私はイケてる雪女

 私の名前は 雪 ゆき。

 

 色白で黒髪ツヤツヤ。

 昔っから、とにかくモテる。

 だから、いろんな男を虜にしてきた。

 

 でも、あの男だけは違った…

 

 あの男は、私に目もくれない。

 

 そんな男は、もうどうだっていい‼︎

 

 今気になってるのは、

 

 同じ中学の慶太君。

 

「慶太君」

 

「ん?」

 

 そっけない返事…

 

 他の男達なんて私を見るだけでソワソワワ

 だすのに。

 

「私達、付き合わない?」

 

「は?何で?しかもオレ…」

 

 オレ…?の続きは何よ?

 

 まさかあの幼馴染の優って子好きとか言う

 んじゃないでしょうね?

 

 私と付き合わないなんて言わせない。

 

 私は、モテる雪よ‼︎

 

「私と付き合わないなら、優って子いじめる

 よ?」

 

 そう言うと渋々慶太君が私の提案を受け入

 れた。

 

 どうせ私と付き合いだしたらこの美貌に魅

 了されるに決まってるんだから。

 

 たかが幼馴染。

 

 そんな存在すぐに忘れるに決まってる。

 

 そう思っていた。

 

 だけど、そう甘いもんじゃなかった。

 

 この雪みたいに綺麗な私の隣にいるのに、

 ちっともなびかないじゃない。

 

 こうなったら意地でも別れないんだから

 ね‼︎

 

 そしてついに卒業。

 

 このまま付き合っててもなんにも意味がな

 い。

 

 だって、慶太君の心に私がいない…

 

 わかったよ!解放するよ‼︎

 

 でも、一言いってやった。

 

 つまらない男って‼︎

 

 でも、ただの負け惜しみだけどね…

 

 それから、高校に入りやっぱりモテ放題。

 

 ある理由でいろんな男をとっかえひっかえ

 していた。

 

 彼女がいたのに、わざわざ別れて私の所に

 くる男もいた。

 

 でも、私が別れてって言ったわけじゃない

 し。

 

 私には、そこら辺は関係な〜いも〜ん。

 

 で、好き放題やってたらバチが当たった…

 

 大混雑の駅の階段。

 

 家に帰ろうと駆け上がってたら、誰かに足

 掛けされて階段の途中で転んだ。

 

 一瞬周りの空気が凍りついたように感じた。

 

 それから、

 

 誰かがクスクスって笑った。

 

 オンナの声だった。

 

 見事にパンツ丸見え…

 

 よつんばい…

 

 恥ずかしい。

 

 すぐに立ち上がる事が出来なかった…

 

 すると、最近新米であろう駅員さんが私を

 駅の救護室みたいなところに連れて行って

 くれた。

 

「大丈夫?あんまり無茶するんじゃないよ」

 って言われた。

 

 無茶って何のこと言ってるんだろう…

 

 しばらくして、だいぶ落ち着いたので救護

 室を後にした。

 

 次の日、朝電車に乗ろうとしたらなんかあ

 の新米駅員さんが電車に乗る時上手いこと

 女性と男性で固まりやすいように誘導して

 くれているように思えた。

 

 私がとっかえひっかえしてたある理由をも

 しかしたら、あの新米駅員さん気づいたん

 じゃ…

 

 そう。私が何で男をとっかえひっかえして

 たかって言うと、ただの痴漢避けのために

 そばにいてもらってただけなの。

 

 昔、痴漢に遭って怖かったから。

 

 でも、それだけの理由で男達を利用してい

 た事を今反省してる。

 

 あの事件以来、新米駅員さんが少し気にな

 る。

 

 しかも、毎朝痴漢防止の為に色々気を使っ

 て並んで待ってる時に上手く男女別れて乗

 れるように配慮してくれてるっぽい。

 

 素敵な男性…

 

 お近づきになりたいな。

 

 そうだ!

