第5話二つの部屋

次の日シルビアは朝ご機嫌なアルバート様と同じ馬車に乗り学園へと向かっていた。


一度先生に挨拶等あるので少し早めに向かう事になっている。

学園へと向かう道にはまだ生徒の姿は無かった。


学園に着くと学園長と副長が門の前で立っていた。


何をしているのかと思っていたら私達の乗る馬車を見るなり手を大きく振り駆け寄ってくる。


そして自ら誘導して学園の中へと入った。


そして降りるなりアルバート様に頭を下げながらお礼を言った。


「この度は学園へのご入学ありがとうございます!お父様にもよろしくお伝えください」


え?


「こちらこそ急な転入をお許し下さりありがとうございます。父もよろしくと言っておりました」


アルバート様は慣れた様子で学園長達と談笑している。


私は居心地悪く少し離れていた。


すると気がついたアルバート様が私をみて手招きする。


行きたくなかったが隣に並ぶと…


「話していた通り私は妹と同じ寮に住みますので…」


「はい、ご用意してあります。シルビアさんの荷物も運んでありますよ」


学園長が笑顔で私に笑いかけた。


「何から何まですみません。それと…これからは私が生徒になるのですから敬語はお控えください。他の生徒と同じように扱って下さって構いません」


「しかし…」


「よろしくお願いします」


渋る学園長に有無を言わさずアルバート様は微笑んだ。


学園長は困ったように頷き私達を部屋へと案内しくれる。


私は歩きながらアルバート様の服をツンっと引っ張った。


「ん?なんだい?」


先程のしっかりとした様子は消えてふんわりとした感じでアルバート様は振り返った。


「アルバート様が部屋へ案内されるのはわかりますが…私はもう部屋がありますよ」


荷物がどうとか言われて嫌な予感がする。


「シルビアは今日から僕と同じ部屋になるんだよ。あっ、でも安心してちゃんと一人一人部屋は別だからね」


「え!同じ部屋ってどういう事ですか!?」


聞こうとしていると学園長の足が止まった。


気がつけば寮の中でもお金のある人達が借りる部屋の階に来ていた…


私の元の部屋はもちろん一番下だった…しかも相部屋、私は友達も居なかったので相部屋を一人で使っていたが…


今はそんな事どうでもよくなる。


立派な扉の前で止まると学園長が扉を開けてくれた。


「こちらです。アルバート様…いやくんは右側の部屋をシルビアさんは左側を使ってください」


学園長がニコニコと笑って手を指し示した。


私は興味から少し覗き込むと中へと入ると一つ空間があり、大きなテーブルと小さめのキッチンが備え付けてある。そしてその部屋には扉が二つあった。


まずはアルバート様の右の扉を開く。


中はベッドと大きなクローゼット、それに机と椅子に本棚が備え付けてあり今すぐにでも住めるようになっていた。


アルバート様はグルっと部屋を見て回ると頷き学園長に頭を下げる。


「ありがとうございます。もう大丈夫ですよ、時間になりましたら教室に向かいますから」


やんわりと外に出ていくように促す。


学園長は頷きでは…と出ていった。


え?私の部屋は見ないの?


オロオロとしているとアルバート様がサッと手を掴んだ。


びっくりして顔を見ると安心させるように微笑み部屋の扉を開けてくれた。


「シルビアの部屋も見てみよう」


アルバート様が私の手を引き中へと連れていく…入ってみて私は自分の目を疑った。


何度も擦ってみるが景色は変わらない。

そこにはアルバート様よりも豪華そうな女性らしい家具が設置されている。


ベッドはアルバート様のよりも大きくて天蓋がついた二人はゆうに寝れそうなベッドだった。


そばに寄って布団を触るとふかふかで肌触りがいい。


「うん、まぁまぁかな…」


アルバート様は自分の部屋の時よりも入念にチェックをして妥協点かと頷いている。


「アルバート様?まさか私がこの部屋に住むんですか?」


「そうだよ、ここなら何かあってもすぐに駆けつけられるからね。部屋には鍵も付けられるから大丈夫だよ」


何が大丈夫なのかわからないが今はそこではない!


「違います!どう見ても私の部屋の方が豪華じゃないですか?アルバート様と間違ってませんか?」


「そんな事ないよ、可愛いシルビアにピッタリの部屋だよ…ほらベッドの寝心地はどうかな?」


アルバート様がゆっくりと私をベッドへと座らせる。


手を掴まれて一緒にベッドを撫でると目が合い嬉しそうにしていた。


「弾力もよさそうだ、もし寂しかったら一緒に寝ようか?」


「け、結構です!」


私は顔を真っ赤にして断ると慌ててベッドから飛び降りた。


「冗談だよ、でも本当に寂しかったらいつでも添い寝してあげるからね」


冗談なのか本気なのかわからないが人に甘い事だけはよくわかった。


「アルバート様は世話焼きすぎます!もっとご自分の事を大切になさった方がいいですよ。私になんて構ってないで…」


「寂しいな…僕はね初めての妹が本当に嬉しいんだ。それがこんなに可愛い女の子なら尚更兄らしい事をしたいと思ってる」


「兄はこんなに甘くないと思います!」


そう?何を言ってもアルバート様はニコニコと嬉しそうに答えた。


私はアルバート様はこういう人なんだと諦める事にした。

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