刺される!?

荒川馳夫

誰か助けて!このままでは刺される!

 大きな悲鳴が周囲の人々の耳に入り込んできた。現在、一人の男は危機的状況に瀕していた。

どうやら、鋭い物で今にも刺されそうだった。誰だって体を刺されれば、ちょっとのケガでは済まないだろう。周りに助けを求めるのも当然である。

男は体を動かし必死に抵抗していた。誰か手を貸してくれ、止めてくれと願っていたに違いない。

しかし、誰も男を助けようとはしなかった。警察を呼ぼうとする人もいなかった。

男はさらに大きな悲鳴をあげている。


 これだけ、男が危機を訴えているのに誰も助けようとしない理由は何か。

単純である。男以外にはそれが危機的状況に映らなかったからだ。


「ハハハ、これは困ったな。刺されるのがよほど嫌なんだね……」


白衣の男は笑いながら、手に持つ針を男の手に刺そうとするが実行できそうになかった。男を抱きかかえる女性の方は困り顔だ。


「ほら、ね。ママがここにいるから大丈夫だよ」


女性の声は男に届きそうになかった。男の泣き声の方がずっと大きく病院内に響いていたのだから。


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刺される!? 荒川馳夫 @arakawa_haseo111

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