第2話 商売人魂を持つ魔女



「コスプレはわかるかい?」



人間社会のことはさっぱりなので、私は首を横に振る。

そんな私におばばは『架空の登場人物の格好をそっくり真似ること』と話してくれた。

つまり人間がそれをする時に必要な衣装を売っている店を営業している、ということらしい。


また茶々を入れるとうるさそうなので『それがなんなの?』と思いながらも、黙って話のまつ。



「コスプレ衣装売ってるのはいいんだけど、売れ行きが悪くてね…考えたんだ。

『もし、この店の衣装を着たら、キャラと同じ能力が使える衣装』を作ったら売れるんじゃないかって。

そこで衣装に魔法かけるために、あんたの力を借りたいのさ。」



なるほど、それで合点がいった。

そんな衣装…普通に作っただけでは現実不可能だ。


そんなものを使うのであれば、魔法を使わなければ無理だ。

だから妖精を呼び出した…ということなのだろう。


でも、おかしな話だ。



「あんた魔女なんでしょ?自分でやんなよ」



そう、私…妖精の力なんか借りなくたって、

衣装に魔法をかけるくらいのこと、魔女だと名乗るなら自分の魔力でできるはずだ。



「私だけだと魔力が足りなくてね」



なんだい、対して魔力ないんかい。


じゃあやるなよ



「人様に迷惑かけんな」



私は腹の中に湧き出たいくつものワードから一つ選んで、

おばばにキツく言ってやった。


しかしそれでも、おばばは飄々と笑顔で答える。



「まぁ怒りなさんな、一生出さないなんて言ってないんだから。

これをやった上で客を満足させれば出られるよ。」


「客を満足させるって…どうやって?具体的にはいつまで!?

いつまで続ければいいの!?」


「上を見てごらん、『レベル』って書かれた文字があるだろ?」




私はそう言われて顔を上に向けて、キョロキョロと見回すと

画面の上の方に『レベル0』と書かれた文字を見つける。


それを見て私はコクリとうなづくと、



「それが100になったら、客が満足した…ということにしようかね。」



とおばばはいった。

私はまさかの数字に愕然とする。


100…100って何…

0から100って…簡単に挙げられる数字じゃない。





「そうだねぇ…レベルを上げるポイントは3つ

指定された客に『ある程度衣装買わせて』『魔法使わせて』『願いを叶える』

この3つをと、少しずつレベル上がってくよ」


「ちょ…条件はともかく、何回か繰り返すって何!?

何回もその3つをやれって!?

何人かの客じゃなくて1人に対してなんだよね!?

1人に対して、いくつ願い叶えろっていうの!?」


「そういうこった。」


「ふざけないでよ!

まだでっかい願い事を時間かけて1つ叶える方がマシだよ!!」



これはめんどくさいとか、そいう話ではない。



人間というのは、この婆さんみたいに欲深い。


制限なく願いが叶えられるとなったら、人間はどうなる?

やらなくてもわかる、みんな調子に乗って力使いまくって、

『自分なら出来ないことはない』と傲慢になって…

それこそ悪魔というにふさわしい人格になってしまう!


これは人間のためにもならない



「せめてもう少し条件クリアのレベル下げてよ!ランプの精だって3つなんだよ!

ダメなんだって、そんなにいっぱいの願い叶えたら!

人間の人格破壊させたいんかあんたは!」



人の為を思い、私はおばばに抗議をする。

しかし



「あたしゃ衣装が売れればなんでもいい」



この人が取り合うわけがない。



このクソ野郎!



そうだった、この人店やってるんだっけ…

商売人は金さえ入れば後のことはどうなろうと知ったこっちゃないのか。


私は肩を落とすと、追い討ちをかけるように



「どっちにしろ、そこに閉じ込められた時点で、あんたに拒否権はないよ。

まぁ頑張っとくれ。」



と言うと、一言応援の言葉をかけて画面をパチンと消してしまう。



「あ、ちょっと!待ちなさいよ!」



私の言い分を全部聞かないで、いいたいこと言って逃げるなんてひどい!

と思いつつ、ここで叫んだって、画面が消えた以上意味がない。


私はもう、この状況を飲み込むほかなかった。


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