第4話 シンセティック・アニマル

 橋宇土部隊はワープエリア001の無限の広さの部屋にいて射撃訓練をしている。

どうもライフルを撃たせてみると橋宇土の連れてきた加藤、渡部、工藤以外そこそこに当たって経験があるようだ。訓練は工藤もうける。特に鹿嶋の推薦した鯖江純一もよく当たる。木村誠も腕がいい。水野一郎も油断できずスナイパー訓練に真剣だ。

「一郎君いくよ。会議だ。あとの人は練習してて。」

ワープゲートで駐屯所に行く。

 談話室でリラックスして会議のようだ。宍戸小隊長のけがは治っている。「」」 

「今日は反省会と作戦会議とかねているからリラックスしてやってくれ。」

鹿嶋が言う。

「前回の作戦の多方面からのドローン記録を再生しながらな。下界のニュースではホテル大爆発と、吹っ飛んで遺体がなくなったとニュースもワイドショーも騒いでいるな。適当にやっているようだな。」

「ユーチューバーが盗撮していて空間がゆがんでいると、ステルス・ドローンを撮影しているのを上げているな。いま彼女たちにいろいろデマビデを合成させてユーチューブにあげさせて真実を偽物で埋める。」

「でもこんなに大っぴらにやって大丈夫なんですか。国防省とか、警察に狙われるでしょ。」

橋宇土が聞く。そして周りの隊長たちの顔を見ると知らないといった風だ。

「絶対、大丈夫だ。」

鹿嶋が言う。

「それはその時に議論することにして、とにかくMXメディカル地下の残りと、宇津井をなんとするかだ。」

「宇津井を引きずり出せないなら、宇津井以外を引きずり出してそのすきに退治する作戦にしたらいいんじゃないかな。ホテルの爆破よりは地味なニュースで終わらせられる。上空から真下狙いで貫通弾攻撃で。」

橋宇土が言ってビールを飲む。

「訓練の後のビールうまいですね。」

水野一郎も笑顔で飲んでいると、水野小隊長がちらりとにらむ。

鹿嶋が言う。

「よし、家族をなんだかんだ誘い出せるかどうか橋宇土隊に、探って仕掛けてもらおう。仕掛けの遂行は橋宇土、一郎は入るなここでMXメディカル本社の始末がある。」

橋宇土はそこから電話で射撃訓練中の全員に呼び掛け、駐屯所で工作作戦の遂行があったことを伝えて、風呂入って休息後、集合を命じた。

「宇津井の家族でも、養子夫婦はよく出歩くから、引きずり出すとしたら妻だな。」

橋宇土は独り言をいい、一郎に伝達に行かせる。

 少しして一郎が戻ってくる。

「MXメディカルは鎧着て貫通弾ライフル持って侵入するのが一番よさげですけどね。」

宍戸が言う。

「空から貫通弾であの本社をぼろぼろにしたら、ワイドショーどころでないですよね。」

「本社は50階だしな、貫通弾が地下に到達するにはビルが崩れてもがれきで無理かなあ。ニューヨークセンタービルみたいにはいかないでしょうね。」

「しかし首都でビルを占拠というのもなあ。封鎖されて出られないのはワープゲートで出るとしても、俺らがビルに立てこもるテロリストみたいになるなあ。」

鹿嶋はぼッとしているように言う。


 橋宇土隊9人が来て指令室で宇津井氏の妻の行動を探り家が出る仕掛けを探し始めている。

「女はやっぱりバーゲンセール。近くでバーゲンセールさせて呼び出す。」

「旅行よ、温泉一泊旅行で誘い出さないと、バーゲンセールなんて買ったらすぐ家に戻る。」

「でも我々は10分あれば目的遂行できる。」

「とにかく、全部考えて全部の可能性をリストアップして、実行方法をまとめて。」

ということで様々の案が出て実行方法が考えられていく。


 談話室では、MX本社ビルの設計図が表示されている。地下は50メートル潜っていて地下12階まであるようだ。

地下3階までは駐車場。4-6階が実験室。6-12階が低温倉庫となっている。戦闘があるとしたら4-6回だろうとみられた。

「駐車場に侵入して地下3階から爆破して地下4階に突入していくのはどうですか。」

宍戸がいう。

「なぜかこんなところに潜らせると、俺は一部隊失ってしまいそうな不安がよぎるんだ。ワープゲートは地下深くなるほど自由に作れない。ワープ装置を置けば別だが、それを置いてくることになるのも危険だ。」

