第8話 年頃の少女
――仮にもお嬢様学校として名高い桜浜女子学園は、不純異性交遊への取締りが厳しかった。
「もう……やめろって……」
「あら。本当にやめても、よろしいんですか……?」
――もちろん、今どき積極的な取締りこそ行われないのだが、学校側も不純なるものを見つけたときは一通りの指導を行っていた。
「っ……んん……だからそこは……」
「あらあら。ヴィヴィさんったら、こんなに震えて……。大丈夫ですよ。ほら」
――しかし若者というものは大人からの規制を破りたくなる性分があるもので、また破った者同士では独特の結束ができるものでもあった。
「あ……ぁ……キスを……」
「ふふ。ヴィヴィさんったら…………、本当に、可愛い……」
――そのために、朝っぱらから、教室で、同性とはいえ、不純交遊ともいえる行いをしている者がいたらば、とりあえず黙って見守る――。
「頼む……から……キス……」
「ふふ……。はい、分かりました。ヴィヴィさんがおっしゃるのでしたら……」
――それがそのとき朝練をサボった少女の表向きの心理ではあったのだが――
「……ここでしてるの?」
「ヴィヴィさんと、メリアさんが……? ずっと……?」
「……ちょっと、私にも聞かせて……。わぁ……声、すご……」
「待って……順番よ、順番……私も……」
「……え……今、指を……って言った……?」
「ヴィヴィさんって、こんな可愛いこと言うんだ――」
ヴィヴィとメリアがことを起こしている教室の外の廊下では、朝練をサボった生徒が二十人あまり集まり、教室内の様子を熱心に熱心に熱心に窺っていた。
また、もれなく全員がパブロフの犬のように涎を滴らそうとしていた。
魔王令嬢、勇者令嬢とユリラブして子供できたら即処刑 赤木入伽 @akagi-iruka
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