 

 いい事思いついた〜。

 

 わざと定期落として誰かに落とし物で届け

 てもーらおっと。

 

 さりげなく定期を落とす。

 

 で、トイレに行ってそのあと新米駅員さん

 に話しかけた。

 

「すいませ〜ん。定期券落としてしまって」

 

「え?今日は何も届いていませんね」

 

 えー‼︎

 

 すぐ誰かが届けてくれると思って生徒手帳

 とか色々入れっぱなし…

 

「とりあえず、お名前と電話番号記入してく

 ださい。」

 

 言われるがまま記入して帰った。

 

 どうしよう…

 

 なんて浅はかな事を…

 

 家に帰りお母さんに定期券を落としたと話

 した。

 

 早く見つかるといいわねって。

 

 夜電話が鳴った。

 

 定期券が見つかったそうな。

 

 しかも、ゴミ箱から…

 

 やっぱり、あんなに悪さしてたんだもん敵

 がまだいるのかもしれない…

 

 あんまりモテるからって調子乗りすぎたな。

 

 冬の寒い日。

 

 大雪。

 

 雪、止むかな。

 

 一応駅に着いたけど雪の為運休。

 

 学校も休校になった。

 

 しばらく、待合室でボーっとしてた。

 

 シーンとした駅…

 

 私は、雪のように美しいって言われて来た

 けど、見た目だけ…

 

 中身なんて空っぽ。

 

 誰も私の中身を見てくれない。

 

 いつか雪は溶けて無くなる。

 

 みんな、私の事なんか雪みたいにすぐ忘れ

 ちゃうのかもしれない。

 

 ふと、目をやると

 

 小さい雪だるま。

 

 誰か雪だるま作ったんだ。

 

 少し溶けてる。

 

 溶けた雪だるまってなんかかわいそうに見

 えるけど、今の私って溶けた雪だるまみた

 い…

 

 このまま、私も溶けちゃえばいいのに。

 

 一粒の涙が頬を伝った。

 

「ここにいたのかよ。どうした?」

 

 そう声をかけてきたのは、

 

 水樹…

 

 本当は、私も幼馴染がいるんだ。

 

 名前は、水樹 みずき

 

 水樹は、幼馴染だけど私にあんまり関心が

 ないみたい。

 

 私に目もくれない男…

 

 だから、慶太君と優さんが羨ましかった。

 

 じゃましたかっただけかもしれない。

 

 悔しくて。

 

 水樹は、私の手をひいて家まで送ってくれ

 た。

 

 特に何をはなすわけでもなかった。

 

 ただひたすら白い雪の中を家まで歩いた。

 

 その日以来、私は男をモテ遊ぶのをやめて

 普通に友達と楽しく過ごす事にした。

 

 はじめは、ほとんどの女子によく思われて

 なかった。

 

 だから、今までの悪事をどうにかしようと

 とにかくニコニコした。

 

 まず、にっこりおはよう!

 

 から、はじめた。

 

 意外と、挨拶を返してくれる。

 

 はじめは、え?みたいな間があったけど毎

 日続けてたら、挨拶も当たり前に向こうか

 らもしてくれるようになった。

 

 こっちがやんわり笑顔で話すと自然と向こ

 うもそれに応えてくれる。

 

 今まで、みんなの心を自分が凍らせてたん

 だって気づいた。

 

 なんてもったいない時間を…

 

 あともう、水樹にも意地を張らない。

 

 素直に接する事にした。

 

 小学校以来、水樹の部屋に入ってなかった。

 

 でも、水樹の家にはよく行っていた。

 

 水樹のお母さんピアノの先生なの。

 

 だから、幼い時からずっと水樹のお母さん

 にピアノを教わっていた。

 

 たまに、水樹に会うけどそっけない態度だ

 ったなぁ。

 

 慶太君と付き合うって言った時も、

 

「あっそ」だけだったし。

 

 何その言い方って思ったのを覚えてる。

 

 でも、水樹がそんな態度とってたのって私

 の態度のせいだったのかもしれない…

 

 ピアノのレッスンの後、水樹の部屋をノッ

 クした。

 

 水樹は、驚いてたけど部屋に入れてくれた。

 

 久しぶりに入る部屋。

 

 懐かしい。

 

 この間の雪の日迎えに来てくれたお礼を言

 った。

 

 そして、もう男をとっかえひっかえするの

 やめるって伝えた。

 

 水樹は、

 

「うん」って言った。

 

 ちょっと前まで私は、女性から嫌われてた。

 

 でも、今は違う。

 

 友達を大事にして、以前より笑うようにな

 った。

 

 毎日がとても楽しいと感じるようになった。

 

 数年後

 

 今は一部の男性から恐れられ嫌われてる。

 

 なぜなら、

 

 今は、女性警官をしている。

 

 痴漢防止に力を入れている。

 

 痴漢なんかしたら許さないんだから‼︎

 

 痴漢をした犯人には、当然笑顔は向けない

 けど、被害者には安心してもらう為になる

 べく優しい笑顔で接するように心がけてい

 る。

 

 この間、痴漢を捕まえる為に全力で走った。

 

 見事痴漢を捕まえたんだけど、その時怪我

 をしてしまった。

 

 大した事なかったけど、とりあえず一日だ

 け入院した。

 

 ちょうど病院でミニライブが行われると聞

 いて看護婦の桜子さんと言う方が私の事を

 車椅子で裏庭に連れて行ってくれた。

 

 素敵な声のボーカル。

 

 当たりを見回すとかなり号泣している女性

 がいた。

 

 ?   ?   ?

 

 ライブが終わりボーカルの人とさっきの号

 泣していた女性が話をしていた。

 

 揉めてるかと思ったら、キスしだした…

 

 なんか、その二人をみていたら水樹にあい

 たくなった。


 昔は、いろんな人にチヤホヤされていい気

 になっていた。

 

 でも、今は一人の人に愛されればそれで充

 分って思っている。

 

 勇気を出して水樹に伝えてみようかな。

 

 休みの日。

 

 思いきって水樹を誘った。

 

「久しぶり。」

 

「お、久しぶり。雪が連絡してくるなんて珍

 しいじゃん」

 

 そう言いながら水樹が頭を軽く掻いた。

 

 公園を散歩しながら歩いてたら、一人の男

 の子がこちらを見て涙ぐんだ。

 

 あ、この子きっと迷子だ。

 

 当たりを見回してみたけど保護者らしき人

 が見当たらない。

 

「おうちの人とはぐれちゃった?」

 

「うん…」

 

 そしてすぐに涙をポロリ。

 

「大丈夫だよ。一緒に探してあげるから。」

 

 優しく声をかけた。

 

 そう言ってる間にお母さんがこちらに駆け

 寄ってきた。

 

「ごめんなさい。少し目を離した隙にいなく

 なってしまって。」

 

「いいえ。お母さん見つかってよかったね」

 

 男の子に微笑みながらそう言った。

 

 すると、男の子は

 

 強くコクンとうなずいた。

 

 お母さんは、もう離れないようにしっかり

 男の子の手を繋いで帰った。

 

 二人の後ろ姿を見送っていたら水樹が

 

「手繋ごう」

 って言ってきた。

 

「え?」

 

 どういう意味で言ってるんだろう…

 

「雪、今日オレを誘うの勇気いっただろ」

 

「え、うん…」

 

「だから、オレも勇気だすよ。雪、今まで意

 地はっててごめん。ずっと好きだった」

 

 って。

 

 え?ずっと⁉︎

 

「いつもそっけなかったじゃん」

 

「あーあれは嫉妬…」

 

 そう言いながらまた水樹が頭を掻いた。

 

「ん」

 

 そう言いながら手を差し出す水樹。

 

 その手を私は、優しく握った。

 

 あの雪の日を思い出した。

 

 クスクスクスクス

 

 私が急に笑い出したから水樹は、驚いてた。

 

 でも、水樹も私につられて笑い出した。

 

「私達、何やってたんだろうね。もう手離さ

 ないからね!」

 

「オレも離さない」

 

 そう言って水樹が手をギュてした。

 

 私の名前は、雪。

 

 私の得意技は、人の心を凍らせたり溶かし

 たりできる事。

 

 なぁ〜んてね。

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幼馴染って地位になまけてたら… 猫の集会 @2066-

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