第2話 少年時代

 まず、私と彼の出会いについて語るとしましょう。Xは大層傲慢な性格でした。幼い子どもとは思えないくらいには傲慢でした。


 私は、親の都合で転校し、Xが通う尋常に越したのですが、そこで彼は級長を務めていました。教壇の前に立たされた私を彼は紹介していました。


 彼は人懐こそうな顔をしていました。笑顔でしたが、目は笑ってなかったように思います。格好の玩具を見つけた。彼の目はそう物語っていました。


 その日のうちから、彼の手酷い行動が始まりました。胸や腹を殴打され、蹴り飛ばされたことは数え切れません。これが腕や脚であったなら、痣でもできて、自然とXの蛮行が明るみになるのですが、さすがと言いますか、彼は手馴れておりました。


 別の方から後に聞いたのですが、その学級では転校が耐えなかったらしいのです。Xの仕業と見て間違いありませんが、証拠などあろうはずがないのです。


 目をつけられてしまったのが運の尽きなのでしょうか。私は教室から出ないようにしました。彼は他の目があると猫を被るのです。教師は勿論のこと、学級の生徒が居てもです。すなわち、お手洗いや階段などでは、彼は豹変するのでした。


 ある時、ついに金銭を迫られました。私はそれだけは勘弁してくれと、好きなだけ殴っていいからと泣いて縋りましたが、その脚を振り払って踏み付けてきました。


 呻き声を上げる私などお構い無しで、何度も足蹴にしてきます。その顔は薄ら笑いが張り付き、頬を上気させておりました。高揚しているのでしょう。私の策に気づかないのですから。


 私は階段の踊り場で泣き叫び、縋ったのです。動き回るXに対して、縋り付く私。段差や床にぶつかり擦り切れ、身体は傷だらけになりました。音も相当で、学校中に響き渡っていたことでしょう。


 床は血塗れで、物が散乱し、手酷い有様であったそうです。

 何事かと駆けつけた教師に取り押さえられ、それぞれ別室に連れていかれました。私は、取り調べの教師に思いの丈をぶちまけました。


 初めの方は信じられていなかったのですが、Xの「金」という発言、我々二人がいつも人目につかないところに行っていたことや私の彼に対する態度などが裏付けされ、ついに信じるに至ったのでしょう。


 Xは頑なに罪を認めませんでしたが、大声で怒鳴られると、怯えた顔であっさりと自白したのでした。


 そのまま、Xは自分がやって来たように、転校して消えていったのでした。私は全くこの頃が記憶にありません。


 総じて、尋常での彼は、このような救いの無い人物であったと思います。

 私は、騒動の渦中にいた事から、卒業するまで腫れ物のように扱われました。


 全て、Xが原因です。こうして思い出してみると、いかに彼によって私の人生が狂わされたか痛感します。さらに思い出してみることにしましょう。

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風味 中樫恵太 @keita-nagagashi

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