カラーズ(ep02)

猫鰯

カラーズ


『みんな、おっはよ~~!』

『あ、おはよう、黄島さん』

『白金さんは今日も美人だねぇ。どうだい? 私の嫁にならないか?』

『こら、黄島! それはもう断わられただろ』

『え~、青山ちゃんは私と白金さんの仲を裂く気なんだね?』

『なんや? また黄島っちが白川さんに失恋しとんのか?』

『緑川ちゃんひどい! 失恋してないよ! まだ』

「まだ、なのか……もう時間ないぞ」

『あら?そういえば茶谷さん今日はおそいですね』

『どうせ寝てるんでしょ?』

『いるよ~……』

『うわ、でた』

『出たは酷いな。保健室で寝てたんだよ~』

『茶谷っち、また徹夜なん?』

『保健室に泊まってたりしてな』

『んなわけあるかい~』

『相変わらずこのクラスはカオスや~』

「ぐちゃぐちゃしてきたな~」

『あ、黒部さんおはよー』

『…………オハヨウ』

『黒部っち相変わらず地味やね』

『地味な割に影響力でかいんだよなー黒部さんは』

『だよね~、白金さんの天敵』

『ちょっと、天敵とか言うのやめてよ青山さん』

『って、あれ……?』

『えっ? ……なんで?』

『なんや……?』

『『『黒部さんが2人いる!?』』』

『あれ? 双子とかだったっけ?』

「聞いたことないぞ、それ」

『え~、白金さんが2人だったら片方は私がもらえるのに』

『断られる前提はなしか、黄島!』

『もしかして、クローンとか?』

「それはヤバいやろ」

『え? ちょっと……』

『白金さんも2人に??』

「まあ、予備だしね!」

『マジ? 白金さん結婚しよー!!!』

『これは夢だな。うん、もっかい保健室で寝てくるよ』

『こら茶谷! 朝礼始まるよ』

『ほら、席ついて!』

「なんや?」

『先生来たよー』

『学校なんてなくなればいいのに~』

「はいはい」

『ほら、ちゃっちゃと席につけー』

「先生、クラスになんかおかしな人がいます~」




♢♢♢




 僕、矢島圭太はある日を境にモノの声が聞こえる様になった。それは家でも大学でも、所かまわずだ。

「なあ、圭太、美術の課題終ったか?」

「いや、全然」

 心理学専攻なのに何故絵を描かなければならないのか? 以前教授に尋ねたところ〔絵にはその人の心がでるからだよ〕と仰っていた。 


『まだ、なのか……もう時間ないぞ』


 授業時間はあと20分弱だ。それにしても僕は絵が下手だ。どの色をどう使えば良いかわからず、何となく適当に色を出して混ぜてしまうのが常。

 横からケンジが覗き込んで来る。僕のパレットのカオスっぷりをみて、わざと呆れてみせた。


『ぐちゃぐちゃしてきたな~』


 ……さすがに一回洗ってくるか。

「少し前に教授がさ、意識を変える方法って話してたじゃん?」


『聞いたことないぞ、それ』


「あ、オマエその日休んでたんだっけ?」

ゲーセンにでも行っていたんだろうな、ケンジは。

「ものの見方を変える事で、見えないものが見えて、聞こえない音が聞こえてくるんだよ」


『それはヤバいやろ』


 ネタか何かと受け取ったのだろう、ケンジは笑いながらわざとおかしな関西弁で返事してくる。……博多出身なのにな。

 洗ったパレットに改めて色を出そうとした時、絵具を買い足していたのを思い出し鞄から取り出す。

「少なくなったとはいえ、まだ残ってはいるんだけどね」

 買ってきた【黒】と【白】の絵具を机に置く。


『まあ、予備だしね!』


「そういえばさ、さっきからずっとなんだけど」


『なんや?』


「ケンジ、オマエさっきから僕の頭の中に入り込んでいるぞ。うるさくてかなわん」


『はいはい』


 またもや呆れ顔だ。欧米人を真似て両掌りょうてのひらを上に向け、オーバージェスチャーをしてみせてきた。……博多出身なのに以下略。

「その言い方、信じてないだろ……」



『先生、クラスになんかおかしな人がいます~』




                           完






以下宣伝です。面白さ1200%です!是非ご覧ください(*´▽`*)


【代表作です】

・ジュラシック・ティル ~猫耳転生と恐竜少女~(イラスト有り)

https://kakuyomu.jp/works/16816927863216898353

 恐竜を変身させるスキルを与えられた、アラサー呑兵衛猫耳美少女の八白亜紀やしろあき。戦闘力ミジンコだけど、度胸とブラフは超一流!

 闘う相手は、異世界から転移してくる魔王軍。人類が産まれる前に行って地球を占領しようというセコイ作戦だ。

 ジュラシックカーストNo.1のティラノや、もふもふ可愛いサーベルタイガーの子。様々な能力を持った恐竜娘達と、人類存亡をかけた戦いに挑むバトルコメディ。



【完結しました】 圧倒的な読後感を保証します!

・still Alive~無双できない世界なので、知識とハッタリで乗り切ります!~(イラスト有り)

https://kakuyomu.jp/works/16816927859914882626

 昔からこの世界は転生者だらけ。二世や三世も生活している。現代社会の文化が流れ込み、独自に技術発展していく国と街。転生者は皆、誰もが魔法を使え突出した能力なんて無い。むしろ持ち込まれた重火器の方が断然強いという不文律。そして、回復・蘇生魔法なんて存在しない……。

 そんなアンバランスな世界に渦巻く陰謀。立ち向かう主人公達。持てる武器は“そこそこの知識とハッタリ”だけだった。

 生死ギリギリの物語をコメディタッチで展開する非無双系ダークファンタジー。



【軽いテイストの異世界ミステリーです】

・異世界探偵 パティ・ウインク ~その悪意、すり潰して差し上げますわ~

https://kakuyomu.jp/works/16817330651947540755

 信頼と実績のウインク探偵事務所へようこそ。凶悪事件から魔法犯罪まで、どんな難事件もたちどころに解決してみせます。

 僕は、ウインク探偵事務所所長パトリシア・ウインク先生の助手にして唯一の弟子、エリオット・クレーシ-です。

 小さな事務所なのにも関わらず、今日も飛び込んでくる難事件の依頼。さてさて、優秀な僕がサクッと解決いたしますか!


※上記 still Aliveのヒロインを主人公にしたスピンオフ的物語(もちろん単体で読めます)

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