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「『死骸を抱いて歩くなら、手は冷たい方がいい』」

 ――アジト裏の、森の中にある小川で。

 ラルフは諳んずるように言って、私にその言葉を教示した。

「戦場でよく聞く諺だよ。けれど言葉ばかりが一人歩きして、誰が生み出したのか、どんな意味が込められているのかは誰も知らない……なあ、ジュリエッタ。君ならどう解釈する?」

 私は、少し考えてから、感じ取ったままの意味をラルフに伝えた。

 ――死んでしまった人にも温もりがあったことを感じ取れるように、冷たい方がいいということではないかしら。

 ――銃を撃って、熱くなった手のひらのままでは……そんな当たり前のことさえ、忘れてしまいそうだから。

 私がそう答えると、ラルフは驚いたように目を丸くして、

「驚いたな……そういう解釈をしたのは、僕が知る限りでは君で二人目だ」

 と、どこか嬉しそうに言う。

 私には、そう考える以外にないと思ったから、驚かれたのは意外なことだった。

「果たして僕は、冷たいままでいられるのか……今回ばかりは自信がないな」

 薄い火を灯した煙草を指に挟んだまま、ラルフは言った。

 彼自身が願う世界のことを、――御伽噺でも語り聞かせるような、優しい声で。

「君たちのような子供が……世界中の子供たちが、冷たい手で死骸や銃を持つことなんてない――血の通った温かな手のひらで、大切な人たちと手を繋いで、美しい明日を見つめているような……。

 そんな世界が来ることを、僕は心の底から願っているよ」



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死骸を抱いて歩くなら、手は冷たい方がいい 界達かたる @Kataru_K

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