第412話 貧乏という言葉の暴力性 2
参照テキスト
https://kakuyomu.jp/works/16818093074870825076/episodes/16818093077101825938
↑ カテイのクサビ 第23話 うちは「貧乏」だから
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今生より 大宮太郎・たまき夫妻の感想
大宮たまきさん 談
米河さんが「カテイのクサビ」を書かれたとのことで、夫とともに拝読いたしました。私も、その「うちは貧乏だから」という母親なる方の言葉のエピソードにはいくぶん思うところがありました。
私が子どもの頃、確かに両親などにおねだりして何か買ってもらった経験がないわけでもなく、ときには今日は我慢しなさいと言われたことも一度ならずあったことは確かですが、その「貧乏」なる言葉を出された記憶はまったくありません。
うちの両親は、当時の私にとって「必要かどうか」、さらにはそれが自分の手持ちのお小遣いでどうにかなるものかどうか、その2点をもとに何を買うかを判断していましたね。その姿勢は、私が子育て中にも実践しました。
男は頭で考え、女は子宮で考える。そういう言葉もありますが、それこそ、そんな場面で感情的な対応なんかしたら、その言葉を地で行っているではないかと私のほうが指摘されてしまうのがオチじゃないですか。
夫や義父母はそんなことをいう人ではないですが、だからと言ってやっていい態度ではありません。とにかく一番意識を向けるべきは、目の前の子どもですから。夫や親にわからなければいいなんて問題では、ないでしょう。
第一、うちは「貧乏」だからなんてことを子どもの前で言っていたら、言っている当の御自身がみじめにならないかしらね。
ましてそれを聞かされる子どもともなればどうでしょう。
確かにそこは増本さん宅のお母さんの大きな問題点であったと思いますが、だからと言って彼女を全否定することもありません。
彼はその所をうまく書き切っていますから、読後に不快感だけが残るような話にならなくて済んでいます。それが、あの作品の救いではないでしょうか。
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大宮太郎氏 談
マニア君、よくまあまとめてくれましたね。
彼はその増本さん宅にZ氏の絡みもあって何度か行ったこともあり、その折に家人の方々とも話したことがあるとのことですが、それはともかくとして、実在のZ氏ではなく米河君自らが経験したかのような仕上がりになっているのにいささか驚きを隠せませんでした。
私の印象としては、増本さん宅のお母さんのそのような問題点よりも、御自身の息子さんや娘さんたちだけでなく、隣にいる弟さんの息子さんたち、つまりこれは甥ということになりますが、それに加えて短期里親で夏や冬に泊まりに来ていた或作家氏も含め、自分の回りにいる子どもたちに対して愛情をもって真剣に接していた姿のほうがむしろ、印象に残りました。
そうですね、確かに問題点として「貧乏」という言葉を度々使用していたということに関してはあります。ええ。ぼくの両親も、子どもの頃には妻の両親同様、自虐と言うのですか、うちは「貧乏」なんて言葉を子どものぼくの前で言ってきたためしは一度もありませんでしたよ。
それを言うなら、父にこんなことを言われた覚えがあります。確か中学生の頃、大病を患って入院していた頃ではなかったかと思います。そういえば、同室に1歳上のかわいいおねえさんが来て、ちょうど出会った頃じゃなかったかな。
「うちには金がないわけじゃない。それがわしが大学を出ていい会社に勤めているからだなどと、恩着せがましいことを言う気はもちろんない。だけどなぁ、何でもかんでも欲しいものを買えばいいというものじゃないぞ。もっとも、必要なものであるとなれば、話は一切、別だ」
とね。
その言葉、たまきちゃんの御両親も聞いていて、随分感心しておられた。
とはいえ、彼の描くその批判的な内容の書かれたエピソードに対しては、私は少し冷めた目で、距離を置いて淡々と拝読しました。こういう怒りのこもった場面に下手に感情移入して同調して読んでしまったあかつきには、その問題の本質を見誤りかねないですからね。
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