第4話 豚肉の甘辛丼
いらっしゃい。
もしかして、この店を気に入ってくれたのかな。
それはありがたい。カタギの人間が入ってくると、この店に対する警察の眼も向きにくくなるし、何より自分の作ったものを食べてくれる人は、多い方がいいからね。
さて。ご注文は何にいたしますか?
店長のおすすめメニューですか。じゃあ今日は、『豚肉の甘辛丼』にしましょうか。
これは、お昼時に人気のメニューなんです。ちょうど仕事の中間ですし、体力をつけて午後も頑張ろうといったところでしょうね。
だから、お腹にしっかりたまって満足感が得られるものにしています。
この時間帯に多いのは、事務所で働いているビジネスマンみたいな人たち、オレオレ詐欺をやってる二十代から三十代ぐらいの若手たち、あと、本当にたまにですが、近くの工事現場なんかの作業員、まあカタギの人間が入ってくることもあります。
危険な現場に行ってる人たちはこの時間帯はあまり入ってきません。そういう人たちは朝やってきてテイクアウトでお握りを買っていくので。
とはいえ、みんなお腹を空かせています。特にカタギの人間は重労働をしてきた人が多いので、お腹が鳴りっぱなしです。
たぶんあなたも空かせています。早く作りましょう。
脂の乗った豚肉を軽く炭火であぶった後、今度は醤油と砂糖をベースにした甘じょっぱいたれに少し漬けます。
それを炊き立てご飯にたっぷり乗せて完成です。あまり待たずに、すぐにできますよ。お昼時ですから、さっと食べれるメニューにしているんです。
それでいいですか?じゃあ、さっそく作らせていただきますか。
お待ちどうさま。こちらが豚肉の甘辛丼です。甘じょっぱいたれと肉のうまみが絡み合って、舌の上でしっかり味を主張します。甘さだけでは出せない味を、醤油の塩とは違う滑らかなしょっぱさが加わることで表現しています。
白米の甘みにも、甘じょぱいたれがしっかり混ざってとろとろと溶けていくようです。
昼の忙しい時間でも、お腹にするする入っていきます。
もう食べ終わったんですか。このメニューは素早く食べれるようにできているんです。脂ののった豚は小食な人は美味しくてもすぐにお腹いっぱいになってしまうでしょうが、塩見と甘みが混ざれば、いくらでも入ってしまいます。
お昼時最大の人気メニューです。
それでは、またのご来店をお待ちしております。
◇◇◇
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。もしよければフォロー&★評価をいただけると、幸いです。
訳あり食堂、営業中 曇空 鈍縒 @sora2021
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ことば/彩霞
★47 エッセイ・ノンフィクション 完結済 105話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます