第6話 あなたならハッピーエンド
沈黙に積雪
彼方なるハッピーエンド
沈黙にハッピーエンド
彼方なる積雪
雪の中、迷っていた。雪が溶けて春になりかけて気温がコロコロ変わる。伝えたいことが言えないのは何も季節や世界のせいではないのだ。
彼の話を語るのが私の存在理由。だって彼が私を救ってくれたから。感謝の気持ちと恋とは呼べないこの愛情がどれだけ積もっていっても、言うことはできない。言ってしまえばあなたのことを語れなくなってしまう。語り手はとてももどかしい。いっそのこと魔法の指輪や魔法の力で相手に伝わってしまえばいいのに。
語っているのはあなたの話で、あなたがギタリストになったり結婚したり、戦争で勇者になったり、猫になったりするけれど、ああどうがんばっても私と結ばれることだけはないんだなあ。
この間奥さんの方の語り手の男の子と仲良くなった。語り手側の交流は多いらしい。チームで語ってる人たちもいれば、気があった人と一緒に語ることもあるって。その男の子と夫婦になった彼らの話を語っている時は、なんていうか幸せで。でもよく注意を受けた。
「文章能力なさすぎですよ、よく語り手やってますね!なんていうかってなんですか!なんとも言えないとか言いようがあるでしょう」
「いやなんとも言えないだと、幸せって言えないじゃん。ていうかうちのひとりごとまで語んないでよ」
「…まああなたらしくていいんじゃないんですか」
「あー!テキトー、急にめんどくさくならないでよ!」
彼方なるハッピーエンド 新吉 @bottiti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます