蘆屋真名先生の呪術講座(ネタバレ注意)
矢凪潤「なんか…まだ人もいないようなので、とりあえず僕が聞いてみようかな?」
<質問>
…ていうか。そもそも呪術って何ですか?
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蘆屋真名「まあ…基本的な質問だな」
<回答>
呪術とは「霊力」を仲立ちとして、この世の理を基盤として事象を修正する技術だ
重要なのは、「理を基盤として事象を修正」するのであって「理を修正」することではないという所だな
潤「それって同じことじゃないんですか?」
いや、まったく違う
呪術はこの世の理そのものは修正しない
「自然現象を人間の意志で発生させる」のが呪術であり
「この世の理から修正して異常現象を発生させる」のは、世界魔法結社で言う所の汎魔法の範囲に入る
要するに、呪術で起こる「事象の修正」は、すべからく自然現象であって、
実のところファンタジー世界等の、いわゆる魔法元素を必要としないのだ
潤「そういえば霊力って、自然を構成するエネルギーですもんね」
そう、呪術のエネルギーであるところの「霊力」は、「超常的力」ではなくただの「自然の生命力」に過ぎない
当然「霊力」は生命のある所なら異世界にすら存在する
以上、まとめると
呪術師とは、この世の理を知って自然現象の流れを変化させる者であり
彼らが使う呪術は、すべからく自然現象だということだな
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潤「あの~さっきの話で疑問が出たんですが」
<質問>
汎魔法って何?
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真名「まあ、その疑問が出るだろうな」
<回答>
我々の世界の呪術・魔法には一つの大きな疑問が存在した
それは…
「なぜ呪術・魔法はその根本である法則から違うのに、同時に複数種類成立しているのか?」
…だ
例えば、
日本の陰陽道と、西洋の錬金術…
それぞれに、「この世とはこういうふうにできている」という考え方があって
それをもとに異能を扱うことになるが
そもそも、「この世の成り立ち」に対する回答に違いがあるのに、
どっちも異能として成立してるのはおかしいだろう?
潤「そうですね。どちらか一方が正しいなら。もう一方は間違っているはずです」
その疑問に、一つの回答を出したのが世界魔法結社の土御門治正師だ
師は、この世の根本を『混沌』だとしている
『混沌』とは、この世のあらゆる事象のるつぼだ
『無』すら一つの事象として含まれているこの『混沌』こそが、この世のあらゆる異能の基盤となるものであり、異能のそれぞれの「この世の成り立ち」…すなわち『魔法理論』はその一段上に成立しているのだと、師は説明している
これを『汎魔法論』という
潤「? ちょっとわかりにくいですね?」
ふむ…では、コンピュータを例にとって説明しよう
コンピュータを動かしているのは「機械語」だというのは知っているな?
しかし、「機械語」は難解であり扱いにくいために、その仲立ちとしてオペレーティングシステムを利用している
OSには複数の種類があって、使い方も微妙に違うが、すべからく「機械語」を扱うためのモノだ
ここでいうOSが「魔法理論」であり、「機械語」が「混沌」となる
潤「ああ、なるほど。僕たち陰陽法師は
陰陽道という名のOSを使って、機械語を扱っているってことですね?」
その通り、
この世の一般的な異能はすべてOSだ、だからこそ複数種類存在しうる
ここにきて師は、一つの予言をした
『混沌』を直接扱う完全なる魔法…『汎魔法』の存在を…
師の考えでは、『汎魔法』とはこの世の事象を理から修正してしまう大魔法である
…らしい
潤「そんなのが実際あるんですか?」
…どうだろうな
『汎魔法』らしい、というモノはいくつか過去に出ているが
否定されているものも多く、長く研究されているのにいまだ結論の出ないものも多い
我々の魔法世界における最大の謎それが『汎魔法』だ
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潤「では…また基本的な質問を」
<質問>
さっきから霊力霊力っていうけど、霊力って何?
