第五話 診る・払う

 警察病院 嵐・麻美・京志郎警部


 担当の医者を先頭に警察病院の中を歩いて行く、普通の病院に比べて質素であるというか簡素なつくりのものにはさすが警察病院らしいと思った。


 部屋も質素である、ただその二人の症状は毒や何か麻痺薬などの症状のそれではなく明らかに呪に端を発するものの症例であった。


「こいつは、私では手に負えんな。大至急、御霊神宮の神無月美空さんを普通の辻馬車で迎えに行ってくれ! 麻美! 任した。私と警部は残って、ありとあらゆる手を尽くしてみる!」といいながら、私は思った医者の領分ではないなと。



 御霊神宮 麻美・美空・御霊神宮宮司闇波竪月


 いつもは代理のヒトや、姫君のお使いが行う業務だ。


 だが私は辻馬車を拾って、貸し切りになるむねと代金を先に払って御霊神宮まで急がせた。


 辻馬車を少し御霊神宮に乗り込ませ、そこで戻ってくるまで待機するようにいいつけた。


 社務所まで行き神無月美空様が何処にいるのか聞いたところ、丁度社務所内に宮司と一緒にいるということであるらしい。


 巫女について行き、障子をあけてもらうまで待つ。


 この時間がもどかしい、だが仕方が無い。


「どなたが来られたのかな?」と男性の声がした。


 巫女が伝える「風祭探偵社の斯波麻美様が、おいでになっています。緊急の、要件であると」と。


「分かった、入ってもらいなさい」と再び男性の声がして、障子が開かれた。


 私は慣れぬ、正座のままその間に入った。


 その後で、障子が閉じられた。


 礼を失してはならない、そのことが頭に浮かんだ。


 正座したまま、一礼を深々と行いながら話した。


「風祭探偵社の、斯波麻美と申します。この度は、警察病院より参りました」と私がいうと


 宮司と思われる男性が話し始めた「警察病院とは穏やかではないな、これは検非違使案件なのかね?」といわれた。


「私はここの宮司をしている、御霊神宮の宮司闇波竪月という」と続けられる。


 顔を上げながら「班長の風祭嵐さんがおっしゃったものですから、検非違使案件に該当するものと思われます。警察病院に行ったのは、間違いありません。病か呪かに当たるものが二人出て、今なお嵐班長は今奮闘中です」と私は矢次早やにいった。


「分かった、美空。警察病院に、行って来なさい。姫のお使いが来るようなら、直ぐに警察病院にみこと共に行かせよう」と竪月様がおっしゃった。


 その言葉を聞けた私は、更なる準備の言葉を継いでいた。


「すでに御霊神宮の前に、辻馬車を貸し切りで待たせてあります。急ぎ、行けるように」と話していた。


 美空さんが、可憐な声で答えた。


「分かりました、闇波様行ってまいります」といった。


「斯波麻美さん、美空をよろしく頼みます」と竪月さまがおっしゃった。


「はっ、神命に変えましても」と深々一礼を行って美空さんと一緒に辻馬車に向かった。



 警察病院 美空・嵐・麻美・京志郎警部


 私は麻美さんに連れられて、巫女装束のまま辻馬車に乗った。


 辻馬車であるためか、周囲の人も特に気に留めた様子は無かったようだった。


 その辻馬車の中であらかたの説明を受けた私は、それは呪ではないか? と告げた。


 そして警察病院に着く、と病室まで案内された。


 病室ではベッドに拘束されて、まだ動こうとする患者二人の哀れな様子がそこにあった。


 私は、警部と嵐さんと麻美さん以外の人を、人払いしてもらうようにお願いした。


 早々公で、見せられる術ではないからだ。


 警部がいって、担当医師と看護士が部屋の外に追い払われた。


「まずはこの部屋のけがれを払いましょう、それで少しは落ち着くはずです」と私はこの部屋に穢れが満ちていることをいった。


 そして神術、穢はらえを軽く舞いこの部屋に渦巻いていた瘴気を浄化させた。


 すると、思った通り患者二人は動くのをやめた。


 そして、一人ずつに呪懐じゅかいをしっかりと唱え呪を壊していったのである。


 すると肌の色も落ち着きを取り戻し、ふくれていたうみなどのものも落ちたのであった。


 京志郎警部や、嵐さんからは流石だといわれ京志郎警部からはいたく感謝された、そして私は辻馬車でまた麻美さんに御霊神宮まで送ってもらった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

盟治退魔奇譚 御鏡 鏡 @mikagamikagami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画