ページを開いたら一気に極北の大地へと持っていかれます。ともかくその描写のリアリティがすごい。果てしなく続く大陸を走る犬ぞりの疾走感。スリルとスピード感いっぱいのバトルシーン。しなやかで俊敏な野生の動物の動き。まるで3Dの映像が目の前に迫ってくるような臨場感で楽しませてくれます。
危機一髪の戦闘シーンが続くかと思いきや、腰が抜けるようなお笑いパートも用意されていて、そのリズムのよい緩急が読者を飽きさせません。
天変地異の謎に立ち向かうのは特殊能力を持つ小学生の少年と、少女の姿をした白き霊狼犬。自分の使命を果たすべくカナダへ向かう彼を中心に、うんちくを語る眼鏡のハムスター、料理上手な関西弁の金髪男など、ヴィジュアル的にも中身もかなーり個性的な面々が揃います。が、ひとりひとりに重要な力と役割があり、誰ひとり欠けてはいけない少数精鋭のチーム。彼らのやりとりが笑いを誘って気が緩みそうになるんですが、闇と対決するバトルシーンではそれぞれの活躍をしっかりと魅せてくれます。
現実にある地球規模の問題を絡めつつ、闇の力とどう対峙していくのか。自然と人間の共存という大きなテーマと異能力エンタメを掛け合わせたスケールの大きなファンタジーです。
夏のカナダ極北にて、突如として発生した「闇のオーロラ」が、空を浸食していった。そんな天変地異に立ち向かうのは、特別な『能力』を授かった少年・蒼仁と、蒼仁がかつて助けた白き狼犬が変化した少女・シェディス、そして、蒼仁と志を同じくする仲間たちだった。
雄大な自然、動物と人間の共生、人の輪の温かさ、料理で命を繋ぐこと……この物語という広い世界に、尊いものがギュッと濃縮されています。
「闇のオーロラ」の浸食を受けた世界は、厳しい状況に置かれていますが、希望を忘れずに抗う人たちがいる限り、きっと大丈夫だという希望が、物語から力強く伝わってきました。
蒼仁とシェディスたちが、これからどんな景色を瞳に映すのか。物語の結末を、じっくりと見守りたいと思います。