n=56 奇談

 ネット上に自作の怪談を投稿しているxさんの話。


 xさんはもともと怪談を読むのが好きで、好きが高じて、自分も作る側になったのだという。


 彼の書く怪談は実話の体を取っているが、基本的にフィクションだ。

 自分の脳内で空想し、もしこんなことがあったら怖いな、という想像を文章に起こしている。


 奇妙な女の話、不気味な廃墟の話、気持ち悪い写真の話、マンションに現れる怪異の話。

 思いつくままに怪談を書き、数日おきに投稿していく。


 最初は三日坊主で終わるかと思っていたが、一度始めると興が乗る。

 気が付くと、怪談を書いて投稿することがxさんの日常の一部になっていた。


 そんな中のある日のことだ。

 xさんは気味の悪い女に遭遇した。

 自分が想像し、怪談に書いた女と良く似た姿形をしている。

 xさんの書いた怪談は完全なフィクション、創作だ。

 そのはずだが、その女は自分の怪談に登場させた女にそっくりだった。


 そしてxさんは不気味な廃墟も見付けた。

 実家を整理していれば、気味の悪い写真が出てくる。

 自分の住むマンションの中で怪異にも遭う。


 どんどんと自分が創作した怪異と出くわすようになった。


 自分が書いた怪談は現実の事になるのだろうか。

 それとも自分は、未来で体験する物事を書いていたのか。


 怖くなったxさんは怪談集を完結させ、読み専に戻った。


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奇談n景 @nohouzu

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