第3話犬系美麗男子
「じゃあまだ体の調子が戻ってないだろうから少し休みなさい。君はシルビアのそばに居てあげてくれ」
シスレー公爵にそう言われてお母様は頷くと私をベッドへと連れて行ってくれた。
「隣にいるから安心して休んでね」
「お母様…」
そこにはお父様が亡くなる前の優しいお母様がいた。
「何か欲しいものはある?そうだお茶を用意しようか?」
するとお母様の後ろからアルバートさんが声をかけてきた。
「アルバート、今はリースとシルビアの二人っきりにしてあげなさい」
シスレー公爵の言葉にアルバートさんはムッとしている。
「お茶を用意したらそうするつもりでした…シルビアの気持ちの整理が最優先だからね」
そう言って愛おしそうな眼差しを向けられる。
そんな視線に思わず顔を逸らしてしまった…だってアルバート様…かなりと言っていい美形で笑うと周りの空気がキラキラ光っている気がする。
シルビアが苦手なタイプの人だったがアルに似た雰囲気に嫌いにはなれなかった。
「ありがとうございます。アルバート様…少しお母様とお話させてください」
シルビアがそう言うとアルバートは嬉しそうに笑った。
「名前を呼んでくれて嬉しいけど…僕のことはアルって呼んで…家族は皆そう呼ぶからね」
「アル…様…いえ、すみません。慣れるまでアルバート様でお願いします」
顔を真っ赤にして謝った。
「わかった、でもいつか呼んで欲しいな」
「はい…」
頷くと嬉しそうに頷き満足そうに出ていった。
しっかりとお茶を入れるのを忘れずに…
二人が出ていくとお母様の方を向く。
「お母様、いったい…」
何が起きているのかと早く聞きたかった。
お母様が説明するにシスレー公爵様はお母様の通う病院の経営者だったらしい。
お母様が通っている姿を見かけてたまに庭などてお茶を飲む中になり二人はすぐに恋仲となったそうだ。
シスレー公爵様の前奥方様はアルバート様を産んだ時にお亡くなりになっているそうで最愛の人を亡くしたという事もありお互いの傷の痛みがわかる同士求めているものが一緒だったらしい。
お母様の心の傷はお父様を亡くした事にあり、シスレー公爵の支えにみるみるうちに体調も良くなって言ったそうだ。
「シルビアには中々言い出せなくてごめんなさい…」
お母様は申し訳無さそうに謝った。
シルビアはそんなお母様の手をギュッと包み込む。
「そんな顔をなさらないでください。お母様がそんなに元気になったのもシスレー様のおかげなら私も嬉しいです。新しい家族として馴染めるように頑張ります」
「シルビア…学園に行って本当にしっかりして…いつも苦労をかけてしまってごめんね。ありがとう」
お母様は涙を流して謝罪とお礼を繰り返した。
お母様にアルバート様の入れてくれたお茶を渡すとゆっくりと飲んで落ち着いてくる。
「ここはシスレー様のお屋敷なの、シルビアに話をしたらここに一緒に住もうとしていて…」
「え?まだ一緒に住んでないの?」
「シスレー様がシルビアにちゃんと話をしてからにしようと言ってくれて…私の気持ちが落ち着くまで待っていてくれたのよ。そんな時あなたが倒れたと連絡が来て…私また寝たきりになるところだったわ」
お母様が心配そうに私の頬を撫でて目をうるませる。
「アルバート様が話を聞いて自分が駆け付けるって聞かなくて、でもおまかせしてよかったわ。顔色もいいし…でも倒れたって何かあったの?」
「い、いいえ。少し寝不足でフラって来てしまっただけだと思うわ。もう大丈夫だから心配しないで、すぐにでも学園に戻れると思う」
「駄目だ!」
バターン!
いきなり扉が開いてシルビアもお母様も口を開けて驚いている。
見ればアルバート様が真剣な顔で扉の前に立っていた。
「申し訳ない、ちょうど前を通りかかったら話が聞こえてしまったんです。シルビアは倒れたんだよ。一週間くらいは安静にしないと駄目です」
「そんな休まなくても大丈夫です。明日には寮に戻れます」
私が大丈夫だと笑うとアルバート様はお母様に向き合った。
「家族として初めてあったのです。もう少しみなで一緒の時間を過ごしましょう…それにシルビアの体も心配です。本人が気が付かずに無理をしていることもありますから」
アルバート様の真剣な様子にお母様も頷く。
「確かにそうね、シルビアやっぱり少し学園はお休みしなさい」
「でも…」
「お願い…」
お母様に心配そうな顔をさせてまで学園に行く訳には行かなかった…
「わかりました…でも一週間は休みすぎなので三日ぐらいでいいですか?」
シルビアはお母様とアルバート様の顔をじっと見つめる。
「わかったわ」
「シルビアにお願いされたら嫌とは言えないな…」
二人は渋々頷いてくれる。
学園にはアルバート様が連絡をしてくれてシルビアは三日間休む事になった。
屋敷にいる間シルビアはアルバート様にずっと構われていた。
髪は綺麗にカットされ服は新たに沢山買ってもらい、何か欲しいものはないかと聞かれる。
何もないと言うと寂しそうな顔をされてシュンとするのだ…
その姿が犬のアルを思い出させて慌てて適当な物を言うと尻尾を振るように喜んでそれを用意してくれるのだ。
「もう、アルバート様私なんかに構わないでご自分の事をなさってください」
丸一日構われ続けてたまらずにシルビアはアルバート様にそう言ってしまった。
「シルビアは僕の事が嫌い…かい?」
そう言ってまた見えない耳をシュンと下げる。
「そ、そんな事はないです。アルバート様は優しくて頼りになるお兄様です…でもご自分の事も大切にして欲しいです」
「シルビア…なんて優しいんだ」
アルバート様は感激した様子で口に手を当てた。
なんか言っても無駄な気がしてシルビアは見えないようにため息をついた。
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