存在しない力

凡人の力

　僕はいたって凡人だ。何かを捨てて、何かを失って大人になった人間だ。替えの効く社会の歯車の一端を担っている。七十憶いる人間の一人なのだから、当たり前である。そして僕が消えても回っていく日常に嫌気が差している。

　僕が何かをしても世界は変わらない。というより、僕には世界を変える力を持っていない。そんな特別な力があれば僕は手を伸ばせる。

　世界を救いなさい、と教えられてきた僕はその力はない。だから、僕はまだ何も捨ててない何も失ってない純粋無垢なものに特別な力があると教える。

　でも、そんなものはきっと存在しないのは頭の片隅で分かっている。だからこそ、僕は伝えていく、この負の連鎖を。