第3話 感情とリンクするボタン


それからしばらくの間。


流石に許可なく閉じ込めたことを悪いとでも思ったのか

は定期的に話しかけてくれてた。



しばらくは悪態をつきながらも、暇なので話し相手くらいの気持ちで雑談と

客の相手をする時が来た場合の説明を何回か受けた。


ついでに、ここがすまほ、と言う機械の中であると言うことや、

人間についてのこと、ネット社会でのことを色々聞かされた。


最初はそれのおかげでまあまあ暇つぶしもできてたし、

客と対面する時のための知識もだいぶ蓄えられたんだけれども…


肝心の客には、どんなに待っても繋がらない。


長い時間がたったある日、私はおばばの顔も見たくなくなって、

応答するのをやめた。


そんなことが続いたある日。



突然、ドーンという音が空間に響いた。



「うわっ!なになに?」



こんな大きな音、ここに閉じ込められてから聞いた事がなかったので、

必要以上に驚いて飛び上がる。



あたりをキョロキョロして見回したところで、

この何もない空間で何か変わったところがあるはずがない。


あ、いや。


1つ見つけた。


いつもおばばの映像が表示されるあたりの場所に、

この前までなかったはずの丸いボタンが現れていた。


なんだろうと思って、ポチポチとそのボタンを押してみたけど、

特になんの変化もない。


なんとか変化が出ないかと、ポチポチポチポチとボタンを連打する。

すると、何度目かのボタンを押したタイミングで



「こらこら、あんまり遊ぶんじゃないよ。」



いつも通り映像が現れ、画面におばばが登場した。



「あ、おばば。」



私は特に驚くこともなく、普通に声をかける。



「こっちから死角で見えないけど、多分そこにボタンがあるんだろ?」


「あるよー、何これ」


「まぁ、百聞は一見にしかず。一回ボタン押してみ。」



私は『何にも変化なかったけど…』とか悪態をつきながらボタンを押す。


すると


『(・・?)』


とおばばの映る画面にこの顔文字が表示される。



「なんか出てきた!画面に!」



いつもとは違う画面の変化に嬉しくてテンションが上がる。



「そのボタン押すと、今感じてる感情が顔文字に変換されて、画面に表示されるんだよ。」


「へー!おもしろーい!」



私は何回かそのボタンをまた何回かぽちぽちと押す。


するとボタンを押すたびに顔文字が『(*´∀`)♪』『(*´Д`*)』『(((o(*゚▽゚*)o)))』『*・'(*゚▽゚*)'・。*』『☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆』


みたいな感じで切り替わって表示される。


これは楽しい。


楽しくなってきた私は何度もポチポチとボタンを連打すると、

『わかった、いい加減におし!』と怒られてしまった。


とはいえ、なんで急にこんな事ができるようになったのだろうか。

ボタンが何かという疑問は解消されたけど、

結局これが何か…というのはわからないままだ。

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