『なにもしない課』
石燕の筆(影絵草子)
第1話
警察官の羽佐間は、部署移動を命じられる。
そこは、 『なにもしない課』というわけのわからない部署で、
日がな一日寝ているだけ。
『なにもしない』のがこの部署の仕事ですよ。 と、課長があくびをしながら、寝てしまう。
あきれた羽佐間は、移動を願い出ると、 すぐさま部署移動を命じられる。 そこは、
『悪口課』という人の悪口や陰口をひたすら聞くだけの、さらに、イヤな部署だった。
それから、ポイ捨てを注意したり、コンビニの前で屯する若者を注意するだけの『小悪党課』
歩道橋や横断歩道でなかなか渡れずに困ってるおばあちゃんや、おじいちゃんを助ける『老人課』
道に迷ってる人を助ける『道迷い課』
などなど実に多種多様な必要かどうかもわからない妙な部署に配属を命じられる。
そして、最後に最初にいた『なにもしない課』の同僚が道で転んだ女の子を助けている場面に出くわす。
羽佐間は思った。
『課』なんて関係ない。私たちは市民の味方警察官なんだ。
警察官はどんな課だろうと、いつも、市民を助ける仕事だ。と。
今の自分も階級はただの巡査かも知れない。
ただ、いずれは偉くなって市民のために働きたい。
そう思ったら、なんだか元気がわいてくるのだ。
そして今日も、彼は自分に合う課を探している。
案内板を見ている女の子が近くにいた羽佐間に聞く。
『おまわりさんは、どこの課なの?』
『僕は、なんの課でもないよ。おまわりさんは、おまわりさんだよ』
女の子は、不思議そうに母親の元に駆け寄る。
それを、羽佐間はにこやかに見送る。
『なにもしない課』 石燕の筆(影絵草子) @masingan
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