第2話
ゴブリン。
薄汚れた緑色の皮膚に、身長120センチの小柄な体格、幼児並みの知性を持った魔物だ。
だいたいが数匹の群れを成して森などで暮らしている。
俺の暮らす町周辺の土地は、龍脈やら聖域やらの関係で、他の地域に比べて低位の魔物が多く、数が少ないらしい。
そのせいか、ここら辺では群れのゴブリンおらず、群れをなさない単体のはぐれゴブリンしかいない。
普段なら森の入ってすぐにらへんの所に居るはずだが・・・
「居ない・・・」
森の外周をぐるぐる周りながら、かれこれ一時間近く探してるはずだが全くもっている気配がない。
地面はデコボコしていて、木の根が所々コンニチハしている森の中を歩くのは意外と大変だ。アスファルトで舗装された道を歩くのとでは体力の消費の仕方がまるで違うし、慣れてないと簡単に転んでしまう。転移直後の俺のように・・・。
——ばちゃっっ
少し疲れが溜まったので、近くにあった泉で水分補給をして顔をゆすいぎ、疲れと転んで死にかけたトラウマを洗い流した。
「もう少し森のおくまで入って探すしかないか・・・」
俺がそう呟いた時だった。
俺は泉の対岸のおかしなものに気がついた。
対岸で一人の少女が木にもたれながら寝ていたのだ。
歳は俺と同じぐらいだろうか。
寝ながらも手には剣が握られている。服装的に俺と同じ冒険者だろう。
透明感のある銀色の髪をもった少女。
とても綺麗な顔つきをしており、木陰で眠る様と相まってまるで絵画の中から飛び出してきたようだった。
何時間でも見てられそうだ。
「——って、違う違う。
危ないでしょう! こんな魔物のいる森の中でか弱い女の子が一人で寝てちゃ! ゴブリンも危ない盗賊のおじさんとかもいるんだし、襲われちゃうでしょうが!」
母親モドキの口調の、おふざけの独り言が寝ている少女に聞こえてる訳も無く・・・。
少女はすやすやと気持ち良さそうに寝ている。
しかし、一人で森の中で眠るというのは、おふざけ抜きに本当に危ない。
一人の場合、寝ている最中に何か起こっても、起きた時には手遅れになってる危険性が高いのだ。
気持ち良さそうに眠っている所申し訳無いが、安全には変えられないので起こして注意してあげよう。
俺は少女の方へと歩み寄った。
俺は木の根元、少女の目の前で腰を屈めた。
遠くから見ても美少女だとわかったが、近くで見ると尚更だ。
”まるで天使のような“
そう形容しても全く違和感を覚えないほどに可愛い。
ぶっちゃけめちゃくちゃタイプだ。
名も知らぬ美少女が目と鼻の先。
手の届く距離で寝ている。
少女が天使なら、俺の中の悪魔が「なあハルト、少しぐらい悪戯しちゃえよ」と囁いてくる。
少女を眺めつつ、俺の中では絶賛、理性と悪魔が第二次世界大戦並みの戦争の最中だ。
・・・10分の激戦を経て戦争は理性陣営の勝利で終わった。
俺は悪魔を消し去った純粋な心で、少女の肩に手を伸ばした。
異世界来たけど、チートはありませんでした。 オリアカ スノ @ORiaka_SUno
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