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真名「ふむ…とりあえずは理解しているが、あえて聞こうというその姿勢やよし!」
<回答>
前の質問の回答にもあったが
「霊力とは、自然の生命力」なり…だ
霊力がたくさんある場所はその分活性化し、逆に枯れてしまっている場所はその分衰退化する
これは、すべての生命体にも言えることで…すなわち、霊力が多ければ生命は強く・大きくになり、霊力が少なければ弱く・小さくなる
…さて、この霊力だが、ある特定の条件で一つのところに集まって形を成すことがある
その状態のことを「霊質」と呼ぶ
これは、生命でないものにも宿っているが、生命体に宿った場合「霊体」と言い変えられる
…このとき「霊質および霊体」は、他とは区別する「枠」が出来ている
この「枠」が、一部欠けている病気のことを「欠落症」と呼ぶんだが…この話はまあいいか
「枠」を得て「霊質および霊体」となった霊力は、それ自体が霊力を生産する工場になる
これが「枠」いっぱいになって、キャパシティを超えると、枠外に放出されて「オーラ」を形成する
これがいわゆる「気」などと呼ばれるもので、土地に流れ出て河を形成する
こうしてできた河のことを「龍脈又は地脈」と呼んでいる
潤「ふうん…その説明だと、やっぱり魔法を扱うための魔法元素とは違うんですね?」
…まあ、違うと言えば違うが
西洋魔法では「オーラ又は気」の部分を「マナ」と解釈して行使している
霊力はあくまでも呪術における解釈にすぎず、西洋魔法にもそちらの解釈が存在しているのだ
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潤「では、本格的に呪術に関する疑問を…」
<質問>
符術について教えてください
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真名「符術に関しては、専門の講師を呼んでいるぞ
土御門咲夜だ…」
<回答>
ふふふ…潤様わたくしが符術についてお教えいたしますわ
潤「ありがとうございます。咲夜さん」
では、まず基本的に、符術とは…
『符』と呼ばれる、紙製あるいはそれ以外の素材でできた板に、呪と霊力を込めることによって、緊急時に起動呪を唱えただけで発動できるようにした『速攻呪術』のことですわ
いわゆる真言術のように長々と呪を唱える必要がなく、呪文を聞かれることによって呪を特定される危険もなく、霊力もあらかじめ込めておけるので霊力消費がわずかで済むという、戦闘時にとても扱いやすい術が符術です
潤「そうですね。戦闘ではたいてい符術の打ち合いが行われますよね」
そう…では潤様?
符術の『符』には三つの段階があることは御存じですか?
潤「え~と、確か『封印』『起動』『昇化』でしたっけ?」
その通りですわ…
まず『封印』状態とは、呪と霊力を込めた直後、起動呪によって起動されていない携帯時の状態のことですわ
次に『起動』状態とは、起動呪を受けて符が活性化している状態の事…
最後に『昇化』状態とは、符が呪に変換されて符そのものが消滅した状態のことです
では『起動』と『昇化』の違いは判りますか?
潤「それは…確か『起動』状態の時は、術者の制御を受け付けるんですよね?」
その通り…
『起動』状態とは、『符』を電子機器ととらえた場合、電源を入れて起動した状態のことです
起動された符は術者の制御を受け入れて、追加の霊力を込めたり、複数同時起動の大呪法化、特殊な動作の追加などを行えます
それとは違い『昇化』状態では、基本的に術者の制御を受け付けません。組み込まれたプログラムに従い、全力で動作を行うのがこの状態です
基本的に…と言ったのは、追加で真言術を唱えるなどして、術に直接変化を与えれば、制御したのと同じ変化を起こせるからです
潤「『起動』状態で効果を発揮させることはできないんですか?」
はい、できますわ
よく一般的に出回っている結界を張るための符など、一部の符は『起動』状態で効果を発揮します
しかし、このような符にはある危険が伴います
それは、他の術者による干渉を簡単に受けてしまうということです
『符』とは、呪術そのものを込める『器』であるとともに、呪術に干渉する『門』の役割ももちます
『符』には、人を識別する機能はありませんから、『昇化』状態にしておかないと他人に勝手に使われてしまうわけです
さて、その『昇化』状態ですが、これには欠点が一つあります
それは、あらかじめ込められていた燃料である霊力が消費されると、消滅してしまい二度と使えないということです
これは、真言術などで補助をすれば効果時間延長などができますが…
その分余計な労力が必要になります
符術はそれこそ無限とも呼べるほどの種類存在します
そのうち書き方を覚えておけるのは数種類だけでしょう
普通は書庫などで必要な効果の符の書き方を参照して書いておくのが普通です
それゆえに、覚えておく符はしっかり吟味しておく必要があります
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潤「ふむ…それではまた符術に関して…」
<質問>
攻撃符術のスピードってどのくらいなの?
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咲夜「では…引き続きわたくしが答えましょう」
<回答>
攻撃符術のスピードは投擲の仕方によって大きく変化しますわ
一般的に『起動』状態の『符』を投擲した場合の速度は、時速30km~60kmだと言われています
さらに、精神を集中して高速投擲法を行った場合、時速150km前後になると言われています
これは、一直線に飛ばした場合の速度です
もし、軌道を変化させたりした場合は、これより遅くなると考えてもらって構いませんわ
ここに様々な補助呪術の効果を加えると、最大で時速900km(亜音速)にはなると言われています
ただし、これ以上の速度は、普通の符術では出せません
亜音速を超えてしまった場合、符そのものが速度に耐えられずに自壊するからですわ
潤「そういえば、咲夜さんの符弾投射機はどのくらいの速度なんですか?」
だいたい、時速3000km前後でしょうか?
