第29話 ハーレムVSヤンデレ姉妹

 夢の高校生活が始まるにあたって……ここは1つ。

 俺の生きてきた経歴を、ちょっとおさらいしてみようと思う。

 まぁ、なんというか。

 よくある前回までのあらすじ……とでも思ってほしい。


 俺はここ数年の間ずっと。

 才色兼備の四姉妹にいじめられ、奴隷のような生活を送り続けていた。

 しかしある日、唐突に父親はこんな話を打ち明ける。


~~~『姉弟の中で、俺だけ血が繋がっていない』~~~


 それを知った瞬間、俺は吹っ切れた。

 唯一俺を繋ぎ止めていた家族愛を失って、家を飛び出した俺は親友である少女……根島来夢を頼った。

 一人暮らしをしている彼女は、自分の部屋に俺を居候させてくれる事を快諾。

 新たな生活が始まるかと思いきや……あのクソッタレな姉妹達が、急に手のひらを返して俺に迫ってくるようになった。

 当然俺はそれらを拒否。

 姉妹と絶縁を決意した俺はその後、バイト先の優しい先輩であるミスティ先輩や、従妹(血縁関係は無い)である真凛ちゃんと親睦を深めていった。


「ククク……めでたしめでたし、だねぇ」


「人の回想に割り込んでくるなよ、来夢」


中性的ではあるものの、確実に綺麗だと断言出来る顔立ち。

青色の長い髪をポニーテールにし、どこか男っぽい口調で話す彼女こそ……俺の親友である根島来夢だ。


「おや、今のはボクの聞き間違いかい? 親友……とは違うだろう?」


 そう言いながら、来夢は俺の背中に寄りかかり……首に両手を回してくる。


「ボクは君の恋人だ。そうじゃないのかい?」


「ああ、そうだったな」


 そう。俺は少し前、来夢からの告白を受けて付き合う事になった。

 ただ、その関係はちょっとだけ複雑で。


「あーっ!! 来夢さん!! 何を抜け駆けしていますの!?」


 バーンッと扉を開いて、部屋の中に入ってくる一人の女性。

 日本人離れした美貌と体付きを持ち、サラサラの金髪を二本結びにしている彼女の名は……ミスティ・クラウディウス。

 彼女もまた、俺の彼女の一人である。


「おやおや、ミスティさん。今夜はバイトじゃなかったのかい?」


 俺の背中に胸を押し当てながら、クスクスと笑う来夢。

 そんな彼女に対抗するかのように、ミスティさん……いや、ミスティお姉ちゃんは俺の正面に回り込んでしがみついてくる。


「バイトならとっくに終わってましてよ。それでバイト終わりに、可愛い晴人君に癒やされに来ましたの」


 むにゅん。

 俺を巨大な胸の谷間に沈めるように、顔に抱きついてくるミスティお姉ちゃん。


「ん~~~っ♡ ぱふぱふですわ~~♡」


「むぐぐむぐぐぐぐ」


「うーん、参ったねぇ。こればっかりは、ボクの胸じゃ太刀打ち不可能だよ」


「あぁ……大変なバイト漬けの日々も、晴人君さえいれば耐えられますわ」


 ちなみにミスティお姉ちゃんは毎日のように大量のバイトをこなしている。

 その理由は、彼女が家督を継ぐ為の試練……3年間で1000万、高校に通いながらバイトで貯めるという条件を満たす為だ。


「あ、そういえば! ワタクシ、バイト先からまかない料理を貰って来ましたのよ!」


 ミスティお姉ちゃんは俺をおっぱいから解放すると、手に持っていたビニール袋を差し出してくる。

 中には美味しそうな香りを漂わせる中華料理がパック詰めされていた。


「ああ、助かるよミスティさん。今夜は晴人とイチャイチャするのに夢中で、夜ご飯の用意をすっかり忘れてしまっていたんだ」


「ただ、これだけでは物足りないので……少し料理を足す必要がありますわね」


「あ、じゃあ俺が何か作りますよ」


 俺がそう答えて立ち上がったタイミングで。

 またしても、部屋の扉がバーンッと開かれる。


「中華料理と聞いて!! 晴人お兄ちゃんの料理と聞いて!!!」


 そこに立っていたのは、小学生くらいの小さな少女。

 茶髪のショートカットに、ダボダボのフードパーカーが特徴的な彼女の名は……雷堂真凛(らいどうまりん)ちゃん。

 俺の従妹にして、現在は彼女の一人でもある。


「やっぱり来たねぇ、食いしん坊さん」


「はい!! お隣の部屋からも、美味しそうな匂いを感じたので!!」


 真凛ちゃんは俺と来夢が同棲している部屋で暮らしている。

 そのため、こんな風によくハーレム勢揃いで食事を共にするわけだ。


「真凛がいるのなら、もっとまかないを貰ってくるべきだしたわね。これくらいなら、瞬きする間に食い尽くされてしまいますもの」


「えへへへっ!」


「ああん♡ もう可愛すぎですわ~♡ ほら、餃子をお食べなさい~♡」


「あむっ♡ おいひぃれふぅ……♡」


 こんなにも小さい体だが、彼女の食欲と胃の許容量はダントツでナンバーワン。

 その理由は恐らく、彼女が成長期である事と……とんでもないレベルの武術の達人(本人曰く、妙手? でまだ達人クラスではないらしい)だというのが理由だろう。

 

「仲がいいなぁ、二人とも」


 ミスティお姉ちゃんと真凛ちゃんのやり取りを微笑ましく見守りながら、俺は料理のために冷蔵庫を漁る。

 するとそんな俺の隣にいつの間にか、エプロン姿の来夢が並んでくる。


「ククッ……ボクの付け入る隙は無さそうだねぇ。ここは大人しく、君と一緒に料理担当に回ろうじゃないか」


「……ズルいヤツだな、お前も」


「おやおや、抜け目ないと言って欲しいよ」


 俺の恋人である来夢、ミスティお姉ちゃん、真凛ちゃん。

 この3人は同じ恋人を持つ者同士、良好な関係を築いている。

 しかし一皮剥けば、俺の正妻の座を巡って水面下の争いを繰り広げている……そうだ。


「なぁ、来夢」


「ん~? 食材が足りないかい?」


「いや、そうじゃなくてさ」


 俺は冷蔵庫を閉めてから、来夢の方に向き直る。

 俺の顔を上目遣いに見上げながら、キョトンとする彼女を……そっと抱きしめる。


「ふぇ……?」


「ありがとな、来夢。俺は今、本当に幸せだよ」


「晴人……」


 あの四姉妹にいじめられ、毎日が本当に地獄だった。

 でも、来夢が俺を救ってくれた。

 だからコイツには、いくら感謝してもしきれない。


「……これは、ボクを正妻に選ぶという事でいいのかな?」


「あ、いや。それとこれは……別というか」


「ふぅん? 君も案外、優柔不断なんだねぇ。ま、そんなところも好きなんだけど」


 ちゅっ。

 頬に口付けをして、来夢はクスッと笑う。


「あ~~~抜け駆けの音ォ~~~!!」


「今!! ちゅって聞こえました!! 聞こえましたよ!!」


 ドタバタドタバタ。

 居間から台所に駆け込んでくる二人。

 彼女達は抱き合う俺と来夢を見て、すっかりヤキモチを妬いたのか。


「ワタクシもちゅーしますわ~!!」


「晴人お兄ちゃん! 真凛のちゅーも受け取ってね!!」


「のわぁ~~~~っ!?」


「やれやれ、甘い雰囲気が台無しじゃないか。しかし、ボクももう一発……ちゅっ」


 3人の超絶美少女に組み敷かれ、頬にちゅっちゅされ続ける。

 ああ、神様。

 俺、こんなにも幸せな日々を過ごしていて……本当にいいんでしょうか?



【一方その頃 晴波家】


 晴波晴人と血の繋がらない4姉妹。

 彼女達が過去、晴人をいじめていたのには理由がある。


 彼女達は晴人を愛しすぎていた。

 とにかく好きで好きで堪らなかった。

 だから自分達の感情を抑える為に、彼と距離を開く為に……冷たい態度を取って嫌われようとしていたのだ。

 しかし、そんな歪んだやり方が上手くいくはずもなく。

 血の繋がりが無いと知り、恋心を正当化出来ると知ったタイミングで……晴人は家を飛び出してしまったのだ。


「晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん晴くん」


 晴人が幼なじみの来夢と過ごす時間を減らすために、家事雑用を理不尽に押し付けてくるしめていた長女……雪菜。

 白銀の髪と姉妹一番の巨乳が特徴である。


「晴人……ああ、戻ってきてよぉ。アンタがいないとアタシ……」


 晴人を奴隷のように虐げ、暴力などを振るっていた次女……雷火。

 赤髪赤目の彼女が晴人に攻撃的だったのは、いつかキレた晴人が自分に暴力を返してくる事を期待してのものであった(実はドM)。


「晴人兄はここにいるよ? うふふふ……ねぇ、晴人兄」


 腕に抱いた特製晴人人形に、不気味な笑みで話しかける三女……雨瑠。

 素顔は美少女であるものの、普段は長く前に垂れ下がった黒髪のせいで幽霊のような外見をしている彼女は……

 姉妹の中で唯一、晴人に直接の被害を与えていない。

 しかし、そのストーカーじみた仕打ちは晴人に気味悪がられている。


「もうこうなったら、みぃが直接にぃにぃにダイレクトアタックしちゃおっかな~」


 他の姉妹達とは異なり、一人だけ余裕の笑みを見せているのは末っ子四女である美雲。

 小学生らしからぬ妖艶さとマセた言動で、晴人を幾度となく苦しめてきたメスガキである彼女は……なんと姉妹の仲で唯一、晴人の許しを得ている。

 自殺を仄めかすという強引なやり方。当然、晴人は言葉では許したと言っても……心の仲では相変わらず憎んでいるし、今後関わるつもりもないのだが。


「晴くん……お姉ちゃんが甘やかしてあげるから、帰ってきてぇ」


「いつになったら、またアタシのモノになるのよぉ」


「ほーら、ご飯にしようね。晴人兄……」


「にゃーん。にぃにぃ、みぃはもう赤ちゃん産めるようになったんだよ~」


 彼女達は気付かない。理解しない。考えようともしない。

 もはや自分達の犯した罪は、どう足掻いても償えないという事を。

 そして彼女達は何も知らない。

 もうすでに晴人は、最愛の女性達と共に幸せを掴んでいるという事を。



************************************


 連載再開って響き、ワクワクしますよね。

 それが今作に当てはまるかは、分かりませぬがががががが。

 もしよければ、こんな話もあったなーと。

 もう一度お付き合い頂けますと嬉しいです。


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毎日俺を虐めていた姉と妹が、俺と血が繋がっていないと知った途端に死ぬほどヤンデレてきたんですが 愛坂タカト @aisaka3290

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