頽廃した街で繰り広げられるアウトローかつモラトリアムな活劇

 治安の悪い街で暗躍する顔の無い不気味なダークヒーローと、それを追う刑事たち。一見してアウトローでアクションに満ちた物語だが、そこには登場人物それぞれの繊細な心理的背景が織り込まれている。
 ヒーローは自らの行動原理たる『贖罪』にある矛盾、そして表と裏の顔の乖離に喘ぎ、刑事は自らが考える在るべき警察の姿と現実の腐敗したシステムのどちらに身を委ねるべきか苦悩を重ねる。
 自己の確立に懊悩する者たちが交錯した果てには、一体どのような結末が待ち構えているのか。
 ディストピア的エッセンスや刑事ドラマを愛する人間、特に仙台に住む人間は必読すべき一作。