第2話 耳鳴り (経緯※足早に説明)

安心が担保された道は、他よりも信号の数が多くて

特に市内を走行するとなると、発車と停車を頻繁に繰り返してしまいますから

結果イライラが募る時もあります。


がしかし信号機は、私達の目視確認のサポートをしてくれる【重要な公共物】ですから

当然御座形(おざなり)にはできません。


そもそも【道路交通法】も存在しますから

大人の対応を取るのが一般常識ですよね。


あっ、脱線はこの位にしておいて


本題に入ります。



午前0時を回った深夜の

とある市街地と山道の間にある交差点で、私の運転する営業車が赤信号にて停車した際


突如として


ハウリングの様な耳鳴りが襲ってきました。


その音はかなり強烈で

遂には運転にも支障が出てしまう程の威力となり


頭の痛みも併発して


このまま走行するには危険極まりないとの判断に行き着きました。



安全の為、一先ず車両を路肩へ止め

酷い音に苛まれながらも、今身に降りかかっている事象の把握に努めて

延いては音の出元を特定せねばと決心し

解決すべく、直ぐ様行動を開始しました。


最初に頭に浮かんだ原因は

【車両から発せられている】可能性を探ることで

特にエンジン部は、絶え間なく動くという観点から、一番異音が出易い箇所でもあり


それを念頭に入れ、エンジン部を集中的に調べれば、存外早く特定できるのではないかと思い

早速車両の点検を開始しました。



がしかし、エンジン以外の場所を含めても、問題の露見には至らず


ただ無駄に時間を費やしただけで終わってしまいました。


ならばと今度は車両以外に焦点を当てて

取り留めは無いのですが、視界に映っている範囲に限り、不具合が無いかどうかを念入りに調べたのですが


これも又


深夜という暗い条件も相俟(あいま)ってでしょうか

核心に触れる様な発見には至りませんでした。(実際はあります)





 結局何も掴めなくて

「どうしたものか」と立ち尽くしておりました所


市街地が近いからでしょうか

この時間でも通行人の方が結構おられて


その方々が

此方を見るなり不思議そうな顔を浮かべながら次々と通り過ぎて行かれますから


その視線を受け入れてしまいますと

少々自身の行動が恥ずかしくなり

強いては

真剣に考えるのが馬鹿らしくなってしまいました。


 なので御座なりに


いや、開き直って・・・


いや投げ槍になって考えて


先で得たのは

「原因が分からない以上手の打ちようが無いのだから、出来る事だけを模索する方が無難」との結論で


 そこから導き出されたのは

「仕事を優先させるのが常套」でした。



音が我慢できるのであれば、それはそれで


取り敢えず仕事に復帰することに集中しました。






とは言いつつも


「何故私だけ辛いのか?」

なんて呟いてしまう位

気になって仕方がない私も居まして


それだけ【耳鳴り】が大変なのもありますが


さして辛そうな素振りも見せず、終始平然とされている通行人の方々を拝見していますと

私としては、とても不自然に思えてしまい


多分そこが引っ掛かって仕方が無いのだと思うのですが


やはりどう見繕っても

被害を被っているのは【私だけ】だと解釈するのが妥当で



冷静ではいられない状況だったとしても

落ち着いて考えてしまえば、みなさんの反応や、車両の異常が特定できないのも

十分に合点がゆきますし


【体調不良】に振り回されていただけならば


愚かな自分も


今後の対処法も


算段が取れるものでございます。



判ってしまうと(実際はわかっていない) 

案外気持ちが楽になるものでして


頭の中でワンワンと響くそれは、かなり鬱陶しいのですが

実際の耳鳴りは然程悩む病気でもありませんし、それに放っておけば自然と治まりそうな気もしましたので


まぁ大丈夫かなと結論を出し


それよりも私は、纏めた考察の通りに

下手な勘繰りでロスをした時間を

急いで取り戻さなければならないという

責任がありました。

(間に合わなかったら滅茶苦茶怒られますからね)


 本当にこの場でウダウダとしている暇など無く

直ぐにでもハンドルを握り、移動を開始しなければ

間に合いませんから


慎重に体の様子を診ながら


ことわざで

【急いては事を仕損じる】なんて教訓もありますけれど


まぁ、そこは無理しない程度に




車両を動かしました。








すると、どれ程でしょうか?






