僕らは確かに生きていた。

@MOO_cyan

第1話 現世

長い夢をみていた。そんな気がする。



それはきっと酷い悪夢で、

喉が詰まるように息苦しく、徐々に目の縁から温かい涙が流れるんだ。

この苦しさが誰によって生み出されてるのかも分からない。そんなこと、俺は気にならなかった。

ずっと この感覚に溺れる。


『...ぁ相原あいばら、かぐ、』


あと1文字。

あと1文字でお前の名前を呼べたのにな。



まるで あの酷い悪夢が愛おしい、というような虚無にハッと目覚めた。



そしてようやっと、気づいた。



『”相原あいばら”って...誰だ?』






思わず発した音の波は、跳ね返ることもせず、

手の辺りに落ちたように感じた。

サーッと静まり返る部屋は俺の口を塞いで黙らせた。



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