拘束プレイとダンジョン二階層
目が覚めた。
薄暗い廃墟に、私たちはいた。
弱い月明かりが私たちを照らしていた。
怖かった。
「今回も痛い目を見るのはプリンっぽいね」
「うぅ、呪ってやる。運営さん」
なんで、こんなダンジョンっぽくない所を舞台にするの?おかしいよ。おかしい。もっと普通でいいよ。洞窟とかさ。そんなんでいいのに。
ひどい。
「早く攻略して次行こ、ね?」
「んー。この階層が1番効率いい気がするんだよねー」
「そんなことないって。ほんと。次頑張ろ?」
「……ま、いいや。ポイントはどうでも。プリンにずっと怖い思いさせる訳にも行かないしー」
「ありがと。ほんと助かる」
アカはぽつりと。ま、どうせ時間かかると思うけど。とこぼした。
そんなことないよ。怖いこと言わないでよ。確かに。イベント期間7日で5階層攻略なら1階層一日以上はかかる計算だけどさ。
さっきは3時間で終わったし?だいじょぶなはずだよ。
そんなことを思っていた。
私の考えは甘かった。
「くそぉ。運営めぇ。鬼ごっこ嫌いの私に鬼ごっこさせるとか。鬼畜」
「あははー。いやー。これこそ、正真正銘の鬼ごっこだねー」
私たちは今、鬼に追いかけられていた。
探索を開始した私たちは、道のど真ん中にぽつんと置いてある鉄の宝箱を発見した。
今となってはどう考えても罠だったと思う。でも、私は気にせず開けた。すると、無数の鬼が出現して、私たちを追いかけに来た。
何よりも大変なのは、この鬼、HPが存在しない。つまり倒せない。
捕まるとどうなるかはわかんないけど。アカいわく、死ぬんじゃね?らしい。
重いよ。重い。もっと鬼ごっこって気楽な感じだよね?あぁ、でも、リアル鬼ごっこってあったなぁ。怖かったなぁ、あれ。
ちなみに、出てきたのは鬼ごっこのプロという称号だった。まさかの称号である。効果はAGIプラス5。普通に嬉しい。
しっかし。
「これっ。どこまで逃げればクリアかな!?」
「んー。わかんない。ヒントないもん」
「そ、そんなぁ」
「いや、プリンは大してきつくないでしょ。飛んでる?んだから」
私はクリスタルを経由して宙を移動していた。そのため体力的には問題無い。
でも。
「こわいの」
「そう?楽しいと思うけど」
あの凶悪な鬼に追いかけられるののどこが楽しいのか。きっと私には一生わかるまい。
「そこ、右に曲がろ」
「わかった」
私たちは鬼を巻くためにどんどんと入り組んだ道へと入っていった。
「これ、挟み撃ちとかされないの?」
「んー。多分大丈夫。鬼たちは別れて行動する気配ないし」
「そういえば、そうだね」
バラバラに移動した方が数の利を生かせるのに、鬼さんはずっと固まって追ってきてる。
「それに、たぶんこれ、追っ手の視線から一定時間逃れればクリアだから。入り組んでる方が有利なの」
「へー。そうなんだ」
「ま、あくまで予想だけど」
アカの予想はどうやら当たっていたようで、鬼さん達の視線から一定時間逃れると、確かに、鬼さんたちは消えた。
「あー。こわかったぁー」
「それにしても、難易度上がったねぇ」
「そうだね」
「まぁ、ボス倒して手に入る宝箱が、そう簡単に手に入るとも思ってなかったけど」
「その辺に落ちてた木の宝箱とは違うんだねー」
「あれに関しては、単に私たちの運が良かったってのも、あると思うけどね」
「あー。そっかぁ」
木の宝箱でも色々ギミックがあるのかな?
「にしても、プリン。怖い怖いって言いながら、結構余裕あるよね」
「……まぁ、今の私は、結構強いし。さっきの鬼さんみたいじゃなければ倒せるし。意外とだいじょぶかも?って」
「なるほどねー。じゃ、別に一緒にお化け屋敷行けるわけじゃないのかぁ。克服したのかなーって思ったけど」
「怖いエリアならまだしも、お化け屋敷は嫌だよ」
だってもはや別物じゃん。
「余裕あるうちにさっさと宝箱回収しちゃおー」
「おー」
そして私たちは歩き出した。
しばらく歩いていると、それなりにモンスターにも遭遇する。どれも雑魚ではあるんだけど。私にとっては雑魚でも出来れば戦いたくない。私の攻撃は基本回数に限界があるからね。
「モンスターからアイテムはドロップしないんだねー」
「そうだねー。なんか原因あるのかもね」
普通なら、モンスターを倒すとアイテムやらお金やらをドロップするけど、こいつらしない。けちだね。
「原因ねー。宝箱に関係するものかな」
「さあ?」
まぁ、考えてもわかんないし。考えるだけ無駄かな。
それにしても。
「この廃墟ってさー。なんか変だよね」
「なにが?」
「んー。なんかさぁ、変」
こう、言葉には表せないんだけど、さっきからこの壊れた街を見て、ずっと変な感じがする。
なんだろ?
アカは辺りをぐるりと見渡して、少し俯いてから何かを考え出した。
私はアカの答えが出るまで待っていた。私も違和感の招待をさぐっていた。
「…………なんか、最近廃墟になったっぽい、かも」
「あっ。それだ!」
そう、それだ。おかしかったんだよ。
なんかね。所々ぶっ壊れてるのに、全然古くない?ってのかな。もっとさ、廃墟ってコケとかツタとか色々あって、道にも草とか生えてて、ボロボロな感じを想像してたの。
でも、この街は壊れてるけど、ちゃんと整備されてました!って感じなの。
だから、私のイメージと違って変だった。
「まぁ、だからなにーって感じだよね」
「そんなことないよ!まじで大発見かも!」
「えー。そう?」
大袈裟だよ。
「いや、だってさ。最近壊れたんだったら、その原因がまだ近くにいるかもってことでしょ?」
「あぁ、確かに。でも、それがわかっても。意味無くない?」
「んー。なんかヒントが隠されてるかも。探してみよーよ」
「べつにいーけど。見つかるかな」
私たちはなにか、この惨状を作り出したかもしれないなにかを探すため、今までは特段気にせず、入らなかった住居内へと入っていった。
「こーゆーのはね。だいたい誰かが日記残してるんだよ」
「そうかなー?」
「きっとそうだよ」
んー。まぁ、アカがそう言うならそうなのかな?日記ね。ありそうな所はどこだろう。
……わかんね。日記を誰が書くかとか、わかんないよ。
「しらみ潰しに探すの?」
「……さすがにそれじゃ見つかんないでしょ。めちゃめちゃ家あるんだから」
「だよねー」
私たちが家に入らなかったのは多かったから。いくら鉄の宝箱が多くても、家に隠すかなーって。家に隠されたら探すの大変すぎるもん。だから、もっとわかりやすい所から探そって感じのスタンスでやってた。
「でもさ、日記描きそうな人なんてわかんないでしょ」
「……そうだね……はぁー。諦めるかぁ。日記探し、いいと思ったんだけど」
「まぁ、見つかったらラッキーくらいの認識でいいじゃん」
「そうだね。そうしよっか」
そう言って、私たちはまた、歩き出した。
拘束プレイは別に、好きではないんです。ほんとうですよ? @nirup
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。拘束プレイは別に、好きではないんです。ほんとうですよ?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます