第15話 イタリア ナポリとその近郊

 ナポリ。治安の悪い街。イタリア人でも気をつけるといい、パッケージツアーでは極力客を街に出さないようにしている、と旅行者から聞いた。


「こわいねぇ。でも行くけどね」 私は旅行者にそう答えた。


 余談だが、インドのムンバイで列車が爆破されたテロから1週間も経っていないとき、私はインドへ行った。知人には次のようにメールした。

「インドのムンバイでテロ。200人以上死亡、600人以上負傷。こわいねぇ。じゃ、インド行ってくる!」

 以上、余談。

 確かにナポリの夜は人通りが激減し、襲われそうな雰囲気になる。警戒しなければならない。

 幸い、ナポリではトラブルにあわなかった。


 近郊のローマ遺跡・ポンペイに行った。豪雨。それでも折り畳み傘を持って観光した。宿で雨の様子を見ながらワインを飲む余裕など、私の旅行にはなかった。翌日、カプリに行き、翌々日、パエストゥムに行かねばならぬ。


 考えてみれば、スペインのバルセロナから可能な限り日数を節約してきた。当然、観光も移動も強行軍になる。バルセロナ3泊(初日、深夜着)、タラゴーナ1泊、バレンシア1泊、グラナダ2泊、アルヘシラス3泊(モロッコ、ジブラルタル観光)、セビリア2泊、コルドバ2泊、トレド1泊、アビラ1泊、セゴビア1泊、マドリッド3泊(アランフェス、エル・エスコリアル観光)、ローマ1泊(ティヴォリ観光)とかなりの駆け足。疲れていた。しかしこれもナポリ周辺をじっくり見るためであった。それでもギリギリ。神は安息日など私に与えてくれなかった。


 雨天、3時間ほどポンペイを観光。寒い。靴はびしょ濡れ。雨に気を遣いながらの観光で、精神的に疲れた。ポンペイの遺跡。残念にも、私はローマの遺跡を見過ぎていた。見飽きていたとは言えないが、見慣れていた。大きな感動はポンペイで得られなかった。


 翌日のカプリ。曇天。カプリ観光についてはすでに記述した。


 翌日、パエストゥム。ギリシャ式の神殿が残る遺跡がある。ナポリでは気にならなかったが、パエストゥム駅を出ると、猛烈な風が私を襲った。風が強い。寒い。パエストゥムで降りたのは学生風の女性2人と私だけ。

 遺跡へ向かっているらしい2人の女性について とぼとぼコートのフードをかぶり、しかも進行方向と逆を向いて、後ろ向きに進んだ。

 なぜかというと 猛烈な逆風で、前を向いて歩くと寒いからだ。顔に冷たい風がたたきつけられるのだ。


 彼女らは、フードをかぶって後ろ向きに歩く外国人観光客を不審に思ったかもしれないが、そんなこと気にしていられなかった。寒いのだ。


 駅を出てまっすぐ1キロほどすすみ、遺跡に突き当たる。右折し、左側に入り口がある。風は相変わらず。フードをかぶったまま遺跡を観光した。

 大きなギリシャ式の神殿が2つ、バジリカも神殿のように見える。ギリシャ人の街として誕生したものの街は完全にローマ式だった。ローマ式の石畳の街道、劇場、フォロ、住宅地、商店街、円柱回廊などなど。

 ここで石畳に感動。使われている石の大きいこと大きいこと。そして隙間の少ないこと少ないこと。石畳の石の大きさに感動する日本人旅行者は、どれほどいるだろうか。靴を比較対照として、大きな石を写真におさめた。


 遺跡のはずれには城壁がある。城壁の内側は草が生い茂っている。そのあたりをぶらついていると、ふと ある気配がした。振り向くと、猛然とこちらに走ってくるワン公が!


 嫌な予感。いかん! 相手をしてはいけない。無視だ。無視するんだ。犬を気にしない素振りで観光を続ける。やがて背後で物音が。嫌な予感!


 振り返れば……奴がいた。ワン公がすぐそこに。興奮しているのか、前足をあげて私にすがろうとする。

 なぜ私は犬に好かれるのか。なめられているのだろうか。しかし、一対一だ。勝てる。いざとなれば蹴飛ばすつもりで、犬を従えて観光した。犬は遊んでほしそうに私に前足を投げかける。くそ。邪魔だ。狂犬病も注意しなければならない。

 すると前方から子供と母親が歩いてくる。よし、犬を彼らになすりつけるのだ。私は犬とともに彼らの方向へ。しかし、、、犬は彼らについていかず、私から離れないのだった。畜生。


 遺跡を出て、おみやげ屋をのぞく。あいかわらず犬はついてくる。おみやげ屋を後にして、少し歩くと、犬は私への興味を失ったのか、近寄ってこなくなった。ほっとした。

 レストランでパスタとワインの昼食をとり、駅に向かう。相変わらずの猛烈な風。往路と同様、フードをかぶって歩く。列車を待って、ナポリへ戻った。

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ヨーロッパ旅行記40日間 古代ローマの遺跡 など を巡る! @sakosato

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