移動を開始して

例の信号が見えなくなった辺りで


あれ程鬱陶しかった

ハウリングの音が



突如として止んでしまったんですよね。



あれ?



私は安堵よりも先に驚いてしまって

一瞬「何故?」と勘繰りを入れてしまいましたが



目論み通りに治まってくれたなと、自身の予測通りの事態に納得をしつつも

改めて【軽い体調不良】だったのだなと痛感し、自身に呆れてしまいました。


まぁあの騒ぎですからねぇ・・・・・。



ですから、以降の推測は無意味とし

今迄の辱めは不問としました。



まぁ、その時だけですけどね。 




ーーーーーーーーーーーーーー


【耳鳴り事件】以降の数週間は、幸か不幸かその場所を通る機会が無くて


症状も全く出なかったものですから


私はあの場所での出来事を

一切合切忘れてしまいました。



なので

今後二度と【あの場所】を通らなければ


もしかしたら、何事も無い日々を過ごせたのかもしれませんが


何せ私は忘れてしまってたので


再度業務の便宜上

あの場所を通る融通になりましでも


意識することなどは無くて、恰(あたか)も

何事も無かったかのように


平然と通過してしまうのでした。




すると・・・


いえ、案の定


同じ場所で、又同じ様に耳鳴りが発生してしまいまして


しかも止み方も同じなものですから


「あっ」とばかりに


フラッシュバックが発き


此処での不毛な時間を、奇しくも思い出してしまうのでした。






場所限定の症状・・・。






 そらからというもの

例の場所を通る時だけ【耳鳴り】の症状に悩まされ

その度に耐え忍ぶというスパイラルに突入してしまい


そうですねぇ・・・・


このような不可解な現象が続きますと


流石に頭が悪い私でもピンとくるものでして・・・



本心は認めたくは無いです・・・が



まぁ



【心霊現象】なのだなと


その方面を疑わざるを得なくなってまいりました。






 とは言いましても

幽霊や悪魔の類は、想像の産物だと位置付けている私にとって


今回の現象は、俄(にわ)かには信じ難く

だから心の片隅には、放射能漏れだとか不正電波の発信だとか

そんな現実的な理由にしておきたくもあり


その所為かは分り兼ねますが

お祓いだとか、お守りを買うだとか

そんな前向きな気持ちにはならず


ただ安直に、配送ルートから【あの場所】を外してしまえばいいだけだと

ズルい方法を選択しました。


結果ルートを変更するだけの処置で終わらせて、この件から逃げ出した私は


「これで一件落着」として


今度こそ、考えるのを止めました。



いや、止めたかったでしょうか・・・。





しかしながらその行為も

【時すでに遅し】と言わざるを得ませんで



今度は


新しい段階へと



また新たな【異常】へと


移行する結果となりました。



俗に言う

【取り憑かれた】でしょうか。



ー----------------------------------



 耳鳴り事件が続き切ったある日中の自宅で(一丁前にタワマンです)

夜の業務に向けて就寝していた最中


寝静まった私の寝室から


何やら変な音が響いてきまして


しかもその音は【法螺貝】に近く


そいつが不思議なことに

部屋の中を「グルグル」と

音を立てながら回っているのです。


それにその【法螺貝】は

家の中だけに留まらず


仕事中だろうがドコだろうが

行く先々付いて回り


気が付けば、24時間付き纏っておりました。


流石にこの展開には、私も腹を括らざるを得なくなり


無縁だと思っていた【怨霊】の存在も認めて


「これは大変なことになった」と


今更ながら震える羽目になり


「仕事が終わったら、直ぐにお寺へ行こう」と

決心を固めた次第であります。









































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