10話.[続けてしまった]

「それは仕方がないよ、友達や親友よりも彼女のことを優先したいものでしょ?」

「僕はゆめと付き合い始めてからもまさといたいと思っているけどな」

「でも、部活があるからとかしづちゃんとの時間を邪魔したくないからとか考えて離れている時点で説得力がないんだよ」


 そうか、側で見ている彼女が言うならそうなんだろうな。

 これは仕方がないことだということで終わらせてそれぞれのことに集中した方がいい、考え続けたところでまさがあの感じなら意味がないからだ。


「それにれいがしづちゃんのことをやたらと気にしていたら私でも同じようにするから気持ちは分かるんだよねえ」

「人間関係のことで気にすることはあっても特定の異性のことで気にしたりはしないよ、ゆめは別だったけどね」


 異常なことが続けばそんなこともあるかもしれない程度のことだ、ほとんどはそんなことにはならずに終わっていくから問題には繋がらない。


「よかったよ、れいが美人パワーに負けなくて」

「そんなこといったらゆめこそ格好いい先輩とかに負けなくてよかったよ。中学生のときはよく誘われていたからさ、まさだったらいいのにと毎回ひとりで言っていたんだよ?」


 幼馴染の彼女が相手だからってなんでもかんでも言えてきたわけではない、それどころか言えないことの方が多かったかもしれない。

 だからこその踏み込みにくさというのがあったのだ、そこに自分の情けなさも加わればどうなるのかなんて分かりきっていることだろう。


「あー、あったねそんなこと。あれには困ったなあ、もうね、周りの女の子の目が怖いの、しかも断ったら断ったで『生意気』とか言われるからね」

「一度しかその場面を目撃できなくて一度しか注意できなかったよ」

「あ、実はあのときかなり驚いたんだよね、普通は敵視されないように見なかったふりをしたいところだから」


 ……許せなくて勢いだけでそうしたなんて言えない、自分のこととかそんなことよりもそれが大きすぎて止まれなかっただけなんだ。

 まあ、無事にその子達からは嫌われたが、変な噂とかが広まっていて通いにくくなったとかそういうことは全くなかったから三年間毎日休ます通ったが。


「あれでもっと好きになったんだよね」

「その割にはゆめ、アピールとかしてきてくれていなかったけど……」

「え、思いっきり毎日アピールしていたんですけど、れいといたいって耳にタコさんができるぐらい言ってきたでしょ?」

「あれは親友だからかと思っていたよ……」

「それもあるけどそれだけじゃなかったんですよ」


 こちらも同じように言い続けていたのが駄目になったというか、何度も言われていたからレア感がなくなってしまったのかもしれない。


「まあ、もうこうなっているからこの話を続けてもただのいちゃいちゃにしかならないけどやる?」

「それなら思い出話を続けようか、どうせなら楽しい話題を多めにしてね」

「ふふふ、それなられいが満足するまで付き合うよ」

「ははは、よろしく」


 意外とそういう話というのは楽しいもので夜まで続けてしまった。

 でも、たまにはこういう時間の使い方も悪くはないから気にしないでおいた。

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