鹿嶋が不安そうにしている。

「それにMXメディカルはまだ警察が周りを固めているしな、社員は出社しているが、警備はあいつらにも厳しいが我らにも厳しい。」

「でも、今やらないと、人からとったエキスを持ち逃げされてしまうのは明白です。3匹ならこの装備で勝てます。やりましょう。」

高橋が言う。

「突入して、シンセティックをやるのはいいとして、その後出口を警察隊・軍隊に包囲されたらどうする。」

宍戸が言う

「徹底抗戦。」

「だめだ。」

橋宇土が言う。

「降伏して投降ですか。」

「それもだめだ。」

鹿嶋が答える。

水野が言う。

「なんか外部からやってくれるんなら、立てこもりますけど人質とっていいんですか。」

「人質はシンセティックやレプテリアンならいいが人はダメだ。」

「なるほど」

「中に人がいたら無傷で開放して立てこもる。これは厳守だ。徹底しろ。」

鹿嶋が強く言う。

10人の正副小隊長がうなづく。

鹿嶋はコーヒーを飲んでいる。

「ならやるか。立てこもり用に、水、食糧、酒を持って行け。装備品は一切、警察軍に渡してはならない。渡した場合自爆する。」

「了解しました。」

みな答える。

「侵攻作戦案を作ろう。案を出せ。」

「納入業者、清掃会社、新聞社などを装って地下駐車場に入り、BF3まで下りてそこで鎧装着、待ち合わせて侵攻でどうです。」

「さっきのまんまだが地下に行くと透視モニターが使えない。宇宙X線を使用しているため地下15メートル以下は完全に見えないんだ。最悪地下12階まで彼らを追い続けなければならない。彼らは冷蔵庫に立てこもる食料は一生くっても余るくらいだ。だから戦闘は長期戦の上、現場の判断に任せることになる。明らかに戦闘は数分では終わらない。地上の警察と軍による封鎖は確実だろう。」

鹿嶋が言う。

「では一部隊は、もう最初から地上1階部分から占拠して立てこもって、その間に地下を掃除するということでどうでしょう。そして、まあビル全体を人質にして、終了後一階部分のワープドアで全員撤退するというのは。」

と、橋宇土が提案する。

「地下に追い込まれなければいい案だ。、問題は地下駐車場入り口はヘナへナシャッターということで地下駐車場に侵入される危険もある。」

「地下駐車場前に装甲車置きましょう。」

宍戸が言う。

「それは効果的だがこけおどしで、機能的にはステルスドローンを上空に停滞させた方が強い。」

水野が言う。

「今回は包囲する連中へのこけおどしで十分だ。装甲車で、どうだ。」

宍戸が答える。

「ならいっそのこと、ミサイル戦車にして、駐車場前を陣取り、照準を国会にするか。」

宍戸が追加する。

すぐに鹿嶋が反応する。

「それはまずい。まずいが外交省ビルとか、明らかにちょっと変えればそれとわかるところにしておけ。」

ということで、細かいところが決まっていく。

「よし、この案の詳細は明日までに練って検討する。今日はここまで。」

一郎と橋宇土はワープゲートで居住区に帰る。他のメンバーは宇津井宅の問題には率邸まだ戻っていない。

 橋宇土は居住用ワープエリア209の水の豊かな川辺のロッジにいる。そのロッジからすぐ美しい川に釣り糸を垂れられる。そこは、安曇野のようなところに住んでいる。すでに椅子も桶も用意してあるが、釣ってもすぐ放すので食べる気も飼う気も全くない。戻ってきれいな水面に釣り糸を垂れているだけの余暇だ。釣れる魚はイワナ、やまめ、鱒といったおとなしい魚ばかりだ。ピラニアなどはいない。もともと、橋宇土が連れてきた魚だけだ。

 水野一郎は山の上にロッジを作ってそこに暮らしている。雲が下に見える。あたり一面草野原でさらさらと風が吹いている。

「兄貴がこの仕事は最高だと言っていた理由がわかる。」

と独り言を言っていとこに感謝している。


 翌日、駐屯所指令室に入る。

鹿嶋が談話室をうろうろ立って歩いている

「ああきたか、宇津井の家族が出張らった。今日から明々後日までの3晩のチャンスが生まれた。君のスタッフの画策のおかげだ。実行時期は任せる君の部隊でやってくれ。ここではMXメディカル本社ビルを打ち合わせるので作戦は第一小会議室を使ってくれ。」

