第4話

 今、私はマンションの高層階にいて一人で日向ぼっこをしている。寄り掛かったほんのりと温かい大きな窓ガラスの向こうには水色の空が広がっている。ずいぶんとふくらんできたお腹の水たまりに両手をのせて撫でる。この中には私の小さな赤ちゃんが浮かんでいる。時々赤ちゃんは人知れずしゃっくりをしたり、お腹の中を気ままに泳いで壁に当たると不機嫌そうに蹴とばしたりしている。私の夫になったひとは今日も夜遅くに帰って来るのだろう。


 あれからいくつかの恋が目の前を通り過ぎて二十代の終わりに結婚した。だんだん頭の中がぼんやりとしてきて目を閉じた。もはや私のまぶたは水色に染まっている。そっと愛おしむように口ずさむ。あの頃、何もかもが息苦しくて死にそうだった私を救ってくれたあの時の彼へのもう届かない想いを。


 私、あなたのことが好きだった。本当に心から好きだった。


 そして空を見上げながら水色のなかをたゆたう。


 たぶんこの世を去る時まで。

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私の詩は水色のなかをたゆたう 真森アルマ @alma_forest

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