特別篇
特別篇 新年を迎える館山家
「カズキ! 鳥泉さんとこの住所間違ってて年賀状帰ってきてるよ!!」
「ええと... 引っ越したのかな...でも確かめる術はないな...」
「そういえば彼女の方から来てたからそれ確かめればいっか!」
「え... なんで彼女は住所知ってるの...?
連絡先とか今は繋がってないはずだよね...
まさかね...」
「いやいや違うよ...信じて! Trust me!」
「信じてほしけりゃ態度で示してよ! ふん!」
彼女は腕を組んで”唇”を尖らしている。
求めているのは抱っこかキスか、それとも...ね、
いやいや「それ」は、ないな。なにしろ、年を越す瞬間も、越してから数時間くらいもずっとお楽しみだったのだから。思い返すだけでも笑いがこみ上げてくる。笑いというか幸せの微笑みというか、ふふふ。「お楽しみ」というには若すぎるかな。高校生じゃないし。最近お母さんにも早く孫の顔が見たいって急かされてるんだよね...
そろそろ、うん、そろそろね
(思考時間3秒)
僕が愛してるのは君だけだよ、そう言って、
いつもとは順番を入れ替えて初めに深めのキスをする。そのあとは、うなじに手を滑らせてから抱き寄せる。季語では新年といえども、このアパートには両親や親戚、ましては子どもなどはいない。今は午前8時だが、昨夜にフラッシュバッグしたいところだ、彼女は感じ取ったのか...
「こら! 一年の計は元旦にありっていうでしょ! 朝ごはん食べて初詣行くよ!」
「別に、僕は今年は〇〇だけの一年でもいいけど〜〜?」
「うう〜〜 だめ! 初詣行くもん
また今夜にね(超小声)」
彼女がかわいすぎる。バカップルか? いや夫婦、おしどり。
ちゃんと最後も聞こえてるよ!
家から比較的近い椿神社と、護国神社に初詣に向かう。
人が多かったらちょっと嫌だな。
運転は僕の担当だが、やっぱり眠い。
え、なんで眠いって〜〜? それは昨夜(以下略)
ついたよ。
彼女は寝ている。僕は白馬の王子様さ。口づけで起こしてあげよう。僕は輪ゴムで人を起こしたりしないのさ。それにしても、なんで彼女は眠いんだろうな〜〜?
それは昨夜(以下略)
作法通りに手を清めて列に並ぶ。
ええと二礼二拍手一礼、と。
パンパン(他意なし)
こういうときは住所をなんか最初に神様に申し上げるのがいいらしい。
でもなんか幸せな家庭(?)を壊されちゃ困るからやめておこう。
もう初詣も乗り気じゃなかったのは、彼女を誰にも見せたくないからに他ならない。最近は彼女の同僚まで嫉妬するが、僕と彼女が結ばれるきっかけをくれた仕事だから、それは我慢しておこう。
僕と彼女はぴったり同じだけの長さ、手を合わせていた。なにを祈ったかとかいうことは聞くことでも言うことでもないようなのでやめておく。まあ、言わずもがな、僕は二人の幸せを祈っただけだ。
「おみくじ引こうよ、おみくじ!」
今でも、彼女が僕の隣りにいることを不思議に思うことがある。彼女、こんなに笑う人だったかな。それが僕のおかげだとしたら、とんでもないことだと思うが、僕以外の男が彼女を笑わせているのだとしたら、僕は飛んでいかざるを得ないだろう。逆に、僕はこんなに嫉妬深かったかなと疑問に思うことがある。恋は盲目と言うが、僕は今、視界はくっきりとしている。そう、彼女との幸せな未来がね。
「大吉だっ! ね、かずくんは? ふふ、えー、末吉かあー。私の勝ち。」
彼女がつくるお雑煮は、この上なく美味だった。
ズボン脱いで逮捕されて終わったかと思ってたら恋が始まっていた件 二条 奏 @09kshooh23
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