 橋宇土はモニター室の隊のメンバーを第一小会議室に集める。

 見ると幾人か顔から疲れの色が見て取れる。

「ねね、向かいの八百屋にくじ引きやらして、懸賞はこっち負担といって、あの婆に熱海、玉剥き温泉一泊10万3連泊ペアをあててやったの。で当選日が先週だったんだけど、行く人を書き込めと迫ったら、レプ旦那が拒否したらしく、近所のばばあの名を書いてきた。これで、レプひとりぼっち。」

工藤が自分の手柄を自慢している。

「で養子夫婦はどうやってよけた。」

橋宇土が聞く。

「大東亜戦争のあと、派遣されてインドネシア独立のために戦ったという、カーマおじさんからボルネオにご招待という連絡と手紙で、息子夫婦を誘い出して、それに乗った。」

渡部が答える。

「カマおじさんてやばくねーか。」

「カーマおばさんもついているから。」

「そうか。で、何日。」

「一週間、カニ食い放題コースだが、現地の交通事情からひと月は戻れない。」

「ボルネオでそんなコースあるのか。」

「ヤシガニ取っただけ食べ放題みたいですよ。」

「ヤシの木って8メートルくらいあんでねーの。」

「ま、いいでしょ、ひと月帰ってこなければ。」

「奥さん海外行ったことないらしくて、外国語も苦手で引っかかったんですよね。」

そこに、

「宇津井息子夫婦の出国確認取れました。」

とリアルタイムの報告がオペレーターから入ると。

拍手が沸いて、細かい話は飛んだ。

「みんな疲れてるみたいだから明日のこの時間集合。ゆっくりやすんでくること。」

橋宇土が言う

「作戦はどうします。」

「いや単純だから、何も作戦ない。行ってぶっ放すだけ。だから寝て来い。」

「了解。」

で、橋宇土と一郎は談話室の方の会議に参加する。

「ああ、終わったか。」

鹿嶋が言う。

「あす、この時間から実行して決着させます。」

「こっちもね、明日夕刻から決行に決まった。そっちが早く終わったらここに詰めて予備軍として待機してくれ。詳細はこの番号でモニター見てくれ。今日は解散して休息を取ってくれ。」

 そちらの会議も終わっていた。


 みな自分のワープエリアに帰り休息の時間を取った。橋宇土は河岸のロッジのテラスで魚釣りのさぉを立てて寝ている。そこは地球と同じタイミングで昼夜が繰り返す。夕方になって少し寒くなったのでふいと目を覚ます。

「夜か。」

 ロッジの中からいい香りがしてくる。

「お目覚め。」

工藤が来ていて飯を作っている。

「おいおい」

「ここっていい世界ね、でも買い物大変。」

「ああ、その辺のもの取ってきて食っていればいいよ。」

「あたし都会育ちだからどれ食べられるかわからない。」

「この世界に、食えないもん持ってこなければいいんだよ。」

「うまそうだな、いただきます。」

彼女の作った焼肉とアスパラガスのお浸し、飯がどんぶりに山になっている。

ゆっくり食べて、コーヒーを飲んで一息つく。

「ねえ」

「今から花火上げるときにだめだよ、弾はとっていかないと」

「終わってから」

「今回は楽勝だから終わったら、あっちの山に行ってしっぽりやろう。」

「楽しみー」

てなことで二人は風呂に入ったり、歯を磨いたりして、ワープゲートを超えて駐屯所に行く。


 昼間から始めるのは橋宇土隊で、ほかの隊は夜からだ。全員が集合して、談話室で、木村、峯山、阿部、鯖江は牛丼、カレーなどを食べながら会議している。彼らは独身だから家でも食べ物に不自由しているのだろう。ワープケートでもワープエリアに行くより街に行って生活している。

「今日の作戦は、ステルスドローンで宇津井邸上空まで行って貫通弾を下に向けて打つだけだ。打ち込んだ後降りて行って宇津井の退治確認後、撤収という単純な任務だ。工藤がオペレーションして状況をくれる。確認に降りるのは俺と鯖江だ。貫通弾は、俺、水野、木村、阿部、海塚、峯山、大石、鯖江の8人で打ち込む。標的は宇津井一点だ。」

