第2話 不思議なエレベーター

放課後ヨウ君は野球の練習で、ボクはヨウ君にさよならって手を振って赤い美しい本を(少し汚れがあるが)を持って秘密の場所に出発した。

なんでこんな所で読むっのて大人は言うに決まってる大人はつまらない事ばかり気にするからボクはただこの秘密の場所で読書がしたいのだ。

出発時間が遅くなってしまってさっきまで晴れていたのに天気は曇り空。雨が降らないといいのにと思いつつ、ボクは周囲を見渡してマンションへ入っていく。誰もいないここがボクのお城だ。もう取り壊されるから期間限定だけど。床に直接座り込み読書を開始した。あっという間に本の中へ吸い込まれていく。ボクの意識は本の中のみに存在する。ふんふんと匂いをかぐアスファルトが濡れる匂いがする。ぽつぽつと雨音も聞こえてくる。

もう雨になったのだろうか?夜までは大丈夫だと思っていたのにと少し一人で文句をいいつつ、読書したい気持ちがくっついてしまったお尻をなんとか持ち上げて屋上に天気を見に行く事にした。足が重たい、階段を登り屋上に出て手を雨粒を受け止めるように空に見上げた。

まだ屋上のコンクリートは数ヶ所色が変わっているが、本降りの様子はない。雨音は好きだか、今日は晴れが良かったなと思ってしまう。きっとみんな雨に濡れるのが好きではない、だって洋服が肌にひっつく感じが好きではないしママに怒られる。人間はわがままだなあと思いつつ目を閉じて空を見上げる。ぽつぽつぽつと今は雨音しか聞こえない。

閉じていた目を開けると…


マンションの屋上の真ん中にエレベーターがある。


ボクはびっくりしてしまった。だって今の今までなかったのになんだってあんなところに?近づいてみる事にした、ゆっくりゆっくり急いでしまう自分に気をつけて危ないかもしれないよと言いつつ近づいていく。

近づいてみるとそれは普通のエレベーターとは違うようだ。開けるともうひとつ扉がある。外の扉は古い鉄の扉だが、中の扉は美しい格子状になっているピカピカしてて金で出来ているのだろうか?なんでこんなに綺麗な扉をつけるなら、そとの扉も古い鉄じゃなくて銀とかにすればいいのにと思ってしまう。外の鉄の扉が古すぎて重たくて開けるのに両手が鉄棒の後のような匂いになってしまった。だいたい古すぎるんだよ。けっして、ボクの力がないわけじゃないからねと自分に言い聞かせる。しばらくこの匂いとれないなと手とにらめっこする。手の匂いのせいかエレベーターの中も鉄棒の匂いに包まれているようだった。嫌な包まれ方だ。エレベーターのボタンを探すと右の壁に空色で空書いてある丸いボタンがあるのみだ。変わっているボタンになんだかボクの冒険家としての心が(本の中のみの冒険家だが)元気になっていく。ボタンがボクを呼んでいる。ゆっくりと人差し指を動かしていく、ボタンを押すとカチッと心地好い音がした。だけどエレベーターは動かない。なんだ壊れているのかやっぱり取り壊す予定だからなと思い、出ようとするが扉が開かない。金色の格子状の扉がびくともしないなんでだろう…さっきはあんなに軽かったのに。両手で一生懸命動かすが1センチだって動かない。顔が真っ赤になるぐらい力をいれるが駄目なようだ。ボクは疲れて床に腰を下ろす。大声で叫ぶ事や扉を叩く事も考えたが、きっと建て替え予定のマンションに用はないだろう。誰も来ないということはここでボクはずっと…。嫌な想像に違う違うと自分に言い聞かせる。

ボクは体育座りで床に座り、ぼおーと壁や扉を見ていると格子状の扉の一部にまるで本のしおりのようなものがくっついてある。今まであったのだろうか。持ち上げてじっくり見てみる事にした。それもピカピカ金色のツルツルの紙で出来た切符だった。


行き先は、【本の繁る森】と書かれてある。


誰が落としたのだろうか探してる人がいるかもしれないがここから出れないから探してあげられない。ここから出れたら探してあげよう。そう思って、ポケットに切符をしまった。


また床に腰を下ろそうとした瞬間エレベーターが動きだした。階が表示されるが、エレベーターの扉に直接階が表示される。

普段見ない階1.5階2.5階3.5階次々表示される。エレベーターはどんどんスピードを上げて上昇していく。どこにいくのか不安や焦りがないといけないがそれよりボクは、ワクワクしてしまっていた。本の中に直接入り込むような感覚だ。エレベーターを開けるとそこにはなにがあるのだろうか。だがエレベーターは止まれない。150.5階表示される数字はどんどん大きくなっていく。このままだときっと千や億までいってしまうのでないだろうか。楽しいなと考えていると突然エレベーターが止まった。


物語が口を開ける。ボクに向かっておいでおいでをしているのを感じる。エレベーターの床が真ん中からパカッと開いたのだ。

ボクは落ちていく。


見渡す景色は雲の中ボクはどうやら空の上から落ちたようだ。


ボクは落ちる落ちるどこまでも。

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旅をする本 雨宮たかこ @s2-hnqoy

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