刑事と殺人者 最後のとき

ふんわり塩風味

第1話 ◇◇◇の中を上から読んだり、下から読んだり

 大雨の中、ついにこのときが来た。


 奴は、複数の警官によって拘束されている。


 視線が合う。奴は笑っていた。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 笑いが込み上げてきた。


 長かった俺たちの因縁も、これで終わりと思うと、少し感慨深くも感じる。


 これで終わりだ。


 牢へ入れられたら、もう二度と出てくる事はないだろう。


 とうとう、好き勝手に生きてきた代償を支払うときがきたのだ。


 俺があいつに言った言葉だ。


 お前は俺には勝てない。


 あの時の光景は今も鮮明に脳裏に焼き付いている。


 惨めに、地面にねじ伏せられた俺を、あいつは見下ろした。


 だが、今は違う。


 気づけば栄光を手にして、数多くの称賛を受け、俺は勝利者だった。


 何度も繰り返して来た戦いだったが、ついに決着が着いた。


 悪を憎みながらも悪でいた者と、正義を愚かだと知りながら正義を貫いたもの。似た者同士の俺とお前。


 次に会うのは地獄だろう。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 暴れることもなく、護送車に詰め込まれる姿を俺は見送った。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

刑事と殺人者 最後のとき ふんわり塩風味 @peruse

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る