第4話 客画面、接続前。



「でも、このボタンなんで急に現れたの?

私が応答しないから、罪滅ぼしで遊び道具でも出してくれたの?」


「そんな他人の気分に合わせて環境優遇するほど、優しい魔女じゃないよ。」


「じゃあ何?」



それ以外で、こんな必要のないボタンがここに存在する理由がわからない。



「レベル100になったら外に出られるってだけじゃモチベーション上がらないだろ?

そこに至るまで、レベルが一つずつ上がるたびに色々できる事が増えていくようにしたんだよ。ボタンを押して顔文字が出てくるようになってるのは、その一つ。」



一瞬、そんなところに遊び心出されても『嬉しい!ありがとう!』となるかいボケェ!

と思ったが、しかしそんなことよりもレベルについてのワードが気になった。

だって…『レベルが一つずつ上がるたび』と言うことは…



「そう言うこと、レベルって書かれてるとことごらん。」


「あ、2になってる!」


「あんたの入ったアプリを誰かがダウンロードしたみたいだね、よかったねぇ…」



おばばはしみじみとそういうが、言ってる意味はさっぱりわからない。


でも、要はこれで私に客がついてと言うことで、

つまり、ようやく外に出るためのカウントダウンが始まったと言うことだ。



「でもおばば、その客って誰なの?

私まだ顔も名前も知らないんだけど。」


「あぁ、早速ネットニュースにはなってたらしいけど…

あんたのレベルじゃ、まだスマホの機能をいじったりネット検索ってのは無理かね。

まぁ、さっきもらった号外記事でも見せてあげるよ」



そういうと、おばばはどこからともなく新聞を持ってきて、

私の方にある記事を見せてくれる。



「勇者…それもボス戦の時のコスプレをしてる子がトラックを止めたんだってさ

ほらこれ。」


「なになに?コスプレイベントにトラック突っ込む…救ったのは…勇者?

トラックって…かなりおっきい鉄の箱をかなりのスピードで走ってる…あれ?」



「多分それのことだね、普通はこんなの正面にぶつかったらはずなのに…いやー、衣装の魔法は本物だね!」



なるほど、とにかくこのニュースになってる人が来てた衣装が、

おばばの店の商品だってことね。


だから私のレベルが上がったと。

おばば、自分の魔法がうまくいってめちゃくちゃ嬉しそう。


これでうちの店も繁盛するぞ〜ってやる気満々だ。



「ところで、その人が客だとしてさ…私はどうすればいいの?

どうやってその客とコンタクト取って、この前言ってた3つの条件クリアするの?」


「そこは心配に及ばんよ。

今後はこの画面に映るのは私の顔じゃなくて、客のスマホカメラに映る映像が表示されるからね。」



なるほど、じゃあ画面が出てくるの待ってればいいんだ。

しかもそうなると、もう店行かないとおばばと顔合わせることはなくなるわけか…

なんかそう思うと…



「ちょっと寂しいだろ」


「せいせいするわ〜」



寂しいはずがない。


おばばは少し寂しかったのか、いじけたように



「そーかい!じゃああとは頑張っとくれ、検討を祈るよ」




そう言われると、画面はぷつりと切れる。


この翌日、しんじとの対面をすることになった。

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あんたがコスプレしただけでキャラのチート能力を使えるのは、私のおかげ! つきがし ちの @snowoman

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