第46話 降伏希望書

日本軍の救助艦隊群の方が動きが速かったため米海軍側の救助兼攻撃艦隊がくることは無くなった。そのために海上で浮かんだままの米海兵を捕虜として救助をすることとなった。もちろん丁重に扱うように指示をしておいた。そうしなければ戦後問題にされてしまうからだ。

「艦長、助かったよ。」

救助艦隊の指揮を取っていた駆逐艦初春の艦長に深く礼をした。

「いえ、当たり前のことをしただけに過ぎません。」

そう頑なに礼を拒んだ。

「それより、司令の座乗艦であった敷島は轟沈してしまいましたが、次の座乗艦はどうされますか?」

「そうだなぁー。」

少し思案してみた。

改敷島に乗るのがまぁ順当と言ったところだろう。正当な後継艦に当たる。しかし、改敷島はまだ戦闘訓練が浅く、乗組員の練度も少しばかり低い。そうなると出雲に乗ることになる。しかし、出雲はどうにもデカすぎて的にしかならない。わがままではあるが自分の命運を決めるものでもある。

「しばらくの間は蒼龍にでも乗らせてもらおうかな。」

まぁ美咲も許してくれるだろう。

「了解しました。それでは失礼します!」

一礼して艦長は作業に戻っていった。

しばらくすると零式水偵が1機接近してきた。

見事な操縦で初春の横に着水した。複座式にも関わらず1人できたようだ。

「ここに根東司令がいらっしゃるとお聞きしたのでありますが!」

彼は大声で言った。

「いかにも、俺が根東だ。」

それに負けないように声を上げた。

「臨時司令からの命令で根東司令に対し空母蒼龍に回収するように言われて来ました。席は1つ開けてあります。お乗りください。」

どうやら初春の艦長が気を遣ってくれたらしい。この行為に甘えよう。

「わかった、すぐ行く!」

下士官に予備のパイロットスーツを持って来させる。そして着替え終わり、たまたま近くにいた相棒の副長に近寄る。

「副長、敷島のことはすまなかった。」

「構いませんよ、それより次の座乗艦でもご一緒願いたいところなんですが。」

「残念だが、俺はしばらくは蒼龍に座乗することにした。まぁその次には一緒になれるように配慮してやるよ。」

「ご配慮に感謝いたします。」

そういって迎えの零式水偵に乗り換えた。



数分後

「すまない、少しばかり海岸線を飛んでから蒼龍に向かってもらうことは可能かな?」

「前線視察ですね、了解です。」

下を見るともうすでに軽い要塞化が進んでいた。仮に戦線を押し戻されても海岸線だけは死守できるようにしてある。陸軍さんの動きはかなり早いようだ。

「もう少し見られますか?」

どうやら燃料が少なくなってきたらしい。

「いや、結構。蒼龍に向かってくれ。」

そう言って蒼龍へと進路を変えた。



空母蒼龍 艦橋

「今日からしばらくここに乗らせてもらう。よろしく。」

「はっ!よろしくお願いいたいします!」

そして美咲から旗艦旗を返却してもらった。ついでに戦況の確認をしたかったので艦長室に呼ばれた。人払いも済んだのでここにいるのは俺と美咲の2人だけとなった。

「それで敷島、沈んじゃったの?」

「うん、沈んじゃった。ごめん。」

「まぁ生きて帰って来れただけマシよ。しばらくは私の艦で指揮をとるんでしょ?」

「そうなんだ。急でごめんね。」

ちゃんと妻には従う姿勢を見せなければ。ましてや思い出深い艦を沈めて帰ってきたのだ。

「じゃあ戦況報告するわ。あなたが改アイオワ?とかいうのと戦ってる間、ドイツ軍の陸上部隊は大分前進した。ソ連軍もアメリカ北部を制圧化に置いている。対する我が日本軍はニューオーリンズまで前進しているわ。つまり、アメリカのほとんどは私たちの連合軍の制圧下にあるって訳よ。」

「だいぶ進んでたんだな。けど短時間すぎないか?電撃戦でもしたのか?」

「あら、聞いてなかったの?空挺部隊が大活躍してるって。」

初耳であった。DBS作戦の構想案の一つに空挺作戦はあった。作戦要項にも一応書いてあった。ただ、ほぼ不可能なものとして書いてあったはずだったのだが。

「そうか。まぁ活躍してるなら別に問題ないな。うん、そういうことにしておこう。」

「それでね、1時間前に1機の米軍機がここに来たの。」

どうやら白旗をコックピットから出していたそうだ。そして機密文書を手渡して機体を破壊させたらしい。足がつくとまずいらしい。

「あなたが来たら見せろって言ってたわ。」

そして渡された大きな封筒には上質な紙で英語の文章が並べられており、最後には大統領の印鑑が押されていた。そして聞き覚えのある名前が署名されていた。


〜降伏希望書〜

親愛なる日本軍司令の根東康彦司令へ。

我々アメリカ合衆国は戦闘を続けることが困難な状態になっており、合衆国民の大半が苦しい状況下にあります。なのでここにおいて我々は降伏を提案いたします。もちろんこの手紙の最後の印鑑にもあるように合衆国大統領の許可が降りております。会談日時や場所は日本側にお任せします。


バザー海軍大佐より


「・・・どうやら歴史が動きそうだな。」

「・・・そうね。それもかなり、ね。」

緊急で各部隊に停戦命令を発令した。

それとともに米軍も停戦命令を受諾した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界太平洋戦争!朝起きたら白の軍服着てクソ硬いベットで寝てたんですが、これって例の異世界転生すか? トンカッチ @tonkacchi7808

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