「不測の事態ってなんかありますか。」

加藤が言う。

「俺と鯖江が下りてなんかあったら、水野に従え。」


「ワープエリア107に移動」

 橋宇土隊が次々に107に行き、待機しているステルスドローンに乗り込み真昼間の住宅街に行く。

「気が付かれない高さに行って望遠しよう。標高600メートル。」 

 透視モニターに下の家が映っている。

「いるか。」

「そろそろ昼だし腹減って台所に来るだろう。」

しばらくみんなでモニターを見つめている。生唾を飲むものと、水を飲むものの喉の音が響く。それほどドローンは音が静かだ。

 しばらく静かにしていると生物の反応が現れた。地下から出てきたようだ。規定通り台所に行って冷蔵庫を開けている。

「来た。降下。高度150メートル。」

数秒で降りる。

「床ひらけ」

8人は命綱を腰につけドローンの壁につないで下向きになり、ゴーグルをつけたまま貫通ライフルを構える。

「よし」

7回聞こえたところで

「発射」

と橋宇土が言うと、一斉に射撃が始まり下の家は煙を上げている。

「やめ」

「すぐ降下して確かめるぞ」

橋宇土が言うと鯖江と二人飛び降りて、一人用ドローンで死なない速さで降り立ち、拳銃を構えて台所の死骸を確認に行く。そこには、うろこのあるレプテリアンの死体がある。

「目が濁っているからもう死んでいる。もどるぞ。」

橋宇土が言うが、鯖江は融解弾を二発撃ちこみドローンで上昇し帰還する。

「マニュアル以上にうまくいったな。」

「1分37秒です。」

ドローンをワープエリア107に返すと、駐屯所に戻る。

そこから、他4部隊がMXメディカル本社襲撃の出撃準備に入っている。

4人の小隊長が橋宇土の肩を叩く。

「やるじゃないか。」

「簡単な仕事だからね、」

「根回しのおかげだよ、」

会議室に彼らが入る。

橋宇土と水野一郎か指令室におり、他は談話室でくつろぎ待機している。

「こんな大一番見てるだけとはな。」

橋宇土がため息をつく。

水野一郎が隣でいう。

「出番きますよ、これだけ計画でかいと必ず穴が開く。」

「そうかな。」

水野がうなづく。

「隣いって酒飲むなといってきて、出番はあるからと」

一郎が笑ってうなずいてはしっていく。

「橋宇土さん。ここのモニター談話室に映しますからあちらでどうぞ。」

「そうか、リラックスしながら拝見するか。」

橋宇土も談話室に行きコーヒーを取って椅子に掛けて20のドローン・モニターの内見やすいものを見る。


 すでに夜になり、隊が準備完了して次々と出動した。ワープエリア101からミサイル戦車がワープゲートが開いたら短時間で出るため待機している。トラックには鎧装甲部隊が宍戸隊と木村隊、水野隊で30名乗車している。

 高橋隊が戦車に3名、ステルス・ドローンに7名でバックアップしている。

午後九時になった。

 戦車と装甲車がビル直前のワープゲートから出動して、MXメディカル本社ビルに歩兵は降りて突入して、戦車は予定通り駐車場前にバックで停車する。トラックは自動運転でワープゲートに帰って消える。道路のワープゲートは消える。ビルの守衛はへたれて逃げ出している。

 上空にはステルス・ドローンが停空して下を監視する。

 ビル一階を制した鎧部隊は裏口、正面口を内部から接着弾で閉鎖した。エレベーターを二階に送って接着剤で固定して、エレベーターの穴から個別ドローンで鎧兵が下りていく。力がドローンで足りないので壁を抑えながら降りていくので、壁が傷つき壊れていく。

 7人、地下4階に入り、7人地下5階に入り6人地下6階に入った。

1階は10人で封鎖と侵入に備える。相手は人になるので、水滴弾が使用される。手洗いからホースで水を引いて銃に込める。レールガンの要領で、水は高速に加速されて飛ぶので殺生能力はないが痛みはすごい。顔を狙うと失明の恐れがあるので人を制するときは顔は狙わない。

 体当たりで来られた時は放電して感電させる装置が鎧についている。他に放熱モードにすると100度に加温されて鎧を触れない。一階の選挙は簡単に終わったが、上の階から会談で降りてきて陰でこそこそするのが後を絶たない。

