第6話 序章 Epilogue
白雪と由紀が正式に
そのうちの1つ、生徒会室では生徒会長の職務机に向かって3人の生徒が膝間づいていた。1人は肩まで伸ばした燃えるような赤髪が燃えるように美しい少女。1人は緑色のショートヘアの神秘的な雰囲気を漂わせている少女。そしてもう1人は黒髪を三つ編みにした優等生然とした純朴そうな少女。そんな3人の美少女が膝間づく先―――そこには金髪をツインテールにした、まだ12歳ほどにしか見えない小柄な少女が腰掛けていた。
「姫谷白雪が
椅子に腰かけた金髪の少女が面白そうに呟く。
そして天井を仰ぐ金髪の少女。彼女の頭の周りを薄く魔法陣が取り巻いたかと思った時には、少女は改めて自身に対して膝間づく3人の少女に視線を戻していた。
そして、容姿に似合わないぞっとするような冷たい口調で言い放つ。
「決めた。僕達生徒会はこれより、姫谷白雪の覚醒作戦を決行する。目標は姫谷白雪の”決戦兵器”としての覚醒。そのためなら、姫谷白雪の精神が廃人になっても構わない。―――最後に『強化』を手に入れるのは僕達だ。」
そう語る彼女の笑みは背筋が凍るような気味の悪いものだった。
そしてもう1室。真夜中の保健室では柳あかりが養護教諭の清水に突っかかっていた。
「私が一時的に白雪の監視から外されるってどういうことですか! 私が目を離している隙に白雪が固有魔法を取り戻しでもした日には……。」
「公国政府はそれを望んであなたに別の命令を下したんだと思うわよ。」
即答する清水にあかりははっとする。
そんなあかりにお構いなしに清水は苦々し気な表情で続ける。
「姫谷さんの魔法の回復の前兆を受けて、公国政府が姫谷さんへの対応を方向転換しつつある。
あなたも知っている通り、公国上層部―――科学特区の連中の殆どは白雪さんが生まれた時から、姫谷さんの魔法を恐れていた。だから3年前、白雪さんが記憶を失って昏睡状態に陥ったタイミングで科学特区市民はみんな白雪さんを処分することを主張した―――ただ1人、公国最強の魔法少女である『再生』を除いて、ね。
『再生』は力をちらつかせながら科学特区を黙らせ、昏睡中の白雪さんの固有魔法と魔力の殆どを魔法発現直後まで”戻す”ことで科学特区の連中を無理やり納得させた。自分が生きている限り白雪さんは抑えられるから大丈夫だ、ってね。
でも、3年経って状況は変わった。『再生』の力は明らかに弱まりつつある。白雪さんに対してかけた魔法が途切れかかってきているのが何よりの証拠ね。実際、白雪さんは魔法の三重発動ができる程度には魔力量を回復しつつある。
『再生』の衰退がもたらした最大の問題。それは、『再生』が抑止力にならなくなりつつあるということじゃなかった。事態はもっと深刻―――そう、公国は戦略上ポスト『再生』の魔法少女が必要になった。そして白羽が立つのが白雪さん、っていうのは素直に飲み込めるでしょ。でも、万一白雪さんが暴走した時にだれも責任を取りたくないから、白雪さんが勝手に魔法を取り戻してくれるのが望ましい。魔法を取り戻す段階で記憶も取り戻して精神のバランスがぐちゃぐちゃになって取り入りやすくなったらなお望ましい。どうせそんなことを考えているんでしょう。
「力を殆ど失った時に付け入って殺そうとしておきながら、今度は道具のように使い捨てようっていうんですか?そんな……。」
あかりは拳を固く握りしめながら怒りに身を震わせていた。
でも、いくら悔がったところで、自分には公国政府、そして科学特区に歯向かう力なんてない。
科学特区に言われるがままに動くこと、それしか自分に生きる道などない。それはあかり自身が一番わかっていた。
そして、無力なのは清水も同じだった。
「私だって公国の対応は許せないわ。あの子のことはずっと見てきているから。でも、私達末端の情報系魔法少女諜報員と科学者もどきに、科学特区に歯向かうことなんてできないでしょ。
私達にできることは1つだけ……せめて、白雪さんが自我を保った状態で魔法を取り戻してくれることを願うだけよ。」
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