第3話 怪しい男

 耳鳴りや法螺貝の音も

慣れれば大した事は無くて


最初は怖かった得体の知れないヤツも

(未だ姿は見ていない)


私の中では

『蚊かハエ』程度の存在に迄ランクが落ちてしまい


【ポルターガイスト】に例えても


あれ程酷く無いからでしょうか


私はすっかり落ち着きを取り戻していました。


只々法螺貝? を鳴らしながら、部屋の中等を

グルグルと廻るだけですからね


そうです


ほぼ無害なのをいい事に


ナメくさっております。




後の処理の方法にしても

もう、如何でも好かったのですが


なんやかんや言っても

奇怪なオバケには変わりがない訳ですから


一応念のために


あるいは

仲間内への手土産の為に


面白い(有難い)話を聞ければと考え


お寺で相談することを決意しました。




つまらなかったら・・・


その時は・・盛ります。



ーーーーーーーーーーーーーーー


休日になり、マークしたお寺へと向かう。


調べてみたら、家の近くでも沢山のお寺があることに気付き

どうしようかなと迷いそうになりましたが


趣旨を考えてみると

やはりここは効果優先で



唯一

【徐霊いたします】と謳(うた)っていた

今向かっている場所へと行くことに決めました。



どんな住職なのかな?とか


どんな徐霊術式を行うのかな?

などと


想像力を目まぐるしく働かせては

ニヤニヤとして


遂には

儀式?に支障が出てはいけないと、勝手に早く家を出てしまう位に端折っていました。






そんな子供染みた?私に


「冷静になれ」なんて

注意すべきなのでしょうけれど


ですが



単調な行いばかりの


つまらない日々を

続けている現代社会で


この程度のアクティビティ位


有ってもいいのではないかと

別の私が助言する所為もありまして


それに同意する形にはなりますが


為すがまま


思うがままに楽しむことにしました。

(趣味等打ち込むモノが無い私の見解です)





場所は・・・・・


ナビ先生にお任せしております。





目的地は、家から凡そ1時間位離れた


市街地外れの小さな森の中に在りまして


外見だけ観ると

【寺】だとは思えない


至って普通の【民家】のみが

その場所に佇む形で存在しておりまして



敷地らしき場所を見渡してみても


鐘はおろか

卒塔婆や墓石・・などの様な

それらしい物さえも無い


私が膨らましていた想像の

1欠片もない


余りにも不自然な


光景が広がっておりました。




「本当に効果があるのだろうか?」と


今更になって我が身の判断を懐疑し



本当に宗教法人なのか?までの

深堀りさえも余儀なくされて


そうなってきますと


ひたすら不安しか生まれて来なくなるものでして


今まで高く維持してきた

テンションも駄々下がりに


その為でしょうか

気疲れで、体さえも重くなってまいりました。



此処がお寺ではなくて


祈祷師の家って括りなら


有りかもしれませんが・・・。









とは言いつつも

ここ迄来た以上は、手ぶらも無精ですし


やるやらないは別にして


話だけでも聞いて


会社仲間のネタだけにはしようかと考えまして




そう



切り替えて


いや


やっつけ仕事みたいな感覚でしょうか


妥協して、玄関に向かってみることにしました。





玄関に近付くと

【御用の方は呼鈴を鳴らして下さい】

と書かれた

小さな札が目に入り


その案内に応じ、すぐ下にある

【ベル】の絵が刻まれているボタンを


ゆっくり2度ほど押してみました。


すると



数分経った位でしょうか

玄関の向こう側から

「どちらさん?」と

少々落ち着きが無いニュアンスでの応答があり


私は

「徐霊の件で伺いました」と返しました。


すると


直ぐ様玄関のドアが無愛想に開き


開いたドアの先には

ジャージ姿の

年の頃は60代でしょうか

頭髪が寂しい男性が

これ又落ち着き無く立っていまして


開口一番


「お布施として20000円頂きますけど」などと


お金を要求してきました。




内容も聞かずに、金の無心なんて

人としてどうなのかと

軽蔑しまして



見た目からしても

ジャージ姿ですし


霊と対峙出来そうなオーラも

微塵も感じない顔付きでしたから


『これは効果は無い』と思い始めてしまって


それを抑えきれずに


結果


体よく断ろうと



見限る方向に変えました。



その為の断る文句を

考え始めた矢先でしょうか


ふいに


この男が

「お前さん、なんだい? その音は?」

と質問をしてきたものですから


私はビックリしてしまいまして



反射的に

「どんな音が聞こえますか?」

と尋ね返したのですけれど



男は

「キーンと・・・たまに法螺貝みたいな音だな」

と耳を疑う言葉を発しました。



先程の疑心暗鬼な気持ちが

ものの見事に吹き飛んでしまう程の破壊力で




キーンはまぐれとしても


法螺貝とのセットになると奇跡に近くて


これは・・・


まさかの【ガチ】な人なのでは!と




これは徐霊を頼むしかない


いや、頼まなければと



勢いで除霊を頼むことにしました。













何をしたか? なのですが



結局、線香の灰と

企業秘密?って言ってましたけど


それを混ぜたヤツを頭から数回ぶっかけられて・・・


それで終わり


それだけ。



なんとも拍子抜けする内容で


それでも効果はテキメンだと言うものだから


言い返すことが出来ず


あっさりと儀式?が終わってしまいました。




これで2万円は高いなぁ・・・・。






お金を払うと

闇雲に、境内?から追い出されてしまい


外で一人になった私の頭の中に


【詐欺】という言葉が

駆け巡りました・・・。




やっ、やられたか・・・・



しかし、音は当てたぞ・・・



訳がわからん・・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーー


なんやかんやで家に直帰して

(住職に寄り道するなと言われた)


ネタにもしにくい内容に溜息を付きながら


2万円をドブに捨てた自身の情けなさを叱責し




散々罵ったら疲れてしまい


何もする気が起きないのもありましたから


それで



ベットに勢いよく飛び込んで


寝たくなりました。



仕事より疲れた・・・。



自然とそのまま深い眠りに就いて・・・。


ー------------------------




 どの位寝ていたかは分かりませんが



唐突に誰かの呼ぶ声が聞こえて



それが相当シツコかったので



目が覚めてしまいました。




私の名前では無い



誰かの名前をしきりに呼んでいましたが・・・




誰なんだ?


【刹那由比綱の霧之江】(せつなゆびつなのきりのえ)



って?















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