「死にたくなければ上にいっていろ。」

いちいち言うのが面倒なので会談の扉に書いているが、覗きに来るのが絶えないので部隊から二人さかねばならない。もう一つ外部の警察がここに侵入できるルートがある。避難用外階段で、避難用外階段を上り二階に行き中から開けてもらえば建物内に入ることができる。このルートをドローンが切ってしまう予定だが、ある程度逃がしてから切ることを予定していたが、鎧隊員二名が接着弾で一気に10階までくっつけてしまいに行っている。

 屋上侵入ルートが残っているが、ステルス・ドローンとミサイル戦車が地対空ミサイルで狙っている。

 まず正面玄関にパトカーが来た。玄関をガラス越しに覗く。とんとんと叩くそぶりをしている。会社のロビーの内戦に受付から電話が回ってくる。交渉人は水野小隊長が行う。内線通話に自分の鎧の無線機をつないであとは自由に動き回りながら交渉をする予定だ。

「我々はこのビルに用がある。真犯人を退治するまで占拠する。内部での妨害は排除する。侵入者は排除する。屋上への航空機の接近も破壊する。」

 と通達して、パトカーが二台になった。

 とここまで30分立っているが地下から爆音すら聞こえてくない。

 地下に入った木村・宍戸小隊長たちは地下4~6階の部屋すべてを確認したが誰もいなかった。ここから10名ずつになって、7階,8階と交互に降りていく。すべての倉庫のドアを開けるが暗証番号をハッキングして開けてもものすごい低温倉庫なので中にシンセティックがいる見込みはない。

最後尾が壁の向こうに空洞がないか超音波の機械を壁にあてて調べるが何もない。

最下層12階まで何もない。最下層に着くとややそこは大きな一つのまとまった空間になっている。

 ドアを開けた瞬間犬が吠えながら中から飛び出してきて、鎧にかみつく。そのかみついて擦れる音が金属音で鈍い音を立てている。犬の歯が金属にインプラントされているのだ。突入先頭が犬に絡まれて進めない。

「先頭構わない。撃て撃て、同士討ちだけするな。」

だが犬に食いつかれて銃が下に下がり近すぎて打てない。狭い入口に降りてきた木村隊と改造犬のせめぎあいでドアと狭い廊下で進めない。何発か発砲して当たっているが回復が異常に速いほか、攻撃するほど狂暴になってくる。狭い入口を内と外から争っているが、犬の群れの方が多く一匹二匹とすり抜けて出てくるのでうしろに連なる全隊員にかみついているほか、10数頭は上の階に登っていった。

 全部で何匹いるんだ。

 「犬は50以上います。奥には別のもんもいます。」

隊員の一人が、貫通弾を背負って、剣を抜き、オリハルコンの鎧の腕をかませたまま体を載せて刺し殺す。心臓にさしたまま1分以上すると蘇生しない。それが功を奏してみな剣にとり替えて犬を退治し始める。

 激しく戦ってたまらないので、いったんドアを先頭の隊員が閉めて、犬が出てくるのを止める。

「水野、すまん番犬取り逃がして上に10匹以上のぼった。凶暴で歯は金属。短剣で心臓さしてすぐ抜くと蘇生するから1分以上そのままにして倒している。広ければ貫通弾もいけるかもしれないがここは狭くて撃てない。」

「了解、こちらは比較的静かだ。」

「屋内階段のところに二名待機して下から犬が来たら即射殺しろ。」

と木村が指示したのがマイクに入る。

 エレベーターの穴を降りていくルートを取った木村隊は、地下12階に降りてもエレベーターの12階の扉が開かず貫通弾を撃ちまくって破壊して出た。とこがそこにはバイオテクノロジーで大型化された猿がいて、鎧兵を持ち上げて叩きつけたり大暴れする。銃を撃っても心臓か頭に当たらないと死なない。やっと一匹倒したところで、3隊員あちこち叩きつけられて破壊したエレベーター・ホールに戻り円陣を組んで防衛に入る。大型のサルも近づくと撃たれるので廊下の角からこちらを除くだけで迫ってこない膠着状態になった。

「木村隊、今の見たか、こっちはサルだよ。二匹やったか、二匹やった。体制を整えてまた侵入する。マシンガンが欲しい。」

「わかった、すく届ける。2丁ある。」

高橋がドローンから答えると、ビル1階にワープゲートを作りそこからマシンガンの入ったケースを二つ置いていく。かなり重く地面をそこ付けの車輪で転がしていく。エレベーターの軌道からロープでつるしてウインチで下におろす。

