果はどうあれ頑張ってみるね!」
どうやら大丈夫なようだ。さっきの落ち込みはどこかに消え去り俺の好きな彼女に戻っていた。
「んじゃ、俺は帰るね。元気になったことだし。ちゃんとお姉ちゃんたちに連絡しなよ」
そう言って保健室を後にした。扉を閉める間際、彼女は何か言いたそうな表情をしていたが、理由はよくわかっていない。
(ああゆうこと言った手前、俺も真剣な所見せないとな・・・)
好きな人の決意。であればこっちも相応にやる気を持ってこないといけない気がする。
五月なのにしっとりと汗を感じる。暑さとともに体育祭は近づいてくる
10年後は君と Rod-ルーズ @BFTsinon
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