フリーター、異世界転移するってよ

プロローグ

「社内で慎重に検討しました結果、誠に残念ながら今回はご期待に添えない結果となりました。」

まじかー。

僕は小本　正一。

昨今の社会情勢により、就職浪人中の２３歳独身恋人なし。

大学卒業後、コンビニでバイトしながら就職活動をするも正社員採用は遠く、不採用の山である。

最近はコンビニもシフトを減らされつつあり、金欠が悪化の一途を辿る。

「今月の家賃と生活費足りるかな・・・日雇いでも探すかなぁ」

携帯でバイトを探す。

「倍バイト」　最低賃金２倍！福利厚生２倍！とってもお得なバイトです！初心者歓迎日払い可！簡単なお仕事です！まずはご連絡を！

「福利厚生２倍ってなんだよｗ胡散臭いなー。」

といっても最低賃金の２倍か。日払いもしてくれるみたいだし、コンビニもシフト減らされてるしなぁ。捨てアドでも取って連絡だけしてみて、やばそうならやめればいいしな。

業務内容、給料等労働条件の確認メール送信っと。

返事は明日以降かな。

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「あれ？ここどこだ？」

僕は家で寝てた気がするんだけど、真っ白な空間で目が覚めた。

「おお、起きたか」

禿げた真っ白な髭のお爺ちゃんが似合わないスーツを着て立っていた。

「すいません、どなたでしょうか？」

「ここは狭間で、わしは倍バイトの社長じゃ」

お爺ちゃんがキリッとドヤ顔して立っているのだが非常にスーツが浮いている。

明らかに着慣れていない。七五三の子供がスーツを着ている感じだ。

「初めてのスーツだから仕方ないじゃろう！せっかく社長らしくしようと思ったのに・・・」

あれ？今僕口に出してないよね？なんかスーツは似合ってないけどこのお爺ちゃん神々しいしひょっとして・・・

「神様？」

「そうじゃな、異世界モルムで神をやっておる。

今回は倍バイトを通じてモルムに来てくれる人員を探しておった。

あのサイトは異世界への適正がないと見えんようになっておる。」

いやいや、ちょっと待って。異世界って帰ってこれないんじゃ？給料倍でも意味ないよね？！

親だってフリーターになってから関係はあまり良くないけどそれでもどうでもいいわけではないし、居なくなったら悲しむだろう。僕も流石にもう会えないのは寂しいよ。

「そこは福利厚生で盆、正月は神殿からこちらに直通で行けるようにするから！

給料は毎年１０００万ずつ地球とモルムで支給する！さらに地球に帰りたかったら支給日に毎年相談に乗る！」

すげぇな福利厚生！そうすると連絡がつかない海外勤務って感じになるのかな？帰っても来れるみたいだし後は冠婚葬祭等の緊急時の連絡ができれば

「それも福利厚生で！冠婚葬祭なら地球の神経由でそっちに連絡つくようにする！」

めっちゃ食い気味に返事したな！福利厚生すごすぎない？！

「いや、思った以上に適性がある人間が少なくて、さらに倍バイトに申し込む人がおらんでな・・・。この２年で初めてメールが来たんじゃ・・・」

聞いてみると、適正が高ければ地球への転移も楽（神様基準）らしく、神殿経由なら僕の福利厚生にかかる負担は小さいらしい。

地球から見てモルムは下位世界であるらしく、僕の才能値は異世界トップクラスであり、下位世界は上位世界に触れることで世界が上向きに向上するのだとか。

僕に転移してほしい理由がそれだという。別に知識チートしてほしいとか魔王討伐ではないとのこと。

まぁ剣と魔法の世界ではあるので楽しんで生きてくれれば良いと言われた。

ここまでお膳立てしてもらうと行きたくなるね。

「わかりました。ではコンビニと家族に連絡して、モルムに行きたいと思います。」