 しばらくして木村隊のマシンガンの音が景気良く響いてくる。

 宍戸隊もドアを開けて犬退治をはじめた。空撮ドローンが飛ばせないので隊員のヘルメットにカメラが付いていてそれらが実況になっている。

 そんな中、1階も騒がしくなってきた。周りの赤色灯が増えて道路が通行止めになり、ヘリが飛び回っている。

「警告する。ヘリは飛ばすな。」

一発地対空ミサイルの火薬の抜いたものをヘリに向けて発射すると、ヘリはふらふらしながらどこかのビル屋上に不時着した。

 空中ドローンの高橋から報告が上がる。

「F42が来ている。垂直離着陸機だ。安保条約下でのU国の行動だ。国が後ろにいるのかな。」

鹿嶋が指令室から言う。

「かまわない着陸しようというそぶりなら撃墜せよ。」

「いいんですか。」

「いい。びびるな。」

下では木村隊が、派手に撃ちまくっている。

宍戸隊は再び小休止している。宍戸隊をすり抜けた犬が一階の階段にも現れたので地下に向けて貫通弾を撃ち始めている。

水野もネゴシエーターと通話しながら、犬の登ってくる階段から下に向けて撃っている。

ネゴシエーターの声が震えている。

「あんたら、ヘリまでミサイルで落として何してんですか、戦争してるんですか。」

水野も一心に下から登る犬を撃っているが、なかなか当たらないところに当たってもなかなか死なない。歯を食いしばって弾を込めつつ撃ちまくる。

しばらくすると、ビルの上で爆音がしてビルが震えた。

「F42が垂直着陸しようとしたので破壊した。」

ステルス・ドローンの高橋から報告が上がる。

「やったね」

ささやきが入る。

 脱出シートから脱出した操縦士が玄関前の路上に座席ごとパラシュートで降りてきている。

 宍戸隊が三度目の犬切りを始めている。中に入れるまで犬が減ると、中の奥から鎧を着けたシンセティックが銃を構えて撃ってくる。幸いこちらの鎧は貫通しない。

剣から貫通弾にして間合いを詰めていく。

「開始から3時間。まわりに機動隊が配置され始めた。」

「突入されないように、定期的に15分毎、道路に破片の飛ばない手りゅう弾投げる。」

 高橋が空からほとりと落とすが高すぎて、落下と同時に衝撃で爆発する。そのたびに周りの機動隊は後退していく。

「犬が始末ついたら、でっかいスズメバチが作られてた。こいつらのけつの毒ねただの蜂の毒でなくて金属を溶かす酸だ。・・・鎧は大丈夫だが銃が溶ける。剣でやるしかないな。」

木村隊も猿を退治した後蜂に銃を溶かされ始めている。

「バイテク兵器か」

「進んでるな。」

木村隊の中の雑談だ。宍戸隊は多量の蜂で進行が妨げられている。

「火炎放射器使えるかな」

「ここで使ったら自分にも来るかも。」

宍戸隊の雑談だ。

 体育館のような広い一つの部屋になり真ん中あたりにシンセティックが鎧を着て物置くらいの箱を開けて蜂をけしかけて出している。箱はたくさんある。新しい箱を切り裂いてまた新しいのを出し始めている。同じく蜂だった。

 見えるが銃が腐って撃てない。

 一階にも蜂が登り始めた。

「手で叩き潰すとかんたんだが、鎧に破損個所があるとそこから蜂の体液か毒が入って手が焼ける。剣の腹を使ってつぶさないと危ない。」

宍戸からの報告だ。

「二名手にやけど負ったので応急処置頼む上に返す。」

「木村隊のエレベータのところに行けウインチで引き揚げてやる。」

水野が答える。

 そのエレベータのところから蜂がどんどん登っていくが、幸い二階で蓋をしているので、その上に行かないから人質の社員は安全かもしれない。しかし階段は登れるので階段部分のドアを開けると蜂に刺されることになる。刺されれば死ぬのは間違いない。

 木村隊でも猿に振り回された4人の鎧に隙間ができて、蜂の体液でやけどしている。さらに、シンセティックが3箱目を開けたのでさらにあたりは蜂で前が見えないほどになった。