これは符弾が最新の技術を用いた、亜音速を超えても自壊しない符だから出来ることですわ
さて、以上は『起動』状態の符の場合の速度ですわ
これが『昇化』状態だと若干違ってきますわ
『昇化』時の符術には『昇化点』というものがあります
『昇化点』とは、その点を中心に符術が展開する中心点の事であり、その中心点は特別な場合でない限り『起動』時のベクトルを保ったまま等速直線運動を行います
そして、物体などに接触した瞬間に『昇化点』がほつれて、あとは自然現象として術は崩壊します
固形物を投射する術ならその場に残るでしょうし、炎や雷ならそのまま消えるでしょうね
潤「そうすると、符術って最高速でも亜音速が限界ということですか?」
基本的にはそうですわ
あくまでも、現象をそのまま飛ばすのではなく、現象の発生点である『昇化点』を飛ばすのが符術なので、そのスピードを超えることが出来ません
ただし、これには特殊な場合が存在します
『符』に封印されている術に特別な術式が追加されている…あるいは追加された場合です
その代表的な追加式が次の八種類…『加速』『曲射』『分裂』『放射』『炸裂』『直線』『追尾』『招来』ですわ
『加速』は、『昇化点』が等速運動ではなく等加速度運動を行います
要するにロケット噴射のような状態を引き起こすわけです
これの利点は、『起動』時の投擲速度を超えるスピードを術に与えることです
しかし、敵が避けにくい代わりに、こちらも動体に対しては命中させにくい術になってしまいます
『曲射』は、『昇化点』が重力に従って落下していきます
主に障害物の向こうに術を到達させるのに使われます
『分裂』は、『昇化点』が複数に分裂します。一つ一つの威力はそれだけ分化されてしまいますが、命中はさせやすくなります
『放射』は、『昇化点』を起点にして放射状に術が放たれます
そうした場合飛距離がかなり短くなり、その分だけ広範囲に効果を及ぼせます
『炸裂』は、『昇化点』を中心にして球状に術が放たれます
もっとも飛距離が短い代わりに、かなり広範囲に影響を及ぼすことが出来ます
『直線』は、『昇化点』が指定された長さの直線に変化します
その展開は一瞬であり、うまく扱えば避ける暇なく命中させることが出来ます
その代わり威力は直線の長さに反比例することになります
『追尾』は、『昇化点』が指定された目標に向かって誘導されます
『招来』は、指定された目標に術の効果が直接発生します
これは『昇化点』と目標の距離が短ければ短いほど正確に、逆に長いと不正確に発生するので、どれだけ目標の近くに符を投擲しておけるかが重要になります
以上の追加式は複数組み合わせることもありますが、追加式を組み込めば組み込むほど、符として『重い』…扱いにくい符になってしまうので注意が必要ですわ
扱いやすさが売りの『符術』をわざわざ扱いにくくしたら本末転倒ですからね?
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潤「では今度は…」
<質問>
五行術ってなに?
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真名「ふむ…おそらくもっとも複雑だと言えるのが五行術だな」
<回答>
五行術とは、陰陽五行の法則に基づいて、それぞれの気に関する触媒を用いて、五行のバランスを変化させる技術のことだ
その過程で、一般的な魔法のような現象が起こるために、それそのものを五行術と呼んでいるが
五行のバランス制御こそが五行術の本質であると言える
潤「五行相克とか、五行相生とかあるんですよね?」
その通り
いまさら説明するまでもないだろうが…
五行相生の理は『木生火』『火生土』『土生金』『金生水』『水生木』の5つ
それぞれ、前に書かれた属性を消費して、後に書かれた属性が活性化することを表し
五行相克の理は『木克土』『土克水』『水克火』『火克金』『金克木』の5つ
それぞれ、前に書かれた属性によって、後に書かれた属性が無効化されることを表す
さて、今回はさらに詳しく、各五行術と各属性の関係性を解説しようと思う
五行術と五行の関係性には「旺・相・死・囚・老」の五つのパターンが成立する。
『木行』の五行術を例にとって解説しよう
木行(五行術)と木行の場合…これらは同じ気である
故に木行は活気づき、すくすくと育っていく…これを「旺気」と呼ぶ
木行(五行術)と火行の場合…「木生火」の法則によって木気が火気を相生する
すなわち木行によって火行はより一層強くなることが出来る…これを「相気」と呼ぶ
木行(五行術)と土行の場合…「木剋土」の法則によって木気が土気を相剋する
すなわち木行によって土行は殺されることになる…これを「死気」と呼ぶ
木行(五行術)と金行の場合…「金剋木」の法則によって木気が金気によって相剋される
すなわち木行は金行に運命を支配されている…これを「囚気」と呼ぶ
木行(五行術)と水行の場合…「水生木」の法則によって木気が水気によって相生される
すなわち木気が強くなるぶんだけ水気が老い衰える…これを「老気」と呼ぶ
以上の「旺・相・死・囚・老」は、他の五行術でも全く同じように成立する法則だ
呪法奇伝・設定集 武無由乃 @takenashiyuno00
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