#3 おませな少女。

これは私の持論なんだけれど大人になると言うのはスパイスが効いた夜を旅する事なんだと思うの。

帳に隠された秘密が顔を出し始める夜の街を歩いて、私はそうして大人になってゆくの。


空はとけたパパラチアサファイアのカクテル、とろりとしたミッドナイトブルーには星屑のキャンディとパイナップルムーンを添えましょう。底に溜まるトワイライトはお好みでかき混ぜて。

刺激的な炭酸水みたいにぱちぱちと舌で爆ぜる世界はどこまでも魅力的に私の前に広がってゆくのでしょう。

そして刺激的な世界を舌で転がしながら私はこう言うの、「ああ、きっと世界の秘密は隠し味よりもっと巧妙に宵闇の裏側に隠れているんだわ!」って。


大人はきっとその隠し味を子供に味合わせたくないんだって最近よく思う。世界はきっと私が思うより複雑で苦しくて辛くて淋しくて、そんなものばっかりで出来ていて、舞台と言うにもとてもお粗末なものなんでしょうね。

だから子供には優しい夜闇のカーテンで隠しちゃうんだわ、ええ、そうよ、だってそんなもの見ていたって楽しくないわ!本当よ?


でもね、私はそれでも、大人達が隠す宵闇のカーテンを抜けた先にある、舞台裏の秘密を早く知りたいの。ダイヤモンドだって見る位置を変えれば顔を変えるわ、そんなもの子供でも知っている事じゃない?

立ち位置を変えて目線を変えて真実をみたい。けどそれはまだ、私には早すぎるんだわ、それが分からない程私はバカな子供じゃないの!


だから、そう、だから私は大人になるまでの、客席と舞台の、この距離がもどかしくてもどかしくて堪らなくって、だから。


ああ、何処からか来た王子様が、私をいますぐ大人にしてくれないかしら?

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