「木村隊一時撤退します。宍戸隊にも同調願います。」

「宍戸隊了解。我らもそちらに退避して一時上に避難したい。」

すぐにエレベータのところからウインチで一か所二人ずつ2つのシャフトがあり、5階で全員上がってきた。エレベーターと階段のドアは封鎖して、地下12階に残してきたカメラで地下の様子を見ている。

 鹿嶋が、

「外が騒がしくなってきた。総理が出動要請して軍が包囲し始めている。」

「二酸化炭素を送る。換気ダクトを止めてエレベーターシャフトから栓を開けて下に落とせ。」

ワープゲートからボンベが10本届く。6人のけが人をゲートで返す。

指令室に鎧を脱いだ隊員が来て処置室に入っていく。全員裸になり水で洗われた後、焼けただれた皮膚に人工皮膚を塗られている。

「代わりに橋宇土隊から6名行ってほしい。ものを回収してくることになるから何も持っていくな。」

鹿嶋が言う。

「では水野一郎を隊長に、加藤、渡部、木村、海塚、鯖江で行ってくれ。」

というと待っていたようにワープゲートに入る。

 入るとすでにエレベーターシャフトから二酸化炭素ボンベの口を開けてすべて落としきっていた。

 モニターで地下の様子を見ていると次々に蜂が死んでいく。

「シンセティックって二酸化炭素で死ぬのか。」

木村が言っている。

「どうだろ。蜂死んだあと、シンセティックの三匹死んでなかったら再び行ってくれ。酸素ボンベ送る。」

鹿嶋が言う。

「もう二時半だな。朝まで解決させたいところだが。」

十分ほどモニターを見ていると地下の蜂がすべて死んでいる。シンセティックは酸素ボンベをつけている。何やら箱を取り出して操作している。

「あいつら、何してんだ。手元拡大。」

鹿嶋が言う。

「爆弾ですね、自爆するみたい。証拠隠滅も指示のうちか。」

「一斉退避。屋内要員はすべてワープゲートから逃げろ。同時にミサイル戦車車内にワープケートをつなぐ、爆発物をもって、溶解スイッチを押してミサイル戦車から退避しろ。ステルス・ドローン200メートル離れて、全員退避確認後撤収。」

鹿嶋が指令を流す。次々と1Fに集まった宍戸・木村・水野隊はワープゲートで帰り、応援の橋宇土隊が、落とした剣や、モニター、通信機などを回収してワープゲートに押し込み自分たちも撤収した。

 戦車の中にワープゲートがつながった。二人が地対空ミサイル、榴弾などを入れたケースを先に返してワープエリア101に戻る。

 高橋隊の最後の一人がまだ出てこない。高橋が、

「おい山本なにしてる。さっさと帰れ。」

山本が溶解スイッチを切っている。

「ちと落とし物です。」

「早くしろ。」

 とモニターを見ていると、山本がふたを開けて上に立つと立小便を軍隊、機動隊に向けてやっている。

駐屯所、指令室内では笑う者もいるが鹿嶋は怒った。

次の瞬間爆発が起こり立小便していた山本は小便していたほうに吹き飛ばされて、路上にたたきつけられた。気づいて慌てて戦車に戻ろうとしたが、包囲していた軍隊の一人が飛び出してきて山本を捕獲、それを後からきたものに任せて戦車に入り込もうと、戦車に登って中に入った。

 鹿島がオペレーターに戦車内ワープゲートを切れといいつつ、自分で行ってスイッチを切った。ワープケートの動きにはやや数秒の時間差がある。言いながら自分でスイッチを切ったのは早かったのだが、勇敢な兵士がワープゲートをくぐる方も早かった。

「ワークスペース101に軍人が入り込みました。拳銃を持っていましたが捕獲しました。」

「名前聞いて、捕獲ワークスペース191に入れとけ。」

「了解しました。」

「名はくわなはじめ、蚕の桑に、名前の名、一二ノ一で一。」

「了解。」

「高橋、上空から赤外線砲で戦車を溶かせ。」

「はいわかりました。」

 高橋が、ステルスドローンから赤外線を当てているが戦車に光は見えない。けれど戦車は赤くなり始めて触っている人は逃げ始めている。

 爆発したビル地下からもかなりの黒煙が上がっている。ビル内の社員が救出されて出てきている。

 戦車が溶けて、ステルスドローンはワークスペース107に戻った。



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赤と青のカチーナ 石井 升 @sargentii

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