無駄な対抗意識
──わざわざバイキングなんかで無意味なライバル作ってどうするよ?
チョコケーキにデザート類に冷やし麺のみならず、フライドポテト食べ放題の誘惑に負けてしまって迷わず注文したうすだ。ぼっちで来ているという身の程をわきまえていないのに、食に関してはむしろポジティブ寄りだ。
原神コラボ目的で訪れてはいるが、スイパラの1番の楽しみはやっぱり食べることなんだよなとうすだは実感した。ぼっちだからなんだ、ぼっちだからこその楽しみを他の客にわからせてやるという無駄な思い込みをするうすださん。
「こちら食券になります、あとポテト食べ放題もお願いします」
「かしこまりました。それでは、3番テーブルにご案内します」
うすだは店員に食券を渡し、運命の場所(?)となるテーブル席へと誘導される。ただ、中にはうすだを見つめる客もそれなりに存在しており、お前のような奴が来る場所ではないというまた新たな洗礼ではないのかと思ってしまう。
「ここにいる人達全員が今怖いけど、原神プレイヤーにとっては感激するような場所だな」
改めて店内を見渡すと、店内からはタルタリヤ(※)も含んだ璃月出身キャラのポスターがずらりと並んでいる。胡桃と甘雨の席の後ろがいいなと心の底から願ったが、残念ながらどちらの席も女性客で埋まっていたので少しガックリしてしまう。
ちなみに、うすだの座る3番テーブルの後ろには山辛の冷やし麺のコラボ元である重雲が見守ることとなる。これもまた縁なのかもしれませんね、席なんて運みたいなものですが血梅香のしずく頼めばよかったとうすだは後悔した。
店内から原神のBGMが流れたりとごく普通の原神ファンからすれば神聖な領域だが、うすだからすれば普段のBGMから処刑用BGMでもいいとこですよ。
「さて、隣は……うーん、女子ならともかく、まだ高校生のガキ共にはバカにされたくないな」
3番テーブルへと着いたうすだだが、既に両隣には絶賛バイキングを楽しんでいる客で賑わっている。左隣は話を聞く限りでは今年高校を卒業する男子2人組、右隣は見るからにアニオタな20代前半の女子2人組だ。
こうなるのは周知の通りではあるが、こんな思春期真っ最中なガキ相手に対して変な対抗意識を取ってどうするよ。おそらく2度と会わないだろう相手なんだし、無意味な負けず嫌いしてどうするよ?
「食べる前に腹黒い自分が出てきた」
さすがに実年齢はカクヨムで公表できないが、彼らから見れば『なんだよこのオッサンは、いい歳こいて1人でスイパラ来たのかよ』と思われてもそう不思議ではない。これだけ考えたら、精神年齢だけはうすだの方が年下じゃないか。
ちゃんと目的があって初来店しているわけだし、目的なんて人それぞれなんだよ。ただし、食べるときに醜態だけは晒さないようにエチケットだけを守らないとね。
「それではごゆっくりどうぞー」
店員はゆっくりとか悠長なことを言ってるが、80分という時間制限があるわけだし善は急げみたいなものだ。もしも全員がうすだと同じチョコケーキ狙いの考えだったらどうするんだよ、フレンドリーなイメージがあるかもしれないがこれは食べ物のとり争う戦争なんだぞ(うすだ調べ)。
こうなったら今は周囲の若い連中達の反応は無視する以外他にない、こうしてうすだは楽天という名の地獄とも呼べる孤独な80分間の戦いが幕をあげた──
※タルタリヤは本来スネージナヤ出身ファデュイ所属のキャラだが、ストーリーの関係で今回のイベントでは璃月出身扱いされている。
基本ぼっち行動な俺、まるで異世界に行ったような気分で恐れ知らずのまま甘い楽園を初堪能!? うすだ @usudais
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。基本ぼっち行動な俺、まるで異世界に行ったような気分で恐れ知らずのまま甘い楽園を初堪能!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます