Hey! 10代!

あらし戸邊

【春学期・1時限】いざ学校

1年に1回訪れるストレスなイベント。そうクラス発表の日。


クラス発表日は春学期最初の緊張する場面だ。友達が多くない私はクラス替えで今年1年間の学生生活が決まると言っても過言ではない。心臓が嫌な音を立てながら校門をまっすぐ進むと、右手にピンクから若緑が優勢になりつつある桜が見えた。その隣にクラス表が貼られた掲示板。あ、私2Eか。夏蓮も一緒だ。


胸を撫で下ろしながら、新しい2E30番の下駄箱に向かう。下駄箱を開けると同時に後ろから聞き慣れた声に話しかけられる。


「凛、おはよう!私たちまた一緒だったよ!」

「ね、夏蓮と一緒なの良かったー。掲示板見た時テンション上がった!」


夏蓮は高校1年生から同じ陸上部で一番仲が良い。身長が170cmあり走高跳びで県一位なのにいつも練習を真面目にしていて勉強もできる。文武両道っていうのは彼女みたいなことを言うのだろう。そんな夏蓮と私は最寄駅が吉祥寺で、部活終わりに一緒に帰るようになったのをきっかけに仲良くなった。


「担任佐藤先生で良かったよね。顧問の大山だったらどうしようかと思った。」

「私も心配だった。成績までチェックされたんじゃストレスで死んじゃいそう。」


世界史の佐藤でお馴染みの佐藤先生はベテランの世界史の先生。2年生で佐藤先生に当たると受験がうまくいくって言われているくらい信頼されている。陸上の顧問の大山とは違い、いちいちうるさくない。それだけで嬉しいくらいだ。


「そういえば3年生の先輩、インターハイの予選大会近づいてきてみんなピリピリしてきたね。重要なイベント多すぎるよね」

「本当だよね、ってか夏蓮はリラックスしすぎじゃない?県チャンピオンは余裕でスカ?」

「そんなことないよ。ただ昔からずっと大会だったからまたかそのシーズンかって感じ。」

「やっぱり文武両道女は違うね。来年は夏蓮が部長確定だね。」

「なんでそうなるのよ。私は責任感のある立場は嫌だよー」


こんなことを言っているがきっと来年は夏蓮が部長だろう。嫌味のない自信や落ち着いている部分はいざという時に頼りになる。実際いつも大会で同世代を励ましている存在になっているのだ。私はこんな彼女の人柄に惹かれている。


----------

「はい、では皆さん席につきましたかね。2Eを担当します佐藤といいます。2年生は3年生に向けて進路選択を考えたり、後輩ができて立派な姿勢を見せる立場になったりなど色々大変ですが、1年間ストレスがないようにサポートしていきますので一緒に頑張りましょう。」


すごく上品な先生だ。確かにこの先生なら正しい方向に導いてくれる、そんなオーラがある。それにしても進路か、クラスのみんなはどんな進路をとるんだろう。正直クラスの人間関係もまだ落ち着いてないのに進路なんて考えている余裕ないよ。と思う。


そんなことを考えていたらあっという間に6限が終わり、部活の時間になっていた。


「凛はさ、進路選択どうするか決めてる?」

基礎練のランニング中に夏蓮が聞いてくる。


「まだ正直何も。6月までに決めろって言われてもなかなか難しいってのが本音。逆に夏蓮は決めてるの?」

「私はスポーツと科学が絡む領域を勉強したいな。だから理系の大学進学かな。」

「そうか、明確にやりたいことがあるって良いね。私もそういう指標が欲しいな。」

「まあ6月くらいまで時間あるし、ゆっくり探せばいいんじゃない?」

「確かにそうだね。もう少し考えてみる。」


2ヶ月もあると思うと考えが軽くなったようで、凛には少しモヤモヤが残っていた。ただ、目の前の陸上トラックに沿って走る行為が不明瞭な感情を忘れさせてくれた。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Hey! 10代! あらし戸邊